既に何度も紹介していますが、英国では1964年におきたサリドマイドによる薬害をきっかけに、イエローカード副作用報告システム(Yellow Card Scheme)という独自の副作用報告システムがあります。
このYellow Card Schemeは、従来は医療専門家が使用するためのものでしたが、2005年からは報告者を患者本人とその介護者に対しても開放、そして同年10月からは、薬の副作用が疑われる体験をオンラインでMHRA(医薬品医療用製品規制庁)直接報告できるシステムが構築され、この間全国規模での試験運用が実施されていました。
MHRAでは18日、専用のウェブサイトを新たに開設し、試験運用から本運用を開始しました。また、開局薬剤師(Community Pharmacist)による6週間のYellow Card Scheme啓発キャンペーンを開始すると発表しました。
Members of the public to be encouraged by pharmacists to report suspected side effects of medicines(MHRA Press Release 2008.2.18)
http://www.mhra.gov.uk/NewsCentre/Pressreleases/CON013937
(右図:MHRAが薬局掲示用に作成したポスター)
開設された専用のウェブサイトでは、オンラインで簡単に報告ができるようになっている他、紙媒体でも報告が行えるよう、一般向け・医療専門向けの報告用紙(従来のものより簡略化されたとしています)を掲載しています。
Reporting suspected adverse drug reactions(MHRA)
Yellow Card Scheme
http://yellowcard.mhra.gov.uk/
(オンラインによる報告ページあり)
●一般向け用報告書式
Member of public reporting form [PDF:77KB]
●医療専門職用報告書式
Healthcare Professional Reporting Form [PDF:200KB]
●ポスター(右写真) [PDF:780KB]
●小さいサイズの啓発用カード
Small sized information card [PDF:39KB]
●一般向け用手引き
Member of public Guidance to Reporting [PDF:65KB]
●医療専門職用手引き
Healthcare Professional Guidance to Reporting [PDF:64KB]
MHRAによれば、毎年Yellow Card Scheme を通じておよそ20,000件の副作用報告があり、薬剤師からのものは15〜16%を占めているそうです。このうち病院薬剤師によるものは、2000年と比べ約2倍になったものの、Community Pharmacistによるものはあまり報告数が変わらないため、MHRAではCommunity Pharmacistに特に取り組んで欲しいとして、今回の啓発キャンペーンが実施されることになったようです。
またMHRAでは、一般の人たちにまだYellow Card Scheme を通じて副作用報告ができることが知られていないとして、地域薬局に報告書式や手引書、ポスターを送付して、一般にYellow Card Scheme の啓発活動を行うよう求めています。
今回の発表に合わせて、英国王立薬剤師会は機関紙にて、MHRAの取組みに歓迎の意を表明するとともに、会員に対し、Yellow Card Scheme について患者に伝えるよう呼びかけています。ポスターをみてもわかるように、「ここで、副作用報告(Yellow Card Scheme)ができます」というポスターのキャッチフレーズは、当局の開局薬剤師への期待がにじみ出ていますね。
Tell patients about yellow card reporting
(PJ Online News 2008.2.16)
http://www.pharmj.com/Editorial/20080216/news/news_yellowcard.html
Yellow card for MHRA(PJ Online Leading Articles 2008.2.9)
http://www.pharmj.com/Editorial/20080209/comment/leading.html
Pharmacists to take lead in yellow card campaign aimed at patients
(PJ Online News 2008.2.9)
http://www.pharmj.com/Editorial/20080209/news/p139yellowcard.html
オンラインによる報告は、一般向けと医療専門職向けそれぞれあり、対象は処方せん医薬品(prescription medicines)、OTCの他、herbal remedies についても受け付けています。
日本でも、こういったオンラインでの簡単な報告が可能になれば、もう少し報告数が増えるのではないかと思いますが、Yellow Card Schemeのように、「患者による副作用直接報告」がオンラインでもできるのは、私の知る限りでは米国の他、豪州(国の機関ではなく民間が実施)に留まっているのが現状です。
How to report serious adverse events MedWatch(FDA MedWatch)
http://www.fda.gov/medwatch/how.htm
ADVERSE MEDICINE EVENTS LINE(豪州)
http://www.mater.org.au/ame/
(資金難とも伝えられていましたが存続しているようです)
Yellow Card Schemeに関する情報は、MHRAの”Yellow Card Scheme”のページの他、昨年8月より毎月発表されている“Drug Safety Update”でその現況が毎号紹介されています。
Drug Safety Update(MHRA)
http://www.mhra.gov.uk/Publications/Safetyguidance/DrugSafetyUpdate/index.htm
関連情報;TOPICS
2007.08.03 イエローカード副作用報告システムの現況
2005.11.08 患者による副作用直接報告(英・イエローカード計画)
2007.04.07 Adverse Medicine Events Line(豪州)
★“Yellow Card Scheme”は以前から実施されているので、「イエローカード副作用報告システムが本稼動」というタイトルには違和感があるとのご指摘がありましたので、タイトルを変更させていただきました。ご指摘ありがとうございます。
2月19日 1:30掲載 22:20更新 20日 18:00タイトル変更
2008年02月19日 01:30 投稿