英国保健省(Department of Health)は4日、医師に対する抗生剤の耐性問題への再認識と、一般的な風邪に抗生剤は効果がないことを患者に意識付けるため、全国キャンペーンを開始すると発表しました。
Campaign to educate on the correct use of antibiotics(英国保健省2008.2.4)
http://www.dh.gov.uk/en/News/Recentstories/DH_082645
英国政府ではこの10年、抗生剤の適正使用のための独自のキャンペーンを展開してきましたが、依然として耐性菌が増えているとして、今後、専用のウェブサイトや全国紙や雑誌での広告や、薬局や医療機関向けの啓蒙リーフレットやポスターを通じて、キャンペーンを展開するそうです。
Antibiotic campaign 2007-2008(英国保健省2008.2.1)
★キャンペーン用のポスター・リーフレットが掲載されています。
英国では、2006-7 シーズンに病院を除いた医療機関だけでも抗生剤が3,800万回処方、1億7500万ポンド(370億円)が費やされたとしており、政府としても医療費抑制の面からも適正使用に繋げたいとしているようです。
今回のキャンペーンで特徴的なのは、「抗生剤について質問があったら、薬剤師に尋ねましょう」としている点にあります。例えば、リーフレットの Get better without using antibiotics のQ&Aでは次のように記されています。
Q.風邪をひいたら、どうしたらいいですか?
風邪を治すための最もよい方法は、咳やのどの痛みには水分を十分とって休むことです。風邪は約2週間続いて、咳と痰を残して終わります。症状を楽にするにはアセトアミノフェン(パラセタモール)などの入ったOTC薬がたくさんあります。薬剤師に尋ねてアドバイスしてもらいましょう。もし症状が3週間以上続くときや息切れや胸の痛みを伴うとき、呼吸器の病気を持っている人は医療機関で診てもらいましょう。
Q.では、子どもたちがいつも咳をしたり、風邪をひいたりしたらどうすればいいですか?
学校に行ったり他の子どもたちといっしょにいれば、子どもが咳をしたり、風邪をひくことは、ごくありふれたことです。薬剤師に尋ねてアドバイスしてもらいましょう。もし、症状が続いたり、心配なら医者に診てもらいましょう。但し、抗生物質を必ずしも処方してくれるとはかぎりません。
「随分、英国政府は薬剤師を信頼しているのだな」と思われるかもしれませんが、実は英国王立薬剤師会では2006年秋の“Ask About Medicines Week”(http://www.askaboutmedicines.org/)で、保健省などと協力して、抗生剤の適正使用についてのキャンペーンを行っています。おそらく、こういった取組みが評価されているのではないかと考えられます。
Ask About Your Antibiotics
-Campaign Calls on Public to Ask Their Pharmacists About Antibiotics
(Ask About Medicines Week 2006)
リーフレット[PDF:810KB]、ポスター[PDF:655KB]、プレスリリース[PDF:120KB]
日本では、医師の立場もあるので、なかなかこういったことは難しいかもしれませんが、セルフ・メディケーションを推進するのであれば、これくらいの取組みが必要かもしれません。
参考:Get well soon – without Antibiotics(英国保健省Government News 2008.2.4)
GPs urged to cut back antibiotics(BBC NEWS 2008.2.4)
http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/7222871.stm
Campaign warns of antibiotic risks(AP 2008.2.3)
http://ukpress.google.com/article/ALeqM5hNpeg3nWnPLjohPg2KHeL1hVGd-w
2月5日 22:40掲載
2008年02月05日 22:40 投稿