第3回医薬品安全使用実践推進検討会

 17日、厚生労働省の第3回医薬品安全使用実践推進検討会が開催され、20年度「医薬品安全性情報活用実践事例等の収集事業」の報告書と、 医薬品安全性情報の活用について先進的な取り組みをしている医療機関の事例をまとめた「安全性情報院内活用実践事例集」が示され、検討会で了承されたそうです。

第3回医薬品安全使用実践推進検討会(2009年3月17日開催)
  厚労省資料(3月24日掲載) WAMNET資料(3月19日掲載)

 この検討会は、予測・予防型の安全対策の実践推進の観点から、医療現場における安全性情報の一層の有効活用を推進し、副作用等の回避を図ることを目的として、昨年度より2年計画で実施されている「医薬品安全使用実践推進事業」の一つとして行われているもので、日病薬が安全性情報の活用に関する調査や事例の整理、安全性情報の活用に必要と考えられる要素についてとりまとめを行っています。

 20年度も、日病薬が調査協力病院として選定した6病院から収集した、5つの取り組み事例(塩酸アマンタジン、インターフェロン製剤、シクロスポリン、メシル酸ブロモクリプチン、酸化マグネシウム)をもとに、医療機関における医薬品安全性情報の活用事例に共通するポイントがまとめられ、19年度調査(19年度については、TOPICS 2008.05.14 の記事参考を)と合わせて、規模・機能に配慮して考え得る医薬品安全性情報の取扱いや活用実践のための院内体制づくりとして、次の6つのポイントを報告書(案)で記しています。

  • 院内における情報取扱い戦略として、不特定多数の医師・薬剤師・看護師等を対象とした「お知らせ」等による情報提供に留まらず、実際の処方医、使用患者を特定して、「必要な情報を必要な人へ」の理念の元、ターゲットを絞り情報提供している実態が確認された
  • 医薬品の安全確認につながる効率的な情報提供のあり方としては、「必要とされる情報を、必用な時に」のオンデマンド方式が有効と考えられる
    (比較的大規模な施設では、処方オーダリングシステムの警告メッセージ機能を利用、オーダリングシステムや電子カルテが導入されていない施設では、処方を受けている患者をリストアップし、当該患者のカルテの次回受診時の頁に、安全性情報に基づく注意喚起のお知らせを貼付する)
  • 施設の診療内容にあわせた対応スピードと対策立案が必要。最近では、副作用情報がマスコミ等で報道されることもあり、国民自体が医薬品の安全性情報に敏感になっている。国民が知りえるタイミングで医療機関が対策を実行していないことは、医療機関や医師・薬剤師への不信や不安につながるおそれもあり、迅速な対応が求められる。
  • 医薬品安全性情報の活用対策への院内分担や協力体制に関するコンセンサスを形成するための委員会等の存在が認められた。大規模施設では薬事委員会会あるいは医薬品安全管理委員会が機能、小規模施設で週に一回程度開催される医局会へ薬剤師が参加することにより、時間差のない情報共有と安全性情報の活用対策に関するコンセンサス形成が図られている。
  • 大規模施設では薬剤部門の医薬品情報管理室、小規模施設では薬局自体が医薬品情報管理部門として安全性情報を一元管理し、院内での情報発信基地となっていた。
  • 院内の医薬品副作用収集システム、あるいは副作用被害救済制度の適正利用システム等によ
    る、副作用把握が平素より行われている。

 一方、「安全性情報院内活用実践事例集」の方ですが、次の6つの薬剤について、安全性情報の有効活用事例が示されています。

  • アトルバスタチンカルシウム水和物の劇症肝炎 (診療所)
  • アマンタジン塩酸塩の禁忌追加(重篤な腎障害のある患者)
  • グリベンクラミドとボセンタンの相互作用回避
  • 酸化マグネシウム経口剤の長期投与事例に生じる高マグネシウム血症
  • メシル酸ペルゴリド、カベルゴリンの禁忌ならびに重要な基本的注意の追加
    (心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変が確認された患者)
  • メロペネム三水和物による劇症肝炎

 今後正式な報告書は、厚労省や医薬品医療機器総合機構のウェブサイトなどに掲載されるほか、日病薬を通じて周知を行っていくとのことですが、地域薬剤師にも周知させて、地域薬剤師会レベルで開業医向けにこういった情報を発信していくことも必要ではないかと思います。

関連情報:TOPICS 2008.05.14 医薬品安全使用実践推進検討会

参考:日刊薬業ヘッドラインニュース3月19日
  安全性情報「末端まで行き届かず」‐処方医までは3割程度
    (薬事日報 HEADLINE NEWS 3月19日)
     http://www.yakuji.co.jp/entry9470.html

3月19日 17:40リンク追加 24日17:00リンク追加


2009年03月19日 15:18 投稿

コメントが3つあります

  1. 一昨年 実母への投薬で担当医と話し合いました。十二指腸潰瘍既往、腎石灰化、キシロカインアレルギー、胆道狭窄、ベンゾジアゼピン系での昏睡既往・・・といろいろな過去を伝えましたけど、右に傾く微細梗塞を予防したいという医師と アスピリンの副作用で議論になりました。
    つまり、診察で忙しい医師には 自分の所属する学会以外の情報を持ち合わせていないという現実を知りました。
    薬剤師は もっと勇気を持って 情報提供を行なうべきだと思います。
    そして、社会のニーズをもっと学んで欲しいと思います。

    その医師は 尊厳死協会を知らなかった。尊厳死を殺人と言い放ちました。
    重度認知症で言葉も失い自己主張できなくなった実母に対して、医師の主観で治療を進められていたことに愕然としました。(施設入所者なので 医師を変えられません)
    知識の無い家族なら泣く泣く黙るしかない現状に 何もしない薬剤師は不要だと思います。

  2. アポネット 小嶋

    コメントありがとうございます。

    私たち薬剤師は、最新のくすりの情報に常にアンテナを張り、それを現場の医師に伝えるよう努めていきたいと思います。

  3. アポネット 小嶋

    5月7日、正式な報告書が公表されました。

    「医薬品安全使用実践推進検討会」報告書について(厚労省)
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/s0501-3.html