国民の言語生活の実態をとらえる調査研究を行っている、独立法人国立国語研究所(http://www.kokken.go.jp/)では、医療の現場で使われている専門用語などの分かりにくい言葉について、「病院の言葉」委員会を設けて、わかりにくさをなくしていくための方法論などを検討してきましたが、21日、その中間報告を公表しています。
「病院の言葉」を分かりやすくする提案(中間報告)
(独立法人国立国語研究所 ウェブサイト)
http://www.kokken.go.jp/byoin/teian/
http://www.kokken.go.jp/byoin/teian/byoin_tyukan_hokoku.pdf
独立法人国立国語研究所 10月21日報道資料
http://www.kokken.go.jp/syokai/press/08_10/0810_1.pdf
同委員会では、実務委員による語彙選定作業の集計結果に基づき、詳しく取り上げる語の優先候補66語、優先ではない候補60語、簡潔に取り上げる語の候補約900語をリストアップし、これらを下記の3つの類型に分類、今回の中間報告ではこのうちの140語をとりあげ、うち代表的な57語については、わかりやすい言葉への言い換えや、説明の具体例などについて解説を行っています。
同委員会では今回の提案で取り上げられなかった言葉についても,これらを参考にして一つ一つどの類型に当てはまるかを見極めて、適切に対応することを求める一方、今回の提案が医療者による分かりやすい説明の指針となり、ひいては患者やその家族の的確な理解を助ける手引にしてほしいとしています。
薬剤師と関係の深い言葉を下記に抜粋しました。私たちが服薬指導で使う用語については、こういった視点でのわかりやすい言葉への置き換えが必要でしょう。
言葉の置き換え、説明例(中間報告より引用)
- 『エビデンスがある薬』→よく効くことが研究によって確かめられている薬
- 『ステロイド』→炎症を抑えたり、免疫の働きを弱めたりする薬で、もとは人間のからだの中で作られるホルモン
- 『対症療法』→病気によって起きている、“○○”などの症状を和らげたりなくしたりする治療法
- 『頓服』→食後など決まった時間ではなく、症状が出たとき(発作時や症状のひどいときなど)に薬を飲むこと
- 『化学療法』→薬を使う、がんの治療法
- 『治験』→新薬の開発のための人での試験
- 『臨床試験』→新しい薬や治療法などの有効性や安全性を調べるために、人間を対象として行われる試験研究
- 『副作用』→病気を治すために使った薬による、望んでいない作用
- 『アナフィラキシーショック』→特定の物質がからだの中に入ることによって全身に過剰なアレルギー反応が起こり、短時間で急激に血液の循環がうまくいかなくなり、生命に危険が及ぶ状態になること
- 『ガイドライン』→診療指針・標準治療・標準的な診療の目安
- 『クリニカルパス』→退院までの道筋を示した表・診療内容をスケジュール化し、分かりやすく記したもの
- 『緩和ケア』→痛みを和らげる医療・病気に伴う痛みや苦しみを和らげることを優先する医療
なお12月1日まで、今回の中間報告に関する意見募集が実施されています。疑問や意見はここで伝えるのがよいでしょう。寄せられた意見は、平成21年3月に発表予定の最終報告および「病院の言葉の手引」(仮称)をまとめる際の参考とするそうです。
資料:「病院の言葉」を分かりやすくする提案(独立法人国立国語研究所 ウェブサイト)
http://www.kokken.go.jp/byoin/
関連情報:患者とともに歩むための言葉の提案
(週間医学界新聞 第2799号 2008年9月29日)
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02799_03
中日新聞10月21日(共同通信配信)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008102190193344.html
読売新聞10月22日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20081022-OYT8T00176.htm
朝日新聞10月22日
http://www.asahi.com/health/news/TKY200810210376.html
10月22日 1:40更新 11:50更新
2008年10月21日 16:57 投稿
引用ですので、アポネットのミスではありませんが、
『化学療法』→薬を使う、がんの治療法 は
→薬を使う、感染症やがんの治療法 の方がより正確ではないでしょうか。
3月7日、最終報告が発表されました。
報道発表
http://www.kokken.go.jp/syokai/press/09_03/0903_1.pdf
中間報告に対する意見公募に対して、約900件の意見が寄せられ、これらの意見を踏まえて再検討を行い,最終報告としてまとめています。
「病院の言葉」を分かりやすくする提案(最終報告)[PDF:1073KB]
http://www.kokken.go.jp/byoin/pdf/byoin_teian200903.pdf
最終報告は下記WEBページでも閲覧することができます
http://www.kokken.go.jp/byoin/
なお、上記本記事にある表のリンクは切れていないようなので、ご活用下さい。
また、勁草書房より書籍としても発刊されるとのことです。
http://www.kokken.go.jp/byoin/book/