日医は17日の定例の記者会見で、先日厚労省より公表された2006年度の国民医療費について、コメントを発表しています。
国民医療費の伸びの真相(日本医師会定例記者会見 2008年9月17日)
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20080917_2.pdf
日医では、国民医療費の伸びの内訳のうち、「診療報酬改定等」「人口増」「人口の高齢化」以外の「その他」という内訳について、厚労省がその理由として「医療の高度化等の自然増」「医療の技術の進歩・高度化等」としている点を問題視、この「その他」には、疾病構造の変化、受療率の変化、その背景にある医療制度改革なども含まれており、「医療の高度化」を強調するのは不適切であるとしています。
そのうえで、「その他」の中で大きな割合を占める薬局調剤医療費の大きな伸びに言及し、「厚生労働省は「その他」の伸びを「医療の高度化等の自然増」とも説明しているが、薬局調剤医療費がここまで顕著に伸びるような「医療の高度化」があったのであろうか。この場合そうではなく、医薬分業政策による院外処方の拡大の影響であると推察される。」と指摘し、国民医療費の伸びは院外処方が拡大したことが主要因であるとしています。
一方日医では、一般診療医療費は、人口増、高齢化の影響を除くと、2001年度、2003年度は前年度比マイナスであるともしていて、いわば薬局調剤医療費の伸びだけが問題であるかのようなイメージを与えています。
確かに薬局が増えることにより、薬局調剤医療費は増えています。しかし、その中身についてもきちんと分析すべきです。統計は異なりますが、 平成18年社会医療診療行為別調査結果の概況をみると、薬局調剤総点数に占める薬剤料の割合は上昇傾向(平成18年は薬価引き下げの影響もあり減少)にあり、院内処方に比べ院外処方の方が、薬剤種類数別件数の構成割合が高い一方、1件当たり薬剤種類数に占める後発医薬品の種類数の割合は低くなっています。(資料リンク1・2)
つまり、院外処方では院内処方と比べ、新薬や先発品が優先的に処方され、結果的に薬局調剤医療費を上昇させているという可能性も考慮すべきであり、もし院内処方と同じように、種類を少なく(適切な処方)・後発医薬品を処方するなどの処方行動が行われていれば、薬局調剤医療費の伸びはおそらくもう少し小さくなっていたかもしれないという点も考慮すべきです。
近年の医療費の伸びは、日医が言うようにさまざまな要因が考えられます(個人的には、地方自治体が行っている子どもの医療費無料化なども影響があると考えています)が、日薬も、医薬分業の拡大で薬局調剤医療費がどのように推移しているか、処方傾向、後発医薬品の使用状況などさまざまな視点から分析して、医薬分業によっていかに保険医療(保健医療)に貢献しているかを示さないと、再び分業バッシングにあってしまうかもしれません。
資料:平成18年度国民医療費の概況(厚労省2008年8月28日)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/06/index.html
参考:医療介護CBニュース9月17日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/18248.html
2008年09月18日 14:17 投稿