最近の国内外の副作用等の報告状況

 7月24日、薬事・食品衛生審議会の平成20年度第1回医薬品等安全対策部会が開催され、昨年4月から今年3月までに厚労省に報告のあった医薬品の副作用報告についての集計結果が公表されています。

 このデータは、医薬品との因果関係が不明なものを含め製造販売業者等から報告されたものをもとに作成されていますが、同一症例に複数の被疑薬が存在し、該当する症例が複数の企業からそれぞれ報告された場合は重複してカウントされているために、ここに示した報告件数がそのまま症例数にはならないそうです。また厚労省では、個別に医薬品との関連性を評価したものではないとしています。

 平成20年度第1回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会(2008年7月24日開催)
  厚労省資料 (7月25日掲載 きれいですが、ファイルが大きいのでダウンロードが大変です) 
WAMNET資料 (7月30日掲載 ファイルは小さいですがきれいではありません)

 資料3-2によれば、この間に10件以上の報告のあった医療用医薬品成分は下記のとおりです。(薬効分類コード421-429、625の一部、631以降は除く)

分類 医薬品名 副作用名(数字は件数)
112 ジアゼパム 呼吸抑制13
113 フェニトイン 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹15
113 カルバマゼピン 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹62、薬疹32、肝障害27、発熱25、スティーブンス・ジョンソン症候群24、発疹18、肝機能異常16、血小板数減少14、多形紅斑12、γ-グルタミルトランフェラーゼ増加11
113 ゾニサミド 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹12
114 アセトアミノフェン 皮膚粘膜眼症候群11
114 ロキソプロフェンナトリウム 肝障害21、肝機能異常13、間質性肺疾患13
116 塩酸アマンタジン 幻視13、幻覚10
116 カベルゴリン 心臓弁膜疾患11
116 塩酸プラミペキソール水和物 突発的睡眠24、交通事故23、
117 マレイン酸レボメプロマジン 悪性症候群10
117 塩酸メチルフェニデート 薬物依存11
117 炭酸リチウム 治療薬毒性17
117 ハロペリドール 悪性症候群43
117 リスペリドール 悪性症候群15
117 塩酸パロキセチン水和物 自殺企図26、抗利尿ホルモン不適合分泌14、自殺企遂13、アクティベーション症候群10
117 フマル酸クエチアピン 悪性症候群15
117 アリピプラゾール 悪性症候群20、痙攣15、妄想11、自殺企遂10
117 塩酸セルトラリン 自殺企遂16
118 非ピリン系感冒剤(4)
(PLのこと?)
肝障害11
119 塩酸ドネペジル 痙攣12
122 臭化パンクロニウム 感音性難聴10
123 臭化ジスチグミン コリン作動性症候群22
131 ベルテポルフィン 網膜出血11
212 塩酸メキシレチン 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹12
212 コハク酸シベンゾリン 低血糖症22
212 塩酸ピルジカイニド 心室性頻脈20
213 塩酸アミオダロン 間質性肺疾患34
213 塩酸ペプリジル 間質性肺疾患13、トルサード・ド・ポアン12、心電図QT延長11、心房細動11、、塞栓症10
214 カンデサルタンシルキセチル 間質性肺疾患10
214 ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド 低ナトリウム血症14、低カリウム血症10
218 ベザフィブラート 横紋筋融解17
218 フェノフィブラート 肝機能異常12.
218 プラバスタチンナトリウム 横紋筋融解10
218 フルバスタチンナトリウム 肝障害19、肝機能異常11
218 アトルバスタチン水和物 横紋筋融解32、肝機能異常15、感肝障害12、血中クレアチニンホスホキナーゼ増加12
218 ロスバスタチンナトリウム 横紋筋融解15、肝機能異常15、血中クレアチニンホスホキナーゼ増加12
225 テオフィリン 痙攣20
232 ファモチジン 肝障害11
232 ランソプラゾール 膠原性大腸炎11
234 酸化マグネシウム 高マグネシウム血症13
239 インフリキシマブ(遺伝子組換え) 肺炎33、ニューモシスィスジロヴェシ肺炎26、間質性肺疾患13、細菌性肺炎11
241 ソマトロピン(遺伝子組換え) 側湾症14
241 下垂体性性腺刺激ホルモン(1) 卵巣過剰刺激症候群32
241 胎盤性性腺刺激ホルモン 卵巣過剰刺激症候群25
241 フォリトロピン ベータ(遺伝子組換え) 卵巣過剰刺激症候群11
243 チアマゾール 無顆粒球症60
243 プロピルチオウラシル 抗好中球細胞質抗体陽性血管炎10
245 プレドニゾロン 骨壊死36、B型肝炎19、ニューモシスィスジロヴェシ肺炎13、サイトメガロウイルス感染12
249 ヒトインスリン(遺伝子組換え) 低血糖症19、抗インスリン抗体陽性10
249 インスリン アスパルト(遺伝子組換え) 低血糖症18、抗インスリン抗体陽性15、コントロール不良の糖尿病10
249 インスリン グラルギン(遺伝子組換え) 低血糖症28
249 酢酸リュープロレリン 間質性肺疾患17、注射部位硬結10
255 硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸 血圧低下12
259 コハク酸ソリフェナシン 尿閉14
325 アミノ酸・糖・電解質(3-1) ネフローゼ症候群10
333 ワルファリンカリウム 脳出血12、胃腸出血12、INR増加11、筋肉内出血10、出血10
333 ヘパリンカルシウム ヘパリン起因性血小板減少症13
333 ヘパリンナトリウム ヘパリン起因性血小板減少症74
333 フォンダパリヌクスナトリウム 処置後出血41、処置後血腫26
339 塩酸チクロピジン 肝障害23、無顆粒球症20、胆汁うっ帯12、肝機能異常12、肝細胞損傷11、血栓性血小板減少性紫斑病10
339 シロスタゾール 脳出血17
339 アスピリン 肝障害15
339 硫酸クロピドグレル 脳出血20、肝細胞損傷12、無顆粒球症11、肝機能異常11
394 アロプリノール 好酸球増加と全身症状を伴う薬疹31、薬疹18、スティーブンス・ジョンソン症候群15、肝障害14、中毒表皮壊死融解症12、
395 アルテプラーゼ(遺伝子組換え) 出血性脳梗塞163、脳出血38、脳浮腫28、脳梗塞13
396 グリベンクラミド 低血糖昏睡18
396 グリメピリド 低血糖症34、低血糖昏睡24、
396 アカルボース 肝障害20
396 塩酸ピオグリタゾン 心不全15、うっ血性心不全11
399 シクロスポリン ネフローゼ症候群11、サイトメガロウイルス感染10、肝機能異常10
399 アザチオプリン 白血球数減少12、脱毛症10
399 タクロリムス水和物 肺炎30、間質性肺疾患12
399 メトトレキサート 間質性肺疾患75、汎血球減少症43、骨髄機能不全24、リンパ増殖性障害16、肺炎14、リンパ腫13、ニューモシスィスジロヴェシ肺炎13、血小板減少10、白血球数減少10
399 アレンドロン酸水和物 骨髄炎46、骨壊死38
399 リセドロン酸ナトリウム水和物 骨髄炎14
399 塩酸ラロキシフェン 深部静脈血栓症17
399 メシル酸ナファモスタット アナフィラキシーショック36、ショック35、高カリウム血症28、アナフィラキシー様反応12
399 タクロリムス水和物 サイトメガロウイルス感染14、血栓性微小血管症14
399 パミドロン酸ニナトリウム 骨壊死22、骨髄炎10
399 イカドロン酸ニナトリウム 骨壊死10
399 ゾレドロン酸水和物 骨壊死52、骨髄炎26、低カルシウム血症14、悪性新生物進行13
399 エタネルセプト(遺伝子組換え) 肺炎41、間質性肺疾患33、ニューモシスィスジロヴェシ肺炎14
399 ダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え) 動静脈瘻閉塞13、脳出血11、
442 ブシラミン 間質性肺疾患23、ネフローゼ症候群17
449 トラニラスト 肝機能異常11
613 アモキシシリン 多形紅斑11
613 塩酸セフカペンピポキシル 肝機能異常12
613 塩酸セフォチアム アナフィッラキシーショック11
613 セファゾリンナトリウム アナフィラキシーショック24
613 セフトリアキソンナトリウム アナフィラキシーショック23、胆石症12、アナフィラキシー反応10、
613 スルバクタムナトリウム・セフォペラゾンナトリウム アナフィラキシーショック23
616 リファンピシン 肝障害13
617 アムホリテシンB 低カリウム血症33
622 イソニアジド 肝障害13
624 レボフロキサシン 肝障害14、低血糖症11
624 メシル酸ガレノキサシン水和物 薬疹13
624 リネゾリド 血小板数減少41、汎血球減少症19、貧血10
625 塩酸バラシクロビル 急性腎不全53、意識変容状態32、脳炎28.、神経系障害23、構語障害16、腎障害13、急性全身性発疹性膿疱症10
625 リン酸オセルタミビル 異常行動201、痙攣41、譫妄29、幻覚26、意識消失17、意識変容状態16、激越12
625 リバビリン 貧血16、ヘモグロビン減少14、好中球症減少10
625 ザナミビル水和物 異常行動65
629 塩酸テルビナフィン 肝機能異常37、肝障害37

 資料3-2:国内副作用報告の状況(医療用医薬品)[PDF1:5.3MB] [PDF2:4.9MB]
 資料3-3:国内副作用報告の状況(一般用医薬品)[PDF:1.1MB]

 詳細については、医薬品医療機器総合機構HP(http://www.info.pmda.go.jp/)の「副作用が疑われる症例報告に関する情報」のページでの検索も可能です。(以下同機構サイトへリンク)

 副作用が疑われる症例報告に関する情報について(平成16年度以降の報告)
 副作用が疑われる症例報告の活用方法について(PDFファイル)

 厚労省医薬食品局のまとめによれば、平成19年度の薬事法に基づく製薬企業からの医薬品の副作用の報告件数は28,500件で過去最高に達したものの、医師ら医療関係者からの報告は222件増の3,891件に留まっています。4年前の平成15年度には5,399件あったことを考えると、現場の医療関係者の怠慢と言われてしまうかもしれませんが、やはり何か原因があるのではないかと考えます。

 それは、薬局で副作用事例を把握した場合、これを医療機関が報告するか薬局が報告するかの問題です。私も副作用と思われる事例を把握したことがありますが、薬局側では患者の詳しいデータを持ち合わせていないのが現状です。また薬局で副作用事例と思っても医療機関側では副作用と判断しない場合には、やはり報告しにくくなるのではないのでしょうか? 医薬分業の進展とは逆に医療機関からの副作用報告が減少しているのはこういった背景があるのではないかと思います。海外のように、報告の簡素化やオンライン報告の導入など、現場の薬剤師にも積極的に報告できるような仕組みを取り入れてもらいたいものです。

 一方、今回の部会では、海外における添付文書の変更や当局の発表をまとめたものをあわせて発表しています。今後はこれらの知見を踏まえ、添付文書の改訂が行われるものと思います。やはり代表的な重篤な副作用は、患者さんに伝えることが必要だと改めて感じさせられます。

 資料3-5:外国における新たな措置の報告状況[PDF:5.2MB]

 関連情報:
  第7回リン酸オセルタミビルの臨床的調査検討のためのワーキンググループ(臨床WG)
    (厚労省2008年7月10日開催)
   http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/s0710-6.html
   TOPICS 2008.7.27 政府・与党が医薬品庁設置に動き出す
         2007.7.18 最近の国内外の副作用等の報告状況

 参考:【厚労省】企業からの副作用報告が過去最高
      (薬事日報 HEADLINE NEWS 7月30日)
        http://www.yakuji.co.jp/entry7549.html

8月1日 15:20更新


2008年08月01日 00:28 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    10月23日に、議事録が公開されました。
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/txt/s0724-2.txt