一年ほど前、イブプロフェンなどのNSAIDsがアルツハイマー型認知症(Alzheimer dementia,AD)のリスクを低くするかもしれないという論文(TOPICS 2008.05.07)を紹介しましたが、今回これとは逆の結果が示された論文が発表されています。(薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介することにしました。記述法などに誤りがございましたらご指摘下さい。)
研究の 目的や背景 |
NSAIDsにAD予防効果があるか? |
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研究の方法 | community-based cohort study |
どんな患者が研究の対象? | ワシントン州の特定の医療保険グループに属する薬局の、認知症ではない65歳以上の高齢者2736人(平均年齢74.8歳、白人90%)のデータ |
何を指標? | NSAIDs(イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、スリンダクで全体の80%)の服用の有無、服用量(「2年以上毎日NSAIDsを服用」を基準として、これにプラス500日?を超えた場合を「ヘビーユーザー」と分類。アブストラクトでは具体的な服用量や服用頻度は不明)。 追跡調査開始時に351人(12.8%)がNSAIDsのヘビーユーザー、さらに12年間のあいだに107人(3.9%)がNSAIDsのヘビーユーザーとなった。 |
何を比較? | ADの発症数を12年間追跡調査 |
わかったこと | 476人が認知症を発症、うち356人がアルツハイマー型。 年齢、合併症などを考慮して統計学的に分析したところ、NSAIDsのヘビーユーザーは、NSAIDsを使わないかあまり使わない人に比べて、認知症リスクは66%、アルツハイマー型認知症リスクは57%高くなった。 |
コ メ ン ト | 研究者らは、ヘビーユーザーの中に、糖尿病や関節炎、心不全の兆候がある人が多く含まれていたとして、NSAIDsがADの発症リスクを高めるかどうかはわからないとしていますが、超高齢者がNSAIDsを長期間にわたり定期的に使用することはあまり好ましくないのかもしれません。 |
論 文 名 | Risk of dementia and AD with prior exposure to NSAIDs in an elderly community-based cohort |
掲載雑誌 | Neurology Published online before print April 22, 2009 |
リ ン ク | http://www.neurology.org/cgi/content/abstract/WNL.0b013e3181a18691v1 |
関連情報:TOPICS 2008.05.07 NSAIDSとアルツハイマー型認知症リスク
論文紹介記事:
Painkiller ‘no Alzheimer’s block’(BBC NEWS 2009.4.22)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8010295.stm
Painkillers Do Not Delay Dementia in the Very Elderly
(Medical News TODAY 2009.4.22)
http://www.medicalnewstoday.com/articles/147201.php
Painkillers May Not Protect Against Dementia
(HealthDay 2009.4.22)
http://www.healthday.com/printer.asp?AID=626322
Heavy NSAID Use Linked to Higher Dementia Risk
(Medpage TODAY 2009.4.22)
http://www.medpagetoday.com/Psychiatry/AlzheimersDisease/13860
2009年04月23日 17:15 投稿