英国MHRA(医薬品医療用製品規制庁)は7日、プソイドエフェドリンのエフェドリンが含まれる薬局用医薬品について、サイズの制限や処方せん医薬品への分類変更を検討していることを明らかにし、public consultation(日本のパブリック・コメントに該当)を行うと発表しています。
日本語訳概要が、海外規制機関 医薬品安全性情報に掲載されています。
海外規制機関 医薬品安全性情報(国立医薬品食品衛生研究所)Vol.5 No.11
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly5/11070531.pdf
米国・カナダ・豪州・ニュージーランドでなどでは、OTCからプソイドエフェドリンを抽出し、メタンフェタミンの密造に使われることが後を絶たないことから、米国・豪州などではIDカードによる身分の確認、販売記録、1回、1ヶ月間の販売量の制限など、OTCでありながら厳しい販売制限が行われています。
今回英国でも、薬局でプソイドエフェドリン入りのOTCを購入し、メタンフェタミンの密造を行うという同様な事例が報告され、MHRAでは今後問題が拡大する可能性があるとして、下記のような具体的な規制案を示し、薬剤師会や業界団体、大学などから意見を求めることになりました。
- プソイドエフェドリンやエフェドリンを含むOTCの販売・供給にあたっては、薬剤師が管理を行う
- プソイドエフェドリンとして、1箱720mgまでに制限する
- 処方せん医薬品に分類の再変更を検討する
- 毎月販売量を報告させ、突出した販売がないか監視する
今回示された1箱720mgという数字は、米国の1日あたりの販売制限量を大きく下回っていて、日本の鼻炎用OTCでは4日分に相当するなど極めて厳しいものです。
MHRAでは、5月4日、各国の状況を記した追加の情報を掲載し、あわせてpublic consultation期間の延長を発表しています。
Public consultation (MLX 337): Proposals to restrict the availability of medicines containing pseudoephedrine and ephedrine – additional information(MHRA 2007.5.4)(寄せられた意見も全て掲載されています)
わが国では、今年ようやくアゼラスチンやケトチフェンがスイッチされたばかり(欧米ではセチジリンやロラタジンが既にOTC化)で、花粉症シーズンのこの時期、主力はやはりプソイドエフェドリン配合のものです。しかも店頭に山積みにされて、競って販売されています。
英国王立薬剤師会では今年1月、薬剤師に対しプソイドエフェドリン含有のOTCを2箱以上売らないように呼びかけていますが、日本では先の一般用医薬品のリスク分類で第2類*付に分類され、今後は薬局以外での販売が可能になるなど、諸外国に比べると規制はむしろ逆行しています。
わが国では、プソイドエフェドリンのみの製剤は存在しないので、過度に心配する必要はないのかもしれませんが、果たして米英のような懸念は全くないと言い切れるのでしょうか? 後になって、プソイドエフェドリンの供給源が日本の鼻炎の薬だったということがなければいいのですが。
関連情報:TOPICS
2005.12.12 プソイドエフェドリン配合剤、全米で販売規制へ
2005.11.03 カナダ州政府がプソイドエフェドエリンの販売を規制
プソイドエフェドリンと覚せい剤(赤城高原ホスピタル ウェブサイト)
Methamphetamine: link to cold remedies and reclassification
(PJ 2007;278:114)
http://www.pharmj.com/Editorial/20070127/society/ethics.html#1
Report of the International Narcotics Control Board for 2006
http://www.incb.org/incb/en/annual_report_2006.html
3月8日 22:40掲載 5月9日リンク追加 2009年7月30日リンク再設定
2007年03月08日 22:40 投稿