近年、日本でも広く使われている抗血小板薬クロピドグレル（商品名：プラビックス）ですが、海外ではPPIの一部との相互作用があるではないかとの指摘が相次いで出されています。
CMAJ 誌のオンライン版には28日、心筋梗塞の既往歴のある高齢者を対象とした症例対照研究が発表され、カナダでは話題となっています。
A population-based study of the drug interaction between proton pump inhibitors and clopidogrel
（CMAJ Early release 2009.1.28）
http://www.cmaj.ca/cgi/rapidpdf/cmaj.082001v1.pdf
http://www.cmaj.ca/content/180/7/713.full
この研究は、急性心筋梗塞の治療を終えた退院患者のうち、退院後3日以内にクロピドグレルの服用を初めて開始した66歳以上の高齢者13636人のデータを分析（90日以内に再発したかどうか）したもので、特定のＰＰＩでは発作の再発が40％高まる一方、Ｈ2ブロッカーでは、再発の危険率は高まらなかったとしています。
研究らはこの作用機序について、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールといったPPI（pantoprazoleでは、再発率は高まらなかった）が肝代謝酵素ＣＹＰ2Ｃ19で代謝されるために、ＣＹＰ2Ｃ19で生理代謝活性物質となるクロピドグレルの作用が減弱されるためではないかとしています。
海外では、クロピドグレルとアスピリンを心臓発作後に併用されることが多いことから、ＰＰＩの投与が勧奨されており、今回の研究で専門家からはＰＰＩを投与すべきか、もしくはpantoprazoleに限定すべきかなどの声があがっています。
関連性はあると思うのですが、米FDAも１月26日のEarly Communicationで、クロピドグレルとＰＰＩの相互作用について、現在関連性があるかどうか検討中であることを発表しています。
Early Communication about an Ongoing Safety Review of clopidogrel bisulfate (marketed as Plavix)(FDA 2009.1.26)
http://www.fda.gov/Safety/MedWatch/SafetyInformation/
SafetyAlertsforHumanMedicalProducts/ucm092066.htm
また、オメプラゾールは海外などではスイッチＯＴＣとなっている国も少なくなく（CMAJ の論文ではこのことは考慮されていない）、これらの国ではを販売するに当たっては十分な情報提供が必要になっていくものと思われます。今後さらなる研究に注目しましょう。
関連情報：
American College of Cardiology (ACC)/American College of Gastroenterology (ACG)/American Heart Association (AHA) Joint Comment on Studies Regarding Possible Interaction of Clopidogrel and Proton Pump Inhibitors
（American Heart Association News Release 2008.11.11）
http://americanheart.mediaroom.com/index.php?s=43&item=611
参考：
Some anti-acid meds may reduce Plavix efficacy
（CTV.Ca 2009.1.28）
http://www.ctv.ca/servlet/ArticleNews/story/CTVNews/20090128
/plavix_study_090128/20090128?hub=Health
Some heartburn drugs raise risk of 2nd heart attack: study
（CBC.Ca 2009.1.28）
http://www.cbc.ca/health/story/2009/01/28/heart-attack-ppi.html
Plavix Plus Heartburn Drugs May Hike Heart Risk
（HealthDay 2009.1.28）
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=623549
2009年01月29日 21:58 投稿
