米国保健省の独立機関である予防医療に関する研究班(USPSTF:U.S. Preventive Services Task Force)は、2002年にまとめた「虚血性心疾患(coronary heart disease)におけるアスピリンの予防使用」に関する勧告について、その後発表されたエビデンスを踏まえたアップデートを16日に発表しました。
Aspirin for the Prevention of Cardiovascular Disease
(AHRQ Recommendation Statement)
http://www.ahrq.gov/clinic/uspstf09/aspirincvd/aspcvdrs.htm
Aspirin for the Primary Prevention of Cardiovascular Events: An Update of the Evidence for the U.S. Preventive Services Task Force
(Annals 2009 150: 405-410.)
http://www.annals.org/cgi/content/full/150/6/405
勧告は年齢や性差を考慮した下記のような内容となっています。
- 心筋梗塞(myocardial infarctions)の発症減少という潜在的利益が胃腸出血の増加の潜在的リスクを上回るならば、45歳以上の79歳以下の男性はアスピリンの使用が奨励される
- 虚血性発作(ischemic strokes)の発症減少という潜在的利益が胃腸出血の増加の潜在的リスクを上回るならば、55歳以上79歳以下の女性はアスピリンの使用が奨励される
- 80歳以上の高齢者が心臓血管病(cardiovascular disease)の予防目的でアスピリンを使用することの利益と不都合(harms)のバランスを評価することは十分できていない
- 55歳未満の男性および45歳未満の女性が心臓血管病ぼ予防目的でアスピリンを使用することは奨励できない
さらに勧告文の詳細を見ると、次のような点も盛り込まれています
- アスピリンの用量については、75mg/日でも十分効果がある
- 80歳以上の高齢者の心筋梗塞や心臓発作の発症率は高く、アスピリンの使用は潜在的利益はあるが、一方で加齢と胃腸出血との関連性もあり、こういった危険因子がない患者に限るべきである
つまり、リスク要因がない若い人が予防目的でアスピリンを服用する必要がない(ABC Newsによれば、30代や40代の人にアスピリンの服用を勧める医者がいるという)ことや、高齢者がアスピリンを使用する場合には胃腸出血の発現に十分留意するということが求められているといえましょう。
関連情報:TOPICS
2008.11.12 糖尿病患者への低用量アスピリンの投与は必ずしも有用ではない
2008.10.17 アスピリンや抗酸化薬は心臓病の一次予防には有用ではない(英国研究)
2009.01.29 PPIがクロピドグレルの作用を減弱するかもしれない
参考:
Doctors: Who Should Take Aspirin, and When
(ABC News 2009.3.16、動画あり)
http://www.abcnews.go.com/Health/story?id=7096639
Men and Women Get Different Benefits from Daily Aspirin
(Medpage TODAY 2009.3.16)
http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Prevention/13289
2009年03月17日 17:12 投稿