日本でも有名なプロクター・アンド・ギャンブル社の『ヴィックス ヴェポラッブ』(大正製薬が販売、医薬部外品)について、気道の狭い2歳未満の小児が使うと気道における粘液分泌が高まり、気道の炎症を悪化させ、呼吸困難になる可能性があるとした論文がCHEST 誌に発表され、海外では大きな話題となっています。
Vicks VapoRub Induces Mucin Secretion, Decreases Ciliary Beat Frequency, and Increases Tracheal Mucus Transport in the Ferret Trachea
(CHEST January 2009 vol.135 no.1 143-148)
http://www.chestjournal.org/content/135/1/143.abstract
Misuse of Vicks VapoRub may harm infants and toddlers
(Eurek Alert! 2009.1.13)
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2009-01/acoc-mov010709.php
この研究は、3年前に本剤を鼻の下に直接ぬった生後18ヶ月の小児が、30分ほどで呼吸困難となり緊急治療室(emergency room)に運び込まれたという事例に遭遇したウェイク・フォレスト大学の研究グループが、原因を探るために行った動物実験(人間と気道構造が似たferretを使用)で、本剤を使用した群で粘液分泌作用が認められたそうです。
動物実験であり、人間にも当てはまるかどうかは議論があるところですが、WebMDによれば、研究者らは他にも同様の事例が3例あったとしており、2歳未満の小児が本剤を使用しないこととした使用上の注意は妥当であることを示した研究結果であるとしています。
同社では、今回の研究発表を受け、指示通り使用すれば、安全な薬であるとした声明を発表しています。
Vicks message to Parents
http://vicks.com/safety/vaporub-message
確かに、米国の本剤は2歳未満は使用しないこととなっており、研究者らが遭遇したケースは誤用(使ってはいけない年齢に使用)によるレアケースなのかもしれません。しかし、日本では本剤(処方内容は若干異なるが、メントールやカンフルなど問題視される成分は同様に含まれる)は6ヶ月以上で使用が可能であり、かつどこの小売店での販売が可能な医薬部外品であることを考えると、同様のケースが日本で報告されていないかどうか気がかりなところです。
Vicks VapoRub Topical Ointment
http://vicks.com/products/vaporub
ヴイックス ヴェポラッブ説明書(大正製薬)
http://www.catalog-taisho.com/taishodata/pdf/A1070231.pdf
参考:
Vicks VapoRub Misuse May Hurt Kids
(WebMD 2009.1.13)
http://www.webmd.com/cold-and-flu/news/20090113/
vicks-vaporub-misuse-may-hurt-kids
Avoid applying Vicks VapoRub to babies, pediatricians say
(CBC news.Ca 2009.1.13)
http://www.cbc.ca/health/story/2009/01/13/vicks.html
Vicks VapoRub May Imperil Toddlers
(Medpage TODAY 2009.1.13)
http://www.medpagetoday.com/Pediatrics/GeneralPediatrics/12423
2009年01月14日 16:16 投稿