世界トップブランドの糖尿病治療薬 Avadia(一般名:Rosiglitazone、本邦未発売)について、他の糖尿病治療薬を服用している人と比べ、心筋梗塞が43%、関連死が64%リスクが高まるとする論文が、21日のNew England Journal of Medicine誌のオンライン版に掲載され、大きな波紋が広がっています。
Effect of Rosiglitazone on the Risk of Myocardial Infarction and Death from Cardiovascular Causes
(N Engl J Med オンライン版2007.5.21)
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa072761
この論文は、42の研究、約28,000人のデータを分析したメタ・アナリシスで、糖尿病による心リスクを低くする目的で使われている薬が、反って心臓病のリスクを高める可能性があるとの結果に、世界各国のメディアは、連日この問題を大きく取り上げています。
この論文について、発売元のGlaxo SmithKline社も論文に反論するコメントを発表、また米FDAも注意喚起の情報を発表しましたが、詳細について調査中として、すぐにの添付文書の変更は行われないようです。
FDA Issues Safety Alert on Avandia (FDA NEWS 2007.5.21)
http://www.fda.gov/bbs/topics/NEWS/2007/NEW01636.html
Information for Healthcare Professionals Rosiglitazone (marketed as Avandia)
http://www.fda.gov/cder/drug/InfoSheets/HCP/rosiglitazoneHCP.htm
GlaxoSmithKline responds to NEJM article on Avandia
(Glaxo SmithKline 2007.5.21)
http://www.gsk.com/ControllerServlet?appId=4&pageId=402&newsid=1038
Rosiglitazoneと同じ作用機序をもつ、ペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPARγ)のアゴニストをめぐっては、重篤な肝障害を理由にすでに市場から撤退しているトログリタゾン(ノスカール)や、2005年FDAでの承認寸前に心リスク明らかになったmuraglitazar (Pargluva) など、課題が多いことから開発がすすんでいないのが現状です。
日本で唯一発売されているピオグリダゾン(アクトス)も、Rosiglitazoneと同じ、チアゾリジン系薬剤ですが、最近発表された研究結果で心リスクを低くくするという結果が得られていることから、Avandiaに代わって売上を伸ばすだろうとして、TAKEDA社の株価が上昇するという事態にもなっているようです。
2型糖尿病患者を対象にしたアクトスの大規模臨床試験PROactiveの追加解析結果について 心血管イベント、インスリン投与に関する効果を公表
(武田薬品工業株式会社・ニュースリリース2006.6.13)
http://www.takeda.co.jp/press/06061301j.htm
しかし、医薬品などを監視する消費者団体の米国パブリックシチズン(Public Citizen)は22日、「Avandiaなどの心リスクは2002年には、明らかになっていた」とFDAを批判、「Avandiaだけではなく、Actosなど他のチアゾリジン系薬剤について、心不全・その他の心臓への影響について、黒枠警告(”Black-box”warnings)に記載するか、販売を中止すべきである」とする請願をFDAに行ったと発表しています。
FDA Knew of Avandia’s Dangers Nearly Five Years Ago, Memo Shows
-Public Citizen Urges FDA to Act(Public Citizen 2007.5.22)
http://www.citizen.org/pressroom/release.cfm?ID=2442
Letter Demonstrating that the FDA Knew About Avandia Dangers,
Urging Action(Public Citizen 2007.5.22)
http://www.citizen.org/publications/release.cfm?ID=7523
今回の事態を受けFDAは、聴聞会や諮問委員会を近く開催すると伝えられています。ピオグリダゾン(アクトス)を含め、今後の発表を注目したいとおもいます。
関連情報:海外規制機関 医薬品安全性情報(国立医薬品食品衛生研究所)Vol.5 No.11
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly5/11070531.pdf
Rosiglitazone and Cardiovascular Risk
(N Engl J Med オンライン版2007.5.21)
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMe078099
TOPICS 2007.03.10 チアゾリジン系薬剤と骨折リスク
参考:Diabetes drug linked to heart attacks, death
(MSNBC 2007.5.21 AP配信)
http://www.msnbc.msn.com/id/18783816/
Meta-Analysis Links Rosiglitazone (Avandia) to Risk of Myocardial Infarction
(medpage TODAY 2007.5.21)
http://www.medpagetoday.com/Endocrinology/Diabetes/tb/5701
Rosiglitazone therapy linked to increased cardiovascular risks
in meta-analysis(Pharmacist.com 2007.5.21)
http://www.pharmacist.com/articles/h_ts_1460.cfm
Advocacy group says FDA knew Avandia’s risk(MSNBC 2007.5.22 ロイター配信)
http://www.msnbc.msn.com/id/18807835/
Doctor warned of Avandia risk in 2000(MSNBC 2007.5.24 ロイター配信)
http://www.msnbc.msn.com/id/18842687
5月26日更新 6月4日リンク追加
2007年05月23日 23:00 投稿