来春に予定されている薬事法施行に伴い改正が予定されている省令案など9つのパブリックコメントが開始されました。(意見募集締切日10月16日)
●パブリックコメント(意見募集中案件一覧・厚労省関連)
意見募集の内容については、多岐にわたっていますが、本記事では注目する事項について、順次紹介します。
●薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」に関する意見の募集について
注目のネット販売(省令案では「郵便その他の方法による医薬品の販売等」として規定)についての取り扱いは、下記のようになっています。
薬局開設者又は店舗販売業者は、その薬局又は店舗以外の場所にいる者に、郵便その他の方法による医薬品の販売又は授与(以下「郵便等販売」という。)を行う場合、次の1〜3に掲げるところにより行わなければならない。
- 第三類医薬品以外の医薬品を販売し、又は授与しないこと。
- 当該薬局又は店舗に貯蔵し、又は陳列している医薬品を送付すること。
- 当該薬局又は店舗が郵便等販売を行うことについて広告をするときは、当該広告に薬局において掲示しなければならない事項と同じ情報を表示すること。
薬局開設者又は店舗販売業者は、郵便等販売を行おうとする場合、あらかじめ、薬局又は店舗ごとに、その薬局又は店舗の所在地の都道府県知事(その店舗の所在地が保健所設置市又は特別区である場合は、市長又は区長)に、次の1〜3の事項を届け出るものとする。
- 当該薬局又は店舗の名称及び所在地
- 当該薬局又は店舗の許可番号及び許可年月日
- 当該薬局又は店舗の郵便等販売の方法
前項の届出は、様式1(17ページ参照)による届書を提出することによって行うものとする。
つまり、いわゆるインターネットによる販売はもちろんのこと、カタログ販売など店舗以外での販売を行う場合は、全て届出が必要ということになるようです。また、販売可能な医薬品の範囲についても改めて、「第三類医薬品以外の医薬品を販売し、又は授与しないこと。」と明示し、検討会の報告書に沿った省令案となっています。
おそらく、この項目については医薬品のインターネット販売を指示する人・団体から相当数の(組織的な)意見が出されるのではないかと思います。パブリックコメントに押されて、方針を変更した過去の事例もあり、厚労省が果たして、その意見を受け入れるかどうか注目です。
次いで注目されるのは、薬局医薬品というカテゴリーが新たに定義された点です。
薬局開設者は、薬局医薬品(一般用医薬品以外の医薬品(薬局製造販売医薬品を含む。)をいう。以下同じ。)を販売等する場合は、薬剤師に販売等させるものとする。
薬局開設者は、薬局医薬品を販売し、又は授与する場合、書面を用いて、その適正な使用のために必要な情報提供を次の1〜3に掲げるところにより薬剤師に行わせなければならない。
- 当該薬局内の情報提供を行う場所において、薬剤師が直接情報提供を行うこと。
- 当該医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者の当該医薬品の使用が適切であることを確認するための情報提供を行うこと。
- 次の1)〜6)に掲げる事項について情報提供を行うこと。
1) 当該医薬品の名称
2) 当該医薬品の成分及び分量
3) 当該医薬品の用法及び用量
4) 当該医薬品の効能又は効果
5) 当該医薬品に係る使用上の注意のうち、保健衛生上の危害の発生を防止するために必要な事項
6) その他当該医薬品を販売し、又は授与する薬剤師が必要と判断する事項
当該情報提供の際に用いる書面に記載しなければならない事項は、上記の3の1)〜6)のとおりとする。
薬局開設者は、薬局医薬品を購入し、若しくは譲り受けようとする者又は購入し、若しくは譲り受けた者から相談があった場合、その適正な使用のために必要な情報提供を次の1及び2に掲げるところにより薬剤師に行わせなければならない。
- 当該薬局内の情報提供を行う場所において、薬剤師が直接情報提供を行うこと。
- 相談に応じて医薬品の使用に当たり保健衛生上の危害の発生を防止するために必要な事項について情報提供を行うこと。
薬局開設者は、薬局医薬品を調剤室(この省令による改正後の薬局等構造設備規則(昭和36年厚生省令第2号)(以下「新構造設備規則」という。)に規定する調剤室をいう。)その他の場所に貯蔵しなければならない。
おそらく、この薬局医薬品というカテゴリーが作られた背景には、処方せん医薬品に指定されなかった医療用医薬品の取り扱いを明確化する狙いがあったのではないかと思います。
この条文の通りになると、現在、薬局・薬店の店頭で販売されている、フルコートF、ベトネベートN、カタリンKなどは陳列が不可となり、また店舗販売業では販売そのものができなくなるものと思われます。
しかし、今回取り扱いを明示したことで、医療用医薬品のいわゆる零売を一定の条件で認めるということになったとも解釈ができます。では、薬歴等に販売記録を残すことは今後は不要となるのでしょうか?
一方、販売方法については下記のように記されています。
薬局開設者、店舗販売業者又は新配置販売業者は、新法第36条の5第1号の規定により、第一類医薬品を販売し、又は授与する場合は、次の1又は2のいずれかに掲げる方法により行わなければならない。
- 薬剤師が直接販売し、又は授与すること。
- 薬剤師の管理及び指導の下で薬剤師以外の従事者に販売させ、又は授与させること。
薬局開設者、店舗販売業者又は新配置販売業者は、新法第36条の5第2号の規定により、第二類医薬品及び第三類医薬品を販売し、又は授与する場合は、次の1又は2のいずれかに掲げる方法により行わなければならない。
- 薬剤師又は登録販売者が直接販売し、又は授与すること。
- 薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下で薬剤師又は登録販売者以外の従事者に販売させ、又は授与させること。
上記で気になったのは、薬剤師(又は登録販売者)の管理及び指導の下であれば薬剤師(登録販売者)以外の従事者が医薬品を販売してもよいとする部分です。特に、第一類については、薬剤師による情報提供が義務化されており、指導管理下であれば薬剤師以外でもよいというのは、薬事法の基本的な考えから大きくはずれているような気がしてなりません。
また、第一類医薬品、指定第二類医薬品の陳列方法については以下のような具体的な方法が示されました。
薬局開設者及び店舗販売業者は、新法第57条の2第2項の規定により、一般用医薬品の陳列する場合、次の1〜3に掲げる方法により行わなければならない。
- 第一類医薬品を、第一類医薬品陳列区画(新構造設備規則に規定する第一類医薬品陳列区画をいう。以下同じ。)に陳列すること。ただし、かぎをかけた陳列設備(新構造設備規則に規定する陳列設備をいう。以下同じ。)に陳列する場合はこの限りでない。
- 指定第二類医薬品を、新構造設備規則に規定する情報提供を行うための設備から7メートル以内の範囲に陳列すること。ただし、かぎをかけた陳列設備に陳列する場合又は指定第二類医薬品を陳列する陳列設備から1.2メートルの範囲に医薬品を購入等しようとする者が進入することができないよう必要な措置が採られている場合はこの限りでない。
- 第一類医薬品、第二類医薬品及び第三類医薬品を混在しないように陳列すること。
以上、薬事法・一般用医薬品の陳列に関する部分
新配置販売業者は第一類医薬品、第二類医薬品及び第三類医薬品を混在しないように配置しなければならない。
1.第一類医薬品を陳列する陳列棚その他の陳列のための設備(以下「陳列設備」という。)から1.2メートルの範囲(以下「第一類医薬品陳列区画」という。)に医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が進入することができないよう必要な措置が採られていること。ただし、第一類医薬品を陳列しない場合又はかぎをかけた陳列設備に陳列する場合はこの限りでない。
2.第一類医薬品を販売し、又は授与しない営業時間がある場合、第一類医薬品陳列区画を閉鎖することができる構造設備を有していること
次の1〜5の基準に適合する情報提供をするための設備を有すること。ただし、複数の設備を有している場合は、いずれかの設備が基準に適合していれば足りること。
- 調剤室に隣接する場所にあること。
- 第一類医薬品を陳列する場合、第一類医薬品陳列区画の内部又は隣接する場所にあること。
- 医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が進入することができないよう必要な措置が採られていない場所に指定第二類医薬品(この省令による改正後の薬事法施行規則(以下「新施行規則」という。)に規定する指定第二類医薬品をいう。以下同じ。)を陳列する場合、指定第二類医薬品を陳列する陳列設備から7メートル以内の範囲にあること。
- 2以上の階に医薬品を通常陳列し、又は交付する場所がある場合は、各階の医薬品を通常陳列し、又は交付する場所の内部にあること。
- 面積が1000平方メートル以上の薬局にあっては、医薬品を販売し、又は授与する設備に隣接する場所にあること。
以上、薬局の構造設備に関する部分(法第5条第1号関係)
つまり、第一類医薬品はかぎをかけた陳列設備で陳列するか、消費者が入り込めないような場所(薬局においては調剤室に隣接する場所)に陳列することが求められ、指定第二類医薬品については、消費者が直接手にとることができる場所での陳列が可能なものの、情報提供を行うための施設から7メートル以内のであることが必要です。
こういった、 指定第二類医薬品についての販売のしにくさもあるのか、 指定第二類医薬品についてのパブリックコメントも行われています。
●「薬事法施行規則等の一部を改正する省令(平成20年厚生労働省令第xx号)による改正後の薬事法施行規則に基づき厚生労働大臣の指定する指定第二類医薬品」に関する意見の募集について
厚労省では、検討会が示していた成分名を現在そのまま指定していますが、今回改めてその指定が適切であるかどうかの意見を求めるようです。
おそらく風邪薬や咳止め成分など指定第二類から、指定のない第二類への変更を求める声が改めて出されるのではないかと思いますが、その一方、デキストロメトルファン等、誤用や濫用・悪用などの可能性を考えて逆に指定第二類への変更を求める声も出てくるのではないかと思います。
いずれにせよ、医薬品販売に関する意見を述べる最後のチャンスだと思います。おそらくネット販売業者やドラッグストア関係者から非常に多くの意見が(おそらく組織的に)示されることでしょう。疑問や意見のある人は是非、今回のパブリックコメントを利用しましょう。
なお、法律の施行期日は2009年6月1日にするようです。
薬事法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令案」及び「薬事法施行令等の一部を改正する政令案」に関する意見の募集について
関連記事:
【厚労省】“薬局医薬品”を省令で明記−改正薬事法の政省令案でパブコメ
(薬事日報 HEADLINE NEWS 9月18日)
http://www.yakuji.co.jp/entry8037.html
【一般用医薬品のインターネット販売】規制改革会議と厚労省の議論は平行線
(薬事日報 HEADLINE NEWS 9月17日)
http://www.yakuji.co.jp/entry8035.html
関連情報:TOPICS
2008.08.07 医薬品のネット販売制限は消費者の利便を損なうか?
2007.05.09 一般用医薬品リスク分類のパブコメ結果が公表
2006.12.16 パブリックコメントを活用しよう
9月18日 0:40更新 19日 18:15更新
2008年09月17日 13:58 投稿
早くも、インターネット販売を行っている事業所・団体からコメントが発表されました。
(内容はほとんど同じですが)
日本オンラインドラッグ協会、『薬事法施行の一部を改正する省令案』 に対するコメントを発表
(NPO法人 日本オンラインドラッグ協会 9月17日)
http://www.online-drug.jp/2008/09/post_20.html
ケンコーコム、『薬事法施行の一部を改正する省令案』 に対するコメントを発表
(ケンコーコム(株)プレスリリース 9月17日)
http://www.kenko.com/company/pr/archives/2008/09/post_30.html
いつも有用な情報を提供してくださり、感謝しております。
先ほど、パブリックコメントを投稿しました。
今後の医療制度では、一次医療はどんどん保険からは切り離されることになるのでしょう。
薬剤師はとかく地味で主張しないと表現されますが、このまま主張しないで
医師・看護師=医療の専門職 薬剤師=物販の人
となることは、薬剤師のみならず、日本の医療にとっても大きな損失であると思います。
これからも、日本の制度は少しづつ変わっていくでしょう。
「なんとなく不満、不安はあるけど、職に困らないからそれでいい」
といって、主張せずに過ごしていたからこそ「薬剤師が余って困る」国へ変わっていくことを止められなかったのです。
各人しっかりと発信していきたいものです。
さかなさんコメントありがとうございます。
> 薬剤師=物販の人
私も、薬剤師(登録販売者も)は産業界にとっては、利益率の高い医薬品(きっとマスコミ品を中心に安売り競争になって利益は少なくなるでしょうが)をいかにたくさん販売するための「道具」にくらいしか考えていないのではないかと思うことがあります。
しかし冷静に考えれば、薬は本来、「必要な人が、必要なときに、必要なだけ使用する」というのが本来の姿です。禁煙補助剤などを除き、本来は消費を喚起して販売するようなものではないはずです。
ネット販売業者は、パブリックコメントに意見を出すよう働きかけていますね
医薬品のネット販売が規制強化されてしまうかもしれません
(ケンコーコム広報担当ブログ)
http://blog.kenko.com/pr/2008/09/post-5335.html
漢方薬が買えなくなる? 漢方薬が売れなくなる!
(ナガエ薬局)
http://www.nagae-ph.com/
http://www.nagae-ph.com/yakuji.html
私も、ネット販売はどこまで規制すべきかは悩ましいところです。彼らは、IT技術を用いれば、対面販売と同じかそれ以上のサービスが行えるとしていますが、ネット販売は購入相手が見えないものです。24時間薬剤師が電話に応じるというのなら話は別ですが、誤用や濫用、悪用の危険性は間違いなくあります。それを防止する手立ては、やはり直接対話に勝るものはないと考えます。
世界の流れは確かに規制緩和ですが、「くすりとどうかかわるか」とかとの認識や、いわゆる「くすり教育」がまだ十分でない日本においては、ともすると「くすり」に対して過剰な期待を抱きかねません。これは、メディアに載せられて○○ブームに乗せられている姿を見ても明らかです。
ある学生さんがブログに書いた次の記事を読むと、改めて誰のための薬事法改正なのかと考えさせられます。
【ニュース】医薬品のネット販売、規制強化について(MoMAのつぶやき 9月21日)
http://happy-moma.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-a5d9.html
日薬雑誌10月号の日薬情報No195に関連記事が掲載されています。
薬局医薬品について、貯蔵は「調剤室・その他の場所」としているものの、陳列については、今後検討課題になるとしています。
また、冒頭で「調剤された薬剤の授与、薬局製剤や場合によって販売することのできる医療用医薬品」を薬局医薬品と解釈していて、処方せん医薬品もこれに含めるのが妥当のようです。(パブコメで確認が必要?)
2日、ヤフー株式会社は今回のパブリックコメントについて、厚労省に意見書を提出したと発表しています。
「薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」に対する意見書の提出について
(ヤフー株式会社プレスリリース10月2日)
http://pr.yahoo.co.jp/release/2008/1002a.html
同社では、今回の省令案について「時間的あるいは地理的に制約のある消費者が自らの健康を維持する必要性や、選択権等を損なうものと深く憂慮する」としたうえで、「医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会」で、ネット販売について、店舗と比較して具体的にどう実質的な議論まではされていないとして、改めて関係事業者を構成員とした議論が行われることを要望しています。
ここへ来て、ブログなどで「ネットで薬が買えなくなる」といった記事が目立つようになっています。ネット運営会社や、出店している薬局薬店が厚労省の省令案を紹介しているためです。ケンコーコムでは下記ページをあちこちに紹介するよう呼びかけているようです。
ネットで薬が買えなくなる(ケンコーコム)
http://www.kenko.com/info/notice/otc/public_comment.html
各ブログの記事や書き込みをみると、「今まで法の穴をついて販売されていたことが問題」との意見もありますが、「規制緩和に逆行」「不便になる」といった意見が大半で、おそらくパブコメへも相当数の意見が出されていると思われます。
日薬やドラッグストア関係者は、今回のネット販売の制限についての省令案をどう考えているのでしょうか? 日薬もおそらく会員には、こういう意見を出しましたと日薬雑誌などで紹介するのでしょうが、やはり基本的立場を社会に対して示す必要があるのではないでしょうか?
関連記事やブログは、Googleブログ検索で、「インターネット」「薬」「販売」「ネット販売」などのキーワードを入れて検索ボタンを押すとでてきます。
Googleブログ検索 http://blogsearch.google.com/blogsearch?hl=ja&client=news
ケンコーコムが7日、パブリックコメントを提出したと発表しています。
ケンコーコム、『「薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」に関する意見の募集』
について、パブリックコメントを提出
(New2u.Unet 10月7日)
http://www.news2u.net/NRR200837889.html
まさしくIT技術を駆使して、賛同を呼びかけていますね。
日薬が10日、パブリックコメントを提出したようです。
【日薬】改正薬事法省令案でパブコメ提出
(薬事日報HEADLINE NEWS 10月14日)
http://www.yakuji.co.jp/entry8257.html
一方、14日の日刊薬業ヘッドラインニュースよれば、 日本チェーンドラッグストア協会は10日までに、OTCのネット販売について、「第3類医薬品」に限定した省令案を支持するパブリックコメントを提出する方針を決めたと伝えます。
ネット販売業者を支持するわけではありませんが、どちらの団体も、今までセルフ販売を黙認し、情報提供など積極的に行ってこなかったのにという感は否めません。
未だ第一類のセルフ販売や第三類以外のネット販売が行われている現状を直ちに変えないと、消費者から理解を得ることは出来ないでしょう。
日本オンラインドラッグ協会は16日、パブリックコメントを提出したと発表しました。(ケンコーコムも同じ内容で、改めてパブリックコメントを提出しています)
日本オンラインドラッグ協会、『薬事法施行規則等の一部を改正する省令案』について
パブリックコメントを提出(ケンコーコムプレスリリース 10月16日)
http://www.kenko.com/company/pr/archives/2008/10/post_33.html
同協会では、以下などを理由としてネット販売を第三類のみとした省令案は不当だとしています。
16日、楽天もパブリックコメントを提出したと発表しています。
医薬品のネット販売継続を求めて 厚生労働省にパブリックコメントを提出
(楽天株式会社ニュースリリース 10月16日)
http://www.rakuten.co.jp/info/release/2008/1016.html
添付資料には、利用者の声がまとめられています。