2006年度の診療報酬の改定では、「後発品への変更可」の欄に医師の署名があった場合のみ、後発医薬品への変更が認められていましたが、2008年度からはこの方針を大きく転換し、後発医薬品が優先して使用されるように処方せんの書式を改めることを検討しているようです。すでに、産経新聞が先行して伝えていましたが、22日の読売新聞が大きく伝えています。
18日に開催された、第12回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会で、「後発医薬品の使用状況調査」の結果が正式に報告され、今回の処方せん書式の変更が、後発医薬品の使用促進に結びつかなったとする結論がその理由のようです。
第12回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会(2007年4月18日開催)
厚労省資料(4月23日掲載) WAM NET 資料(4月19日掲載)
後発医薬品の使用状況調査報告書(案)
(平成18年度診療報酬改定結果検証に係る調査)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/dl/s0418-3f.pdf
各紙によれば、医師が先発品の使用を求める場合には、サインだけではなく処方せんにその理由を明記することもを求めるとしていることから、日医では24日の記者会見で、「使用できる医薬品を制限することは医師の処方権を侵害するものであり、認めるわけにはいかない」と明確に反対の姿勢を示しています。
後発医薬品の使用促進に関する報道に反論(日医定例記者会見4月24日)
http://www.med.or.jp/shirokuma/no641.html
各調査などでは、必ずといっていいほど、後発医薬品の普及率の外国との比較が示され、日本はまだまだ少ないとの指摘がありますが、公的な医療保険制度がない米国は除いても、欧州の全ての国で後発医薬品の使用促進が進んでいるわけではありません。それは、その国の医療制度(一般名処方の頻度、患者負担額、調剤報酬の仕組み)が大きく左右されるからです。
事実、調剤報酬が価格によるマージン制度をとっている(当然、価格の安い後発医薬品を調剤すれば利益も減る)国や、薬代の負担が定額という国では、後発医薬品の使用促進はすすんでいません。やはり、薬局が後発医薬品に積極的に変更するための動機づけが必要と考えられます。
幸い、日本の調剤報酬制度はこういった医療制度上の問題は少なく、今回の処方せん書式の変更が導入されれば、一気に促進されると思われます。
しかし、これで国の期待する通りの使用促進が行われない場合には、薬局や薬剤師への問題追求の声が高まるだけではなく、以前議論された参照価格制度の導入などのより強硬な政策が実施される可能性もあります。
診療報酬改定結果検証部会では、今年6月に「処方せん受付回数のうち後発医薬品への変更可とされている処方せん受付回数」「後発医薬品への変更可とされている処方せん受付回数のうち、実際に後発医薬品を調剤した回数」「後発医薬品へと変更された事例の薬剤料に関する情報」「後発医薬品情報提供料等の算定回数」などの実態調査を行い、具体的方針はこの調査結果を踏まえて決められると思います。
資料:Sustaining Generic Medicines Markets in Europe(2006.4)
(European Generic medicines Association Website)
http://www.egagenerics.com/doc/simoens-report_2006-04.pdf
関連情報:TOPICS
2007.02.01 後発医薬品変更可の処方せんは17%に留まる(厚労省調査)
2007.03.26 英国の薬剤師事情レポート(日本社会薬学会フォーラム)
参考:読売新聞4月22日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070422ik01.htm
産経新聞4月15日
4月23日 13:20掲載 25日 1:00更新 30日 20:00更新
2007年04月23日 13:20 投稿