一般用漢方処方、効能・効果など38年ぶりに見直しへ

厚労省は23日、一般用漢方製剤210処方について、適応証の追加や効能効果の表現を分かりやすくした改正案をまとめ、この案についての意見募集を開始しました。

一般用漢方処方に関する承認における基準の改正に関する意見募集について
(案の公示日 2008年6月23日 意見・情報受付締切日 2008年7月22日 )(2021.09.17リンク修正)

一般用漢方処方に関する承認における基準については、長年使用されてきた処方の中から、一般用医薬品として適当な210処方を選び、1972年に公表された承認審査内規を基にその成分・分量、用法・用量、効能・効果が決められていましたが、生活環境の変化や急激な人口の高齢化に伴う疾病構造の変化等に伴い、この210処方が現在の様々な国民のニーズに合致しなくなってきた面もある(一般用医薬品承認審査合理化等検討会・中間報告書2002.11.8より)として、効能・効果の再検討や漢方独自の言い回しの検討、小児用法の追加等の検討が行われてきました。

今回のパブリックコメントは、5月29日に開催された薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会でまとめられた改正案の意見募集として行われるもので、厚労省では今回行うパブリックコメントを踏まえて最終決定とし、今後疾病構造の変化に合わせた処方の見直しも実施するとのことです。

変更点の概要は以下の通りです。

1.効能効果等の追加・変更変更

1)文献に基づき、有用性が認められる効能・効果を追加(122処方)

 1973年までの61文献に加え、それ以降出版された文献を加え94の文献を参考文献とし、一部について効能・効果を追加しています。

夜尿症(四君子湯・六味丸)、痔の痛み(麻杏甘石湯)など漢方に詳しい方なら、ようやくの感があります。以下に主なものを示しましたが、医療用漢方製剤に適応症の追加は行われるのでしょうか?

No. 処方名
(★印は一般用漢方製剤のみの処方)
追加となった主な効能・効果
(赤字は、医療用漢方製剤の適応症として記載されていないもの)
5 茵蔯蒿湯 湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ
7 温経湯 しもやけ、手あれ
8 温清飲 湿疹・皮膚炎
15 黄連解毒湯 皮膚のかゆみ、更年期障害、湿疹・皮膚炎、口内炎
17 乙字湯 軽度の脱肛
23 葛根湯 鼻炎
29 加味逍遙散 不眠症
33 甘草湯 口内炎、しわがれ声、痔・脱肛の痛み(外用)
36 ★帰耆建中湯 術後の衰弱、湿疹・皮膚炎、可能性皮膚疾患
37 帰脾湯 神経症、精神不安
39 芎帰膠艾湯 貧血、月経異常・月経過多・不正出血、皮下出血
57 桂枝人参湯 下痢、消化器症状を伴う感冒
58 桂枝茯苓丸 湿疹・皮膚炎、にきび
70 香蘇散 血の道症
71 五虎湯 気管支炎、小児ぜんそく、感冒、痔の痛み
73 牛車腎気丸 高血圧症に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)
81 柴胡桂枝乾姜湯 動悸、息切れ、かぜの後期の症状、気管支炎
83 柴胡清肝湯 虚弱児の体質改善
84 ★柴芍六君子湯 神経性胃炎
90 三物黄芩湯 湿疹・皮膚炎、手足のあれ(手足の湿疹・皮膚炎)、不眠
94 四逆散 神経症
95 四君子湯 夜尿症
101 炙甘草湯 脈のみだれ
111 柴朴湯 虚弱体質
115 小青竜湯 花粉症
116 ★小青竜湯加石膏 アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒
121 消風散 湿疹・皮膚炎、じんましん、水虫、あせも
122 ★逍遙散(八味逍遙散) 不眠症・神経症
128 ★参苓白朮散 消化不良、慢性胃腸炎
133 清上防風湯 顔面・頭部の湿疹・皮膚炎、あかはな(酒さ)
134 清心蓮子飲 尿のにごり、排尿困難、こしけ(おりもの)
136 ★折衝飲 月経困難、神経痛、腰痛、肩こり
142 大黄甘草湯 便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和
153 調胃承気湯
159 桃核承気湯 痔疾、打撲症
161 当帰建中湯 腹痛、腰痛、病後・術後の体力低下
164 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 冷え性、下痢、月経痛
165 当帰芍薬散 立ちくらみ、耳鳴り
168 ★独活葛根湯 四十肩、寝ちがえ
169 ★独活湯 腰痛
170 ニ朮湯 四十肩
171 ニ陳湯 胃部不快感、慢性胃炎、二日酔
172 女神散(安栄湯) 更年期障害、神経症
176 ★排膿湯 歯肉炎・扁桃炎の初期又は軽いもの
178 八味地黄丸 高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れ
181 半夏白朮天麻湯 蓄膿症(副鼻腔炎)
182 ★白虎湯 湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ
183 ★白虎加桂枝湯
184 白虎加人参湯
194 ★防已茯苓湯 慢性下痢
195 防風通聖散 蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)
196 ★補気建中湯 むくみ
197 補中益気湯 感冒
199 麻黄湯 気管支炎、鼻づまり
200 麻杏甘石湯 感冒、痔の痛み
201 麻杏薏甘湯 いぼ、手足のあれ(手足の湿疹・皮膚炎)
202 麻子仁丸 便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常発酵・痔の緩和
203 薏苡仁湯 神経痛
206 抑肝散 歯ぎしり、更年期障害、血の道症
207 抑肝散加陳皮半夏
210 苓姜朮甘湯 神経痛
212 苓桂朮甘湯 耳鳴り
213 六味丸(六味地黄丸) 夜尿症、しびれ

2)内服するすべての処方にしばりを追加(99処方)

 全ての内服薬について、その効能・効果をしばりと症状等の組み合わせ(いわゆる“証”)を明確化

3)一般用医薬品としてわかりにくい効能・効果の変更(27処方)

 胃アトニー、くさなど社会一般で用いられなくなった用語を、よりわかりやすいものに変更

2.用法・用量の見直し(小児用法の追加、散剤の追加等)(44処方)

関連情報:「セルフメディケーションにおける 一般用医薬品のあり方について」
(一般用医薬品承認審査合理化等検討会・中間報告書2002.11.8)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/11/s1108-4.html

3.記載の整備(「朮」を「白朮」と「蒼朮」に分離等)(123処方)

参考:一般用漢方製剤、210処方で適応証追加
−72年以来初の見直し 薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会
(薬事日報 2008年6月2日配信)
http://yaku-job.com/news/item_799.html
https://www.yakuji.co.jp/entry6929.html

6月23日 12:30掲載 24日 0:00更新


2008年06月23日 12:30 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    9月26日、パブリックコメントの結果が公示されました。

    一般用漢方処方に関する承認における基準の改正に関する意見募集について」に対して寄せられた御意見等について(e-Gov)(2021.09.17 リンク修正)

    「体力中等度をめやすとして幅広く用いることができる。」(抑肝散、半夏厚朴湯)という表現に対して、「表現があいまい」「適用外使用を推奨するような学会発表が行われている中、これを正当化する効能・効果とするのは、適用外使用を正当化するものと考える」という意見が出された他、「“血の道症”は、わかりにくい。」(表現として古いものには、その意味するものを注意書きとして表示するように変更していると回答)などの意見が示されています。