海外では、薬局はそのアクセスのよさから、STDなど、日本では保健所で行うような検査を薬局に委託する国もあるようですが、BMJ 誌のニュースなどによると、スペインのカタロニア地方では、今年からHIV検査を薬局で無料で行うというパイロット・プロジェクト(試行事業)が開始されるようです。
スペイン国内紙・ブログ等(スペイン語の記事を翻訳サイトにかけてみました。誤訳があるかもしれません)によれば、パイロット・プロジェクトが行われるのはのバルセロナ市の一部地域(人口5万人規模)の35(最初の発表では20、25との記事もある)の薬局で、対象は16歳以上ですが、薬物注射の常用者や不特定多数との性交渉があるHIV感染のハイリスクグループの人が気軽に利用することを強く意識しているようです。
ある地域で行われた調査(対象者は?)によれば、2007年に検査を行った3752のサンプルうち81(3%)に陽性が認められるなど、診断がされていないHIV感染者が少なくないことがわかったことから、気軽に検査が行える場所として、カタロニア自主政府の保健当局は薬局を活用することを考えたようです。
検査は匿名で行われ、15分程度判定できる迅速テスト(精度は高い)が使用されます。そして、陽性の場合は診断確定のために受診を勧告するようです。
薬局の選定にあたっては、日頃麻薬中毒者のメタドン代替療法や薬物中毒者に対する注射針の交換プロジェクトに参画しているところを選んだ他、パイロット・プロジェクトを行う地域もメタドン代替療法や注射針の配布が多い地域を選定したようです。
今回の事業には地元バルセロナ薬剤師会が協力する他、カタルーニャ薬科大学ではメタドンプログラムや注射針交換プログラムと同様に専門職として役割を果たしたいとしています。
日本の薬物事情では考えられないことですが、欧州では社会から隔離しないで更正させるという考え方があるようで、こういった領域での活躍が薬局に期待されているようです。
日本ではともすると、経営上のこともあり保険調剤をいかに充実させるかに重点が注がれていますが、欧州の薬局では活動の重点を公衆衛生の分野などにも置いているように思われます。
参考:Pharmacies in Catalonia to offer rapid HIV tests
(Aidsmap News 2008.12.23)
http://www.aidsmap.com/en/news/234D4E8D-A099-4240-90C9-D1AB18ED3C70.asp
Spanish chemists will offer HIV tests to members of public in pilot project
(BMJ News Published 15 December 2008)
http://www.bmj.com/cgi/content/extract/337/dec15_2/a3004
Las farmacias de Barcelona realizaran el test rapido del VIH en una medida pionera en Europa
(diario Directo 208.10.17) http://www.diariodirecto.com/autonomia/catalunya/2008/10/17/
farmacia-catalana-test-sida-289089381694.html
Las farmacias catalanas harán test rápidos de detección del VIH a partir de 2009
(soits.es actualidad 2008.10.17)
http://www.soitu.es/soitu/2008/10/17/info/1224246213_370582.html
2009年01月03日 17:57 投稿
欧米では、薬は毒であるということと、毒を制するという自律性が 大切にされています。その毒を管理する薬剤師への信頼は消防士以上の市民感覚があります。カリフォルニア在住中に主婦の井戸端会議で覚えた感覚です。日本では、くすりやと呼ばれるように商売人というイメージが強いと思います。国民感覚も 薬さえ手に入れれば健康が確保出来る といういわば安直な感情が強いように思います。薬を適正に理解するという国民教育が 脆弱なのだと思います。父権医療の長さが原因なのかもしれません。知識のあるものが「上から目線」でモノを言う感覚も、その原因だろうと思っています。
「李下に冠を正さず、瓜田に履を直さず」を考えて、誰にでもわかりやすく明確に伝えることを積み重ねる毎日です。