9日、中央社会保険医療協議会・基本問題小委員会が開かれ、厚労省より後発医薬品の使用促進策が示されました。
既に報道の通り、後発医薬品への変更を原則とする(現在とは逆に、変更不可の場合にサインする)よう「処方せん様式」を改め、一部についてのみ、後発品への変更に差し支えがあると判断した場合には、『後発医薬品への変更不可』欄に署名または記名・押印を行わないで、当該先発品の銘柄名の横に『変更不可』と記載するとする案が示された他、薬局が後発医薬品を一定割合(日本経済新聞によれば、4割程度)以上で調剤すれば基本料に点数を加算する案が示されたそうです。
第108回中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会資料(2007年11月9日開催)
厚労省資料(11月13日掲載、該当資料 PDF:246KB)WAM NET 資料(11月12日掲載)
提示された論点は、以下の通りです。
- 処方医が、処方せんに記載した先発医薬品を 後発医薬品に変更することに差し支えがあると判断した場合には、その旨の意思表示ができるよう、「後発医薬品への変更不可」欄(以下、変更不可欄に省略)に記名・押印する。
- 処方医が、処方せんに記載した先発医薬品の一部についてのみ後発医薬品への変更に差し支えがあると判断した場合には、変更不可欄に署名又は記名・押印を行わず、当該先発医薬品の銘柄名の横に「変更不可」と記載する。
- 変更不可欄に処方医の署名又は記名・押印がない処方せんに記載された後発医薬品については、それを受け付けた薬局の薬剤師が、銘柄の選択理由に関する説明責任を果たし、患者が同意することを前提に、処方医に疑義照会することなく別銘柄の後発医薬品を調剤できることとする。
- 処方医が、処方せんに記載した後発医薬品の一部について他の銘柄の後発医薬品への変更lこ差し支えがあると判断した場合には、当該後発医薬品の銘柄名の横に「変更不可」と記載する。
- 患者の服用のしやすさが損なわれないことを前提に、患者の選択に基づき、「変更不可」欄に署名等がない処方せんを受け付けた薬局において、剤形は異なっても同一の先発医薬品と同等であることが確認されている範囲で、上記3と同様の条件の下、別剤形の後発医薬品に変更して調剤できることとする。
- 薬局における後発医薬品の調剤を促進する観点から、後発医薬品の調剤に要する在庫管理コストの負担にかんがみ、薬局の調剤基本料を見直上、後発医薬品の調剤率(単位期間当たりの全受付処方せんのうち、実際に後発医薬品を調剤した処方せんの割合)が一定以上の場合を重点的に評価する。
- 処方せん様式の変更により、「変更不可」欄に署名等がない処方せんが数多く患者に交付されることが予想されることから、これまで後発医薬品の処方を促進するために行ってきた処方せん料の評価(後発医薬品を含む処方の場合は、含まない場合に比し2点高く評価)については見直す。
- 後発医薬品に対する患者の不安を和らげるため、薬局において、「変更不可」欄に署名等がない処方せんに基づき初めて先発医薬品から後発医薬品に変更して調剤する場合に、患者の同意を得て、短期間、後発医薬品を試せるように分割調剤することについて、評価する。
- 薬局において、後発医薬品の調剤がより促進されることを確保するため、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則等に以下の事項を規定することとする。
「保険薬剤師は、保険医の交付した処方せんに基づき、患者に対してして、後発医薬品に関する説明を適切に行うこと」「保険薬剤師は、後発医薬品を調剤するよう努めなければならないこと」 - 保険医に、できるだけ後発医薬品の使用を考慮してもらうため、保険医療機関及び保険医療養担当規則等において、「処方せんの交付又は注射を行うに当たって、後発医薬品の使用を考慮するよう努めなければならない」旨を規定する。
●新たな処方せん書式の案(配布資料より引用)
●処方医が、処方せんに記載した一部の医薬品について、後発医薬品等への変更に差し支えがあると判断した場合の記載例(配布資料より引用)
この間、300品目を在庫した場合に基本料の加算があるのではないかとの一部報道がありましたが、ふたを開けてみれば、いかにすれば、どれだけ多くの後発医薬品が調剤されたかということに重きを置いた案が示されました。(論点の通りだとすると、今から後発医薬品の調剤率を上げることも必要?)
CB NEWSによれば、委員からは「在庫管理にかけるコストや技術的な部分を評価してほしい」といった意見が出され、さらなる検討が続けられるとのことですが、いわば「成功報酬」ともいえる今回の案は、現場に後発医薬品の使用を促すには、最善の策かもしれません。
医師会の反応ですが、意外にも今回の変更案におおむね同意したそうです。これは、日医独自の調査で、処方せん様式の変更について、「様式の変更に反対(現行維持)」が34.9%、「様式の変更に賛成」が26.1%、「わからない」が34.9%で意見割れたこと、先発薬と後発薬の使用上の問題について「有意な差がない」との意見が示されたこと、また、今年7月に行われた実態調査の結果も無視できなかったのでしょう。
ただ日医は、9日行われた日医の緊急記者会見で、「現時点では、後発医薬品を全面的に使用促進するにはリスクが高いとし、処方に当たっては、銘柄を指定するなど、医師の裁量権と責任を明確にする仕組みが必要なのではないか」との考えを示し、今回の処方せん変更案について、銘柄指定することなど、医師の裁量権と責任を明確にする仕組みが必要として、「変更不可」の意思表示を署名ではなく、アスタリスクなどで簡素化する方法が検討されるということを前提としているようです。
緊急記者会見 「後発医薬品の使用に関するアンケート調査の結果を公表」
(日本医師会白クマ通信No.781 11月9日)
http://www.med.or.jp/shirokuma/no781.html
配布資料:http://www.med.or.jp/teireikaiken/20071109_1.pdf
中医協基本問題小委(11月9日) 「処方せん様式の見直しを条件付で容認―日医」
(日本医師会白クマ通信No.783 11月12日)
http://www.med.or.jp/shirokuma/no783.html
なお処方せん書式変更以外の項目(在庫がない場合に薬剤師の判断で別銘柄の後発薬への変更を認めることや、「お試し期間」を設けること、療養担当者規則に後発品の使用促進について記載を加えることなど)についてもおおむね了承されたようですが、剤形の変更については反対意見が出されて、継続審議になったそうです。
いよいよ本当の意味での開局薬剤師の責務が試されることになりそうですが、後発医薬品メーカーからは、「これだけではさほど増えない」との冷静な見方も出ていると伝えられています。
関連情報:TOPICS
2007.11.08 後発医薬品への変更進まず、処方せん書式の変更も視野に
2007.10.18 厚労省、後発医薬品の具体的な使用促進案を提示
参考:処方せん様式を再変更、
「変更不可」欄に署名‐ジェネリック医薬品の使用促進図る
(薬事日報 HEADLINE NEWS 11月12日)
http://www.yakuji.co.jp/entry4926.html
CB NEWS 11月9日(新たな処方せん様式案入り)
http://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=12959
産経新聞11月9日
共同通信11月9日
日本経済新聞11月10日
日刊薬業ヘッドラインニュース11月12日
11月10日 9:10更新 12日12:30更新 13日0:20更新 18:10更新
2007年11月10日 00:20 投稿