厳寒のニューヨークより | |
突然ですが、
イヤー、寒い!実に寒いです。ニューヨークの1月、2月は大体において寒いのですが、今年は特に寒い。記録的な寒さだそうです。どれくらい寒いかというと、一日の最高気温が氷点下という日がもうかれこれ3週間近く続いているのです。つまり、NY市内は完全に冷凍庫状態と化しているわけで、日中の最高気温ですら−5〜6℃、朝晩に至っては平気で−10℃位まで冷え込むし、これに風が吹けばもう限りなく北極圏に近いアラスカ並になります。ここまで来ると「寒い」というよりは「痛い」といった感覚になります。この寒さ、この先も当分続くようで、あと数日もすれば、NYを南北に流れるハドソン川の河口近くに流氷がやってくるのではないでしょうか。できることなら、人間も熊やカエルのように冬眠でもした方がいいのではないか、と思えるほどですが、どっこい、ニューヨーカーというのはすこぶる元気なのです。まず、どんなに寒くても、家の中に閉じこもるということがありません。真冬でも、日常生活は当たり前に営まれるのは勿論のこと、休みの日には街中に繰り出し、ショッピングや娯楽を目一杯楽しんでいます。一つには、外がどんなに寒かろうと、一旦建物の中に入ってしまえば、十分に暖かいし、この季節にはそれなりに楽しい映画やミュージカル、コンサートなどが目白押しですので、家の中でくすぶっているなんて勿体ない、ということが言えるのかも知れませんが、とにかくよく出歩きます。人の集まる所には、当然様々なビジネスも繰り広げられ、寒風の下でも、ホットドックやニューヨーク名物のプレッツェル、ローストピーナッツなどを売る屋台は大いに繁盛しているようです。スポーツにしても、屋外のスタジアムで行われるフットボールが佳境となるシーズンですので、(我々は実際に見に行ったことはありませんが)観客の方も完全防寒をして熱狂しているうちに、どうも暑くてたまらなくなる…らしいです。そういえば、私の友人で、ニューヨークマラソンをはじめとする色々な大会で記録を保持しているというマラソン病に冒されたような女性がいますが、彼女はとにかく外が35℃になろうと、−10℃になろうと、大雨や大雪でも降らない限りは毎日必ず走るのだそうです。1時間近く(!)も走っているうちに身体が温まって来るので、本人はさほど寒さも苦にはならないとのことですが、こちらは話を聞いているだけで余計寒くなって来そうです。本人は好きだから走っているだけのこととは言え、それにしても頭の下がる思いです。 | |
ニューヨーカー が冬でも元気でいられるもうひとつの理由の一つに、セントラルヒーティングのお陰で家の中が暖かいということがあるのではないかと思います。我々の住むアパートも、常に一定以上の気温が保たれており、おまけに古くから住んでいる高齢者が多いこともあって、ちょっとでも寒くなると誰かが文句を言うのでしょうか、外が寒ければ寒いほど家の中は暖かくなり、真冬でも半袖のTシャツ1枚で過ごせるほどです。日本のように、一旦炬燵に入ったら出られなくなるということは考えられず(勿論、その前に炬燵なんてものはありませんし、ストーブだってありません。)扇風機は1年中出しっぱなしです。その代わり、外に出る時はもうなりふりなんて構っていられません。朝起きて家の中がやけに暖かい時は特に、今日は外は相当寒いゾ、と覚悟した方がよさそうです。この間、テレビのニュースを見ていたら、「あなたは今、何枚重ね着をしていますか?」というインタビューで、20歳代くらいの若い女の子が「6枚、かな?」「あたしは7枚」なんて答えているのを聞いて思わずのけぞりましたが(私だってさすがにそこまで厚着はしない!)、それほど「防寒」というのは命がけのことなのです。ババシャツだってステテコだって笑うやつは勝手に笑え!ってなものです。そんなわけで、最近はもっぱら私も、これ以上膨らみようのないと思われるほどのモコモコのフードつきダウンジャケットに帽子、マフラー、手袋の三点セットプラス厚手のソックスといった、殆ど「歩く掻い巻き布団」のような風体で歩き回っています。この格好、外にいる時はさほど気にはならないのですが、困るのは地下鉄に乗った時。似たように完全武装して着膨れた人が大勢乗っているので、当然混雑して大変です。ただでさえ、元々が着なくたって膨れ気味の人が多いところにもってきて、これらの人々がさらにモコモコと着込むわけですから、例えば7人は悠に座れるはずの座席が5人掛け、下手したら4人で満席なんてことになりかねません。運良く席が一つ空いていて腰をかけたものの、両隣からの圧迫でお尻が奥までたどり着かず、半分宙に浮いたような状態で座りつづけるはめに陥って、かえって背中や腰が痛くなってしまうこともしばしばです。 | |
とにかく大寒波 のニューヨークではあっても、当たり前のように生活が繰り広げられています。夏の暑い時は40℃にもなり、冬は冬で−10℃まで冷え込む、考えてみれば実に「苛酷な」土地であるにもかかわらず、文化にしても経済にしても世界一を誇っている、そのとてつもないエネルギーを支えているのは、きっと世界中から集まっている様々な人種から成るニューヨーカーのバイタリティーなのでしょう。やはり、この街にいると、誰もが元気になれる、そんな気がします。寒風の中を毎日走りつづける友人には及びもつきませんが、やはり、どんなに寒い時でも、せめて背中をシャキッと伸ばしていたいものだと思います。 2003年1月23日 アイバイクコ ▲FROM NEW YORKのページに戻る ホームに戻る |