気道感染症における抗生剤の適正使用を求める(英国)

 英国NICEは23日、気道感染症(respiratory tract infections)における抗生剤の適正使用を求めた診療ガイドラインを発表しています。     

NICE short clinical guideline published on antibiotic prescribing for respiratory tract infections
(NICE Press releease 2008.7.23)  

Respiratory tract infections
   http://www.nice.org.uk/CG69

 ガイドラインでは、急性中耳炎は4日、急性咽頭痛・咽頭炎・扁桃炎は1週間、一般的な風邪は1.5週間、急性副鼻腔炎は2.5週間、急性の咳は3週間、急性気管支炎は3週間で治るとして、下記の場合を除き抗生剤は処方しないよう求めています。

1.処方を考慮してもよい
  • 両側に急性中耳炎が認められる2歳未満の子ども
  • 耳漏が認められる急性中耳炎の子ども
  • 急性の咽頭痛、急性の咽頭炎、急性の扁桃炎などの症状に加え、「扁桃からの浸出物」「頚部リンパ節の腫れやリンパ節炎の存在」「発熱を伴うことがあった」「咳はない」など典型的な3つ以上の症状を有する場合
2.すぐに処方してもよい、詳しい検査が必要
  • 全身状態がよくない場合
  • 症状から肺炎、乳様突起炎、扁頭周囲膿瘍、扁桃周囲の蜂巣炎などの、重大の病気が疑われる場合
  • 心疾患、肺疾患、肝疾患、腎疾患、筋神経疾患、免疫性疾患、嚢胞性線維症などの疾患を持っている、早産児など、合併症のリスクが高い場合
  • 65歳以上の高齢者であって、咳症状に加え、「過去一年以内に入院したことがある」「1型または2型糖尿病にかかっている」「うっ血性心不全の既往歴がある」「経口の糖質コルチコイドを服用している」のうち2つ以上に該当している場合
  • 80歳以上の高齢者であって、咳症状に加え、「過去一年以内に入院したことがある」「1型または2型糖尿病にかかっている」「うっ血性心不全の既往歴がある」「経口の糖質コルチコイドを服用している」のうちいずれかに該当している場合

 NICEによれば、GPを訪れる1/4を占める上気道感染症に対し、抗生剤の60%が使用されていて、ガイドラインの作成委員は、「患者を不必要な副作用にさらさないよう、エビデンスに基づいた処方が行われるべきである」「地域では子どもに対し500万回の抗生剤の処方が行われているが、そのほとんどがウイルス性の上気道感染症である」として、NICEでは今後このガイドラインに基づいた適切な処方が行われるよう求めています。

 英国では今年、保健省も薬局なども巻き込んだ抗生剤の適正使用のキャンペーンが行われていますが、適正使用の指針となるNICEのガイドラインが示されたことで、一気に抗生剤の適正使用と薬剤費の抑制がすすむものと思われます。

関連情報:TOPICS 2008.02.05 抗生剤がなくても、風邪はよくなる(英国キャンペーン)

7月23日 14:00掲載


2008年07月23日 14:00 投稿

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