近年日本でも、肥満や高血圧など、大人と同じ生活習慣病を抱える児童や中高生は少なくありません。米国では、12月6日にその原因の一つをを示唆するレポートが米国科学アカデミーの医学研究所(Institute of Medicine、IOM)から発表され、大きな話題となっています。
Food Marketing to Children and Youth: Threat or Opportunity?
http://www.nap.edu/catalog/11514.html
この研究は、この30年で米国の子供たちの間に肥満症が3倍、2型糖尿病が2倍になったとするデータを背景に、米国疾病管理予防センターの援助を受けて行われたもので、「テレビ広告が子供の食事に影響を与えている確固たる兆候がある」として、子供を対象にした食べ物(ジャンクフード・スナック菓子)のテレビコマーシャルの改善などを求める内容の報告書まとめました。以下のような事実や勧告が示されています。
- 2-11歳の子供の食べ物の好みや短期の消費に、テレビ広告は影響を与えるという強力エビデンスがある
- 2-11歳の子供の食べ物信仰にテレビ広告は影響を与えるという中程度のエビデンスがある
- 12-18歳の子供の食べ物信仰や短期の消費に、テレビ広告は影響を与えるエビデンスは十分でない
- TV広告量と子供の肥満者数は統計的には相関性があるが、因果関係があるとまではいえない
- 飲食物へのキャラクターの使用は、健康によい商品にのみに限るべきである
報告書の中でIOMは「子供や幼児に的を絞った高カロリー・低栄養食品の販売促進(テレビコマーシャル)が健康的な食生活を著しく歪めている」と批判し、業界がこのような状況を改善できないようであれば、政府が介入すべきだとしています。
また報告書では、商品開発や販売手段にも体脂肪率増加につながる問題があると指摘し、学校給食の国内基準に関する家族向けの全国的教育キャンペーンの必要性を呼びかけています。
これを受けて、米国の食品産業や外食産業などでは、子供向けの広告を自粛したり、栄養表示や健康によい食材をとりいれたメニューを始めるなどの対策をとっていますが、消費者団体等からはさらなる改善を求める声も上がっています。
日本では今年、食事バランスガイド(http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/)が示されたり、食育の取組み(食育推進担当HP http://www8.cao.go.jp/syokuiku/index.html)が行われるなど、食生活の見直しが叫ばれていますが、こと子供たちにとっては、自身で食生活の注意を行うことは困難です。やはり日本でも、TVや雑誌などの広告による影響も考えることも必要ではないかと思います。今回の米国のレポートは、人ごとではないですね。
実は食育の分野に薬剤師がかかわる国があります。スペイン薬剤師会がそうで、ホームページ掲載の情報(About Pharmacy/Pharmacy in Spain)によると、”Plenufar”という保健キャンペーンが、99年より行われています。これは、子供たちに健康でバランスがとれた食事については何かを教えるもので、2,989人の薬剤師がボランティアで、スペイン内の3000校を対象に、10~12歳の10万人以上の子どもたちに行っているとの事です。日本では学校薬剤師という制度がありますが、学校関係者と協力してこういった分野で職能を発揮することも可能ではないのでしょうか?
参考:
ロイター通信 12月6日
WEBニッポン消費者新聞 12月7日
Health Marketers Urged to Junk the Junk-Food Ads for Kids(Forbes 2005.12.6)
Panel Doesn’t Want Junk Food Aimed at Kids(ABC NEWS 2005.12.6)
2005年12月08日 22:00 投稿