米FDAでは29日、抗ウイルス薬諮問委員会と非処方せん医薬品諮問委員会の合同の諮問委員会を開催します。この諮問委員会では、パンデミック対策に抗ウイルス薬(タミフル・リレンザ)の家庭での備蓄を進めるために、家庭用保管品(Medkits)の導入の検討の他、これら抗ウイルス薬のOTCへのスイッチの是非について話し合いが行われるようです。(資料は、現在精査中)
Joint Meeting of the Antiviral Drugs Advisory Committee and the Nonprescription Drugs Advisory Committee(2008.10.29)
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/cder08.html#NonprescriptionDrugs
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/08/briefing/2008-4385b1-00-index.htm
FDAでは、諮問委員会の開催に先立って27日に討議資料を公表しています。
DIVISION OF ANTIVIRAL PRODUCTS DIVISION OF NONPRESCRIPTION CLINICAL EVALUATION FDA BRIEFING INFORMATION
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/08/briefing/2008-4385b1-01-FDA.pdf
また、ロシュ社・GSK社は、タミフル・リレンザのMedKitsについての資料を公表しています。
ロシュ社の資料
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/08/briefing/2008-4385b1-02-Roche.pdf
GSK社の資料
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/08/briefing/2008-4385b1-03-GSK.pdf
2005年、CDC(疾病管理予防センター)では諮問委員のグループが、核攻撃、炭疽菌(バイオテロ)、新型インフルエンザの流行に備えて、処方薬を家庭で常備することを提言し、このMedkitsも公衆衛生上の非常事態時の対応策として導入が検討されていました。
この両剤のMedkitsは、州もしくは地域保健当局よりパンデミックが宣言されたとき、症状発現時(48時間以内)または予防のためにのみ使われるもので、両社が案として示したパッケージにも、「通常のインフルエンザでは使わないこと」が明記されています。また、タミフルについてはカプセルから内容物を取り出して、子供用に飲ませる場合の具体的な方法も記されています。
また両社では今回の委員会にあわせて、同封の患者向けの説明書を一般消費者がどれだけ理解できるかの調査を行っていて、近い将来このMedkitsが導入される感があります。
日本では、パンデミック対策として自治体や医療機関などが抗ウイルス薬を備蓄することが求められていますが、米国では抗ウイルス薬を家庭で常備してもらい、パンデミックになったときにいかに迅速に対応するかを考えているようです。米国では副作用を考慮しつつも、いかに米国民の安全を守るかを優先に考えているのかもしれません。(日本ではタミフルの安全性についての議論が続いていますが)
Mekitsの具体的な供給方法は記されていませんでしたが、予防という性格上、医師の処方だけではなく、国や州による配布やOTCとして販売されることも予想され、再びBTC問題(Behind-the-counterで、薬剤師が説明販売すること。米国にはこの概念がない)が再燃する可能性が出てきました。
当日は、米国医療薬剤師会(ASHP:American Society of Health-System Pharmacists)や、米国薬剤師会(APhA:American Pharmacists Association)の代表も発言をするようなので、諮問委員会後に続報をお伝えできればと思います。
10月28日 13:00更新
2008年10月28日 01:44 投稿
The Canadian Press 誌が、当日の様子を伝えています。
U.S. looks at whether home drug stockpiles for flu pandemic makes sense
(The Canadian Press 2008.10.29)
http://canadianpress.google.com/article/ALeqM5jUKoxDOzrFdLvxWCIJ1fCIFTeYQw
会議では、薬剤師や医師の団体が、「不適切な使用が行われる可能性があり、耐性ウイルス発現につながる懸念がある」とMedkitsの導入に反対の意見が述べられましたが、別の医院からは、「すでに個人によるタミフルやリレンザの個人による備蓄は既に始まっており、増える傾向もある。むしろうまく利用する必要があるのではないか」との意見が述べられました。
議論の結果20対6(棄権1)で、medkitsに関するさらなる研究を2社に求める評決が行われ、引き続き開発に向けた研究が進められるようです。
米国医療薬剤師会(ASHP)は、ASHPのWebサイトのNews Capusles で当日の様子を伝えるとともに、同諮問委員会でのコメントを掲載しています
ASHP to FDA: Keep Antivirals Out of Homes(ASHP News Capusles 2008.10.29)
http://www.ashp.org/import/news/NewsCapsules/article.aspx?id=244
ASHPでは、耐性ウイルス発現につながる懸念があるとして、MedikitsのOTC化には反対を表明する一方、公衆衛生当局者が行う処方せんなしでの利用ができるようにする取り組みには協力するとの意見を表明しています。
当日のスライドも既に掲載されています。
Antiviral Drugs Advisory Committee Meeting (AVDAC) SLIDES(2009.11.29)
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/08/slides/2008-4385s1-00-index.htm
資料全体はこちら、
Joint Meeting of the Antiviral Drugs Advisory Committee and the Nonprescription Drugs Advisory Committee(2008.10.29)
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/cder08.html#NonprescriptionDrugs
新型インフルエンザの感染拡大で、この話も現実化していくかもしれませんね。