米国科学アカデミーの医学研究所(the National Academy’s Institute of Medicine)は20日、”Preventing Medication Errors“というレポート発表し、米国内では大きな話題になっています。
Preventing Medication Errors : Quality Chasm Series
http://www.iom.edu/CMS/3809/22526/35939.aspx
http://www.nap.edu/catalog/11623.html
レポートによれば、米国内では処方医の手書きの読みにくい字(処方システムをコンピュータ化している病院は10%にすぎない)などのために、病院で年間150万件以上の薬物治療での過誤(処方ミス・薬剤の取り違え・過量投与)が発生しているそうです。しかし、このうちの40万件は予防可能であり、医療費35億ドルが無駄になっていると指摘し、電子処方の導入など、医療関係者・国や行政・患者・製薬会社に対し、さまざまな勧告を行っています。膨大な報告書のため、各紙から拾い集めた情報の一部を紹介します。
1.電子処方(e-prescriptions)の導入
電子的に処方せんを書くだけで、80%の過誤を減少が可能となる。さらにe-prescriptions(いわゆる電子処方せんのことか?)が導入されれば、自動的に処方量や相互作用、アレルギーチェックも可能である。2008年までに処方せんの電子化を検討し、2010年までにはe-prescriptionsを導入し、薬局もこれに対応できるようにすべきである。
2.よりよい医療関係者と患者とのパートナーシップづくり
医師と薬剤師などの医療関係者は、書面と言葉で、薬物治療によるリスク、禁忌例、起こりうる副作用、副作用が起こったときの対応法などについての情報をわかりやすく十分に伝えるとともに、患者の疑問には耳を傾ける必要がある。
3.質の高い情報提供が容易に入手できるようにする
医療関係者ごと(特に医師と薬剤師)の情報の違いによる混乱を避けるためにも、FDAなどの国の機関は協力して、わかりやく、標準化されたレベルの高い薬物治療に関するリーフレット(medication information leaflets)を作成し、薬局での配布を行う必要がある。また、インターネットでの情報提供や24時間体制の多言語による電話相談窓口(national telephone helpline:薬物治療による過誤の報告も可能)を通じて、消費者が情報を容易に入手できるようにすべきである。
4.患者は自分が行っている全ての薬物治療を把握すべきである
患者は、処方せん薬はもちろんのこと、OTCやビタミン、サプリメントなど普段摂っているもの全てをリスト化し、医療を受ける際にはそれを示すことができるようにすべきである。
5.薬品のネーミング、ラベルや包装にも配慮すべきである
過誤の33%はラベルや包装に関連するものであり、薬品名の標準化、バーコードの導入が必要である。
米国薬剤師会(Apha:American Pharmacists Association)は20日、今回のレポートを受けてコメントを発表し、Medication errorsの防止のために、患者(消費者)に対し、次のような点を求めています。
1.かかりつけ薬局を利用しなさい(Use ONE pharmacy)
同じ薬局(same pharmacy)を使うことにより、かかりつけ薬剤師(your pharmacist)が正確にあなたが飲んでいる薬物治療をモニターし、起こりうる薬の相互作用をチェックがすることを可能だ。
2.飲んでいる薬を知りなさい(Know your medicine)
自分が飲んでいる薬の名前、なぜその薬物治療をうけるのか、服用することによってどのようによくなるのかを知っておくべきである。もし薬物治療が違っているように思うか、具合がよくならないと思うのなら、かかりつけ薬剤師に相談しなさい。
3.かかりつけ薬剤師に出会いなさい(Know your pharmacist)
かかりつけ薬剤師は、薬物治療を行う上であなたの同盟者(ally)である − あなたが知っている誰かに質問するよりは容易である。
4.飲んでいる全てのくすりのリストを保管しておきなさい
(Keep a list of all your medications)
対象は処方せん薬だけではなく、アスピリン、風邪薬、咳止めといった非処方せん薬、薬草の他、健康補助食品も含む。かかりつけ薬剤師はこのリストを作るのを手伝うことが可能である。そして、病院や医療機関にかかるときはこのリストを持って行くべきである。
Statement of the American Pharmacists Association (APhA) on the Institute of Medicine Report Preventing Medication Errors:Quality Chasm Series (APhA immediate release 2006.7.20)
http://www.aphanet.org/AM/Template.cfm?Template=/CM/ContentDisplay.cfm&ContentID=6005
関連情報:第74回アポネットR研究会報告
参考:Medication Errors Injure 1.5 Million People and Cost Billions of Dollars Annually(THE NATIONAL ACADEMIES FOR IMMEDIATE RELEASE 2006.7.20)
http://www8.nationalacademies.org/onpinews/newsitem.aspx?RecordID=11623
IOM details strategies for avoiding medication errors
(pharmacist.com news 2006.7.21)
http://www.pharmacist.com/articles/h_ts_1204.cfm
From Poor Penmanship to Bad Communication: Many Opportunities for Medication Mishaps(ABC NEWS 2006.7.20)
http://abcnews.go.com/Health/story?id=2216030&page=1
Prescription goof-ups hurt over 1.5 million Americans annually
(Food Consumer 2006.7.21)
http://www.foodconsumer.org/777/8/
Prescription_goof-ups_hurt_over_1_5_million_Americans_annually.shtml
2006年07月21日 23:00 投稿