医薬品ネット販売における問題点(省令案パブリックコメント)

 パブリックコメント提出用に問題点を整理してみました。再度内容を検討して、近く提出する予定です。
(個人的な見解であり、アポネット研究会としての見解をまとめたのではありません)

郵便その他の方法による医薬品の販売等【法第9条、第11条、第38条、新法第29条の2関係】の項目について
(インターネット販売について、全般的な意見)(省令案14ページ)
  • 諸外国の状況を考えれば、一般用医薬品をインターネットで販売することは一定の条件が整えば差し支えないと考える。
  • しかしながら、今回の省令案ではインターネットでの販売方法について、「第三類医薬品以外の医薬品を販売し、又は授与しないこと。」「当該薬局又は店舗が郵便等販売を行うことについて広告をするときは、当該広告に薬局において掲示しなければならない事項と同じ情報を表示する。」などが規定されただけで、インターネット販売で起こりうる諸課題が十分にカバーされていない。できるだけ早く、インターネット上の広告のあり方や販売方法などについて具体的な議論を行い、インターネット販売におけるガイドラインを作成し、省令化すべきである。
  • インターネット販売で最も課題となるのは購入相手の姿が見えない点がある。現在インターネットで医薬品を販売する事業所は、IT技術を用いれば、対面販売と同じかそれ以上のサービスが行えると主張しているが、ある薬の購入を希望する人にとって本当に必要な薬かどうかは、直接対話をしないとわからない場合もある。24時間薬剤師や登録販売者が電話などで応じる体制があるというのなら話は別だが、現実には難しい。もし、第3類以外の販売を可能とするならば、対面販売と変わらない情報提供のあり方について検討する必要がある。
  • またOTC薬の誤用や濫用、悪用の危険から国民を守る必要もある。海外では薬物対策から、プソイドエフェドリンやデキストロメトルファン(現時点では第二類医薬品)を含有する医薬品の販売については、購入者の年齢確認、販売量の制限など、店舗での販売でさえも規制が行われているが、今回の省令案ではそういった点は全く考慮されていない。インターネットの販売は購入相手の姿が見えないものであり、誤用や濫用、悪用といった側面での対策も必要である。もしわが国でこれらの医薬品のインターネット販売を無条件で認めれば、海外から薬物対策の遅れを指摘される可能性もある。
  • また、ごく一部だが処方せん医薬品ではない医療用医薬品をインターネットで販売する事業所も存在する。医療用医薬品の広告禁止の規定はあるが、医薬品の分類がはっきりしていなかったために法的根拠があいまいとなり、現在でも堂々と行われている現状がある。これについても何らかの規定を行う必要がある。(薬局医薬品の販売等【法第9条第1項関係】の項目についての項目でもよい)
  • さらに、個人輸入代行業による個人輸入代行に名を借りて医薬品(日本では処方せん医薬品に該当するものや未承認医薬品)がインターネットで販売されている場合が数多く存在する。インターネットでの医薬品の中には、偽物が少なくないとの指摘があり、国民の健康を守る上でも薬事法の対象となるよう、これらについても省令で規定すべきである。
  • 以上の点から、今回の省令案のみで「インターネットでの医薬品の適正な販売」は望めないと考える。登録販売業などの新規参入が増えることを考えれば、広告・販売方法などについてはあらゆるリスクを想定した上で、さらなる検討が必要である。
  • また、販売が可能な医薬品の範囲はインターネットによる販売方法を加味して慎重に検討する必要があり、当面は省令案の通り、販売・授与の範囲は第三類のみとするのが妥当である。
  • 一方海外ではいくつかの国で、インターネット販売が適切に行われるよう認証制度が導入されている。本省令案では、インターネットによる医薬品販売を行う場合には「あらかじめ、薬局又は店舗ごとに、その薬局又は店舗の所在地の都道府県知事(その店舗の所在地が保健所設置市又は特別区である場合は、市長又は区長)に届出をすればよいとしているが、薬剤師会などの業界団体や行政との共同で認証制度を確立し、一般消費者に対して、適切な販売を行うサイトであることがわかるようにすべきである。
(意見内容)「3.当該薬局又は店舗が郵便等販売を行うことについて広告をするときは、当該広告に薬局において掲示しなければならない事項と同じ情報を表示すること。」を「3.当該薬局又は店舗が郵便等販売を行うことについて広告をするときは、当該広告に薬局において掲示しなければならない事項と同じ情報のみを表示すること。」と改める
(理由)
  • インターネットでの医薬品を販売しているサイトをみると、承認された効能・効果以外の事項が広告されている場合や、口コミ情報として、必要以上に特定の商品について過剰な期待を抱くような内容の情報を提供している場合がある。
  • 一方、わが国では「くすりとどうかかわるか」の認識や、いわゆる「くすり教育」がまだ十分であるとは言えない現状がある。
  • 医薬品についての正しい情報を提供するためにも、インターネット上で掲示できる広告事項は、「同じ情報を表示すること」ではなく、「同じ情報のみを表示すること」とし、消費者が広告やインターネット上の情報に惑わされないような配慮を行うべきである。
(意見内容) 薬局開設者又は店舗販売業者は、その薬局又は店舗以外の場所にいる者に、郵便その他の方法による医薬品の販売又は授与を行う場合に必要な事項として、「4.同一商品を複数個販売したり、同一の人に繰り返し販売をしないなど、適正な販売に留意する。」を追加する.
(理由)
  • 海外ではOTC薬の誤用や濫用、悪用の危険から国民を守るため、一部成分(アセトアミノフェンなど)については包装単位ごとに医薬品分類を分けているが、わが国のリスク分類にはそういった考え方はない。
  • 日本では咳止め薬などについては、○日分までの包装までと決められているものもあるが、一方でこれらの成分が含まれる総合感冒薬や鎮痛解熱剤では大包装のものが存在する。
  • OTC薬のインターネット販売を認めている英国では、英国王立薬剤師会が倫理規範などを盛り込んだ”Professional standards and guidance for internet pharmacy services”を作成し、「購入者が本当に必要なのかどうか確認する」「濫用の可能性があることを留意し、大量購入や頻繁購入がある場合には販売を拒否する」などを行うことが求められており、わが国でもそういった規定を加えるべきである。

関連情報:一般用医薬品販売制度ホームページ(厚労省)
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/index.html

TOPICS 2008.09.17 薬事法施行規則等に関するパブリックコメント
       2008.08.07 医薬品のネット販売制限は消費者の利便を損なうか?


2008年10月09日 00:11 投稿

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