以前クラミジア対策として、薬局で治療薬を処方せんなしで配布していることを紹介しましたが、いよいよOTC化されるようです。
英国MHRA(医薬品医療用製品規制庁)は22日、アジスロマイシン錠(商品名:Clamelle)について、POM(処方せん薬)からP(薬局用薬)への変更についてのpublic consultation(日本のパブリック・コメントに該当)を開始しています。
Public consultation ARM 43: Request to reclassify azithromycin 500mg from POM (prescription only medicine) to P (Pharmacy) (MHRA 2007.6.22 PDF205kb)
日本語訳概要が、海外規制機関 医薬品安全性情報Vol.5 No.16に掲載されています。
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly5/16070809.pdf
今回スイッチ化が検討されているのは、アジスロマイシン500?錠2錠入り(1回に2錠服用)の包装で、対象は16歳以上の症状がないクラミジア・トラコマチスの感染またはその疑いがある人です。販売方法は次のような手順で行うことが検討されています。
- クラミジア検査を行う。検査法は、国際的に標準な NAAT(nucleic acid amplification test;核酸増幅同定検査)を用いる。これは、尿を用いた非侵襲的検査で、費用は他に比べると高いが、使いやすく、検出精度もよい。検査キットは、個人による購入またはNHSを通じて入手する。
- 検査結果は本人への通知が行われるとともに、セキュリティに配慮したデータベースにアップされる。
- 陽性と判断された場合は、薬局に行って、クラミジアについての情報、パートナーへの告知を行うこと、他のSTDのリスク、専門の相談機関の紹介などのアドバイスを薬剤師から受ける。(これらの情報については、Clamelle の患者向け医薬品情報書にも掲載する)
- 薬局では、検査結果が載せられているデーターベースにアクセスし、来局者が陽性であるかどうかを確認したのちアジスロマイシンの販売を行う。
- 販売は、訓練を受けたスタッフ(薬剤師・アシスタント)がいる店舗のみで可能。
なお、感染者のパートナーについては、感染のリスクが高いことから、検査結果にかかわらずアジスロマイシンを販売してよいとする案と、クラミジア検査を経てからの販売が必要との両案が示され、意見が求められています。
なお、16〜24歳については“national chlamydia screening programme”の対象による無料配布が行われていることから、販売は実質25歳以上を対象に行われるものになります。
今回のスイッチ化は日本ではとても考えられないことですが、単に患者の利便性をはかるだけではなく、クラミジア感染予防対策という側面があるようです。薬局を公衆衛生(public health)分野で積極的に活用する、英国の国家戦略の一つとしてとらえる必要があるでしょう。
関連情報:TOPICS
2007.03.26 英国の薬剤師事情レポート(日本社会薬学会フォーラム)
2007.02.13 バイアグラを処方せんなしで試験販売(英国)
2007.02.06 ピルのOTC化の検討が明らかになる(英国)
2005.11.23 薬局でクラミジア検査キットを無料配布(英国)
Choosing health through pharmacy〜A programme for pharmaceutical public health 2005-2015(英国保健省 2005.4.1)
参考:Chlamydia treatment could soon be available OTC(PJ Online 2007.6.30)
http://www.pharmj.com/Editorial/20070630/news/p759chlamydia.html
HIVの伝播予防に向けた介入をHIV感染者の診療活動に導入すべき
(国立医療センターウェブサイト内)
http://www.acc.go.jp/clinic/mmwr_jpn.pdf
6月30日 13:30掲載 8月10日リンク追加
2007年06月30日 06:30 投稿