厳格な糖尿病管理は必要か?~ACCORD試験一部中断の波紋

  米国国立衛生研究所(NIH)の米国心臓肺血液研究所(NHLBI)は6日、2001年より行っている“ACCORD試験”(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)の一部を中断すると発表しました。

For Safety, NHLBI Changes Intensive Blood Sugar Treatment Strategy in Clinical Trial of Diabetes and Cardiovascular Disease(NIH News 2008.2.6)
   http://public.nhlbi.nih.gov/newsroom/home/GetPressRelease.aspx?id=2551

   このACCORD試験とは、心血管疾患の既往があるか心血管疾患の発症リスクが高い、40~82歳(平均年齢62歳)の米国・カナダの2型糖尿病患者約1万人を対象に2009年までの予定で実施されている二重盲検ランダム化比較試験で、今回中断になったのは、この中の「厳格な血糖コントロール」と「通常の血糖コントロール」の比較試験です。

Study Purpose (June 30, 2006 – ACCORD試験のデザイン)
  http://www.accordtrial.org/web/public/index.cfm

 「厳格なコントロール」群ではHbA1c値を6.0%未満に、「通常のコントロール」群では7.0~7.9%の範囲で血糖コントロールを行うというものですが、中間解析の結果、「厳格なコントロール」群では5128人中257人が死亡があったのに対し、「通常のコントロール」群では5123人中203人の死亡に留まり、厳格なコントロールをした方が死亡率が高まるという結果が得られたそうです。この数字は1年間で1000人あたり3人の増加、死亡率20%増加に相当するとして、NHLBIでは安全性の問題を考慮して、この試験を中断し、HbA1c値を「通常のコントロール」に変更する措置がとられたそうです。

 また研究者らは、昨年問題となったAvandiaとの関連も調べましたが、関連は見当たらないとしており、今回なぜこのような結果になったか、原因は特定できなかったそうです。

Questions and Answers Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes (ACCORD) Trial
  (NHLBI 2008.2.6)
  http://www.nhlbi.nih.gov/health/prof/heart/other/accord/q_a.htm

 心臓血管病リスクがある高齢の2型糖尿病患者に対して、HbA1c値を厳格にコントロールすることはかえってよくないかもしれないことを示した今回の発表を受け、専門家などの間では大きな動揺が広がっています。米国糖尿病協会(American Diabetes Association)ではステートメントを発表して、患者に医師が決めた治療計画を守るよう呼びかけています。

Statement from the American Diabetes Association Related to ACCORD Trial Announcement
  (American Diabetes Association 2008.2.6)
http://www.diabetes.org/for-media/2008/statement-from-the-american.html

 各紙の研究者の話を総合すると、血糖値を下げること自体は必要性があるものの、目標を低く設定したり、急激に下げることについては、さまざまな議論があるようです。今後、関連学会の見解などを見守る必要がありますが、糖尿病の治療指針に影響を及ぼす可能性も否定できません。なお、詳しいデータは近く論文として発表されるようです。

参考:
Deaths Partially Halt Diabetes Study(AP 2008.2.6)
Deaths Prompt Halt in Diabetes Study – Study of Intensive Treatment of Diabetes Curtailed Because of Increased Death Rates
  (WEB MD  2007.2.6)
  http://diabetes.webmd.com/news/20080206/deaths-prompt-halt-in-diabetes-study
Biotechnology Japan News 2月7日
 http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2008020752717
日経メディカルオンライン 2003.2.25
 http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/232824.html
   

2月9日 11:20更新


2008年02月07日 14:50 投稿

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