8日、平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会が開催され、昨年来諸外国で使用規制が強まっているOTC小児用風邪薬・咳止め薬の安全対策について、日本における当面の対応が示されました。
資料2-5:小児用かぜ薬・鎮咳去療薬の安全対策について
(平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会)
厚労省資料(5月14日掲載) WAMNET資料(5月12日掲載) 議事録
厚労省では、米国など諸外国の状況などを紹介したうえで、日本における平成16年以降のかぜ薬等に関連した副作用報告件数は、820症例(死亡例16例)で、4歳未満は12症例(死亡例の報告はない)であり、適正使用されれば問題はないとして、下記のような当面の対応を示しています。
- 我が国の副作用報告等の状況においては、小児用のかぜ薬等において顕著な安全性上の問題が発生しているということは考えにくく、消費者が小児のかぜ薬に対して俄に心配をする状況にはない。
- 小児のかぜ薬に関する臨床試験が外国でも実施される予定であること、FDA等における年齢制限等についても暫定的で根拠が明確ではないことからも、現時点で固定的な対策を取ることは困難であるが、外国の状況を踏まえながら、予防的な注意喚起等は必要と考えられるところ。
- 一般用医薬品については、本年6月から新たな販売規制が開始されるが、
○当面の措置として、かぜ薬等についても、日本OTC医薬品協会の自主的な対応により、情報提供文書を整備することとし、日本薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会等の協力を得ながら、小児への使用について注意喚起を行うとの報告があった。
○ 第二類医薬品の「積極的な情報提供」の実施に際しては、文書を用いることに努めるよう義務付けるべきである。(厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会報告書)
○また、情報提供の文章の内容については、当面、「保護者の監督のもとで服用させてください」との記載とする。次の需要期に向け、関係学会の意見や諸外国での対応を考慮し、更なる注意喚起を行うかどうかも含めて検討する。 - 当面、業界の自主的な対応を見守りながら、諸外国での対応、国内外の調査等の結果、関係学会の意見も踏まえ、引き続き、対応を検討することとする。
つまり、当面は現場での書面による情報提供に期待し、厚労省としてはさらなる注意喚起は行わないようです。(日薬やチェーンドラッグストア協会に所属していない施設もたくさんあるはずですが、こういったところへの徹底はどうするのでしょうか?)
しかし、OTC協会(厚労省?)が案として示している書面案によれば、添付文書にある「2歳未満の乳幼児には、医師の診療を受けさせることを優先し、止むを得ない場合にのみ服用させること。」という文言にはせず、「小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させてください。」という表現にとどめており、おそらく添付文書をよく読まないと気付かない人も出てくるのではないでしょうか?
さらに、指定第二類(鼻炎効能のものは第二類のものもある)には書面による情報提供の義務はなく、ネット販売も事実上継続されることを考えると、厚労省の期待通りにいくかどうか大いに疑問です。
また、現場の感覚としては医師も以前と比べ第一世代の抗ヒスタミンを使わない傾向にあるように思います。OTCメーカーも単剤のシロップ剤(例えば、アセトアミノフェン単剤のものは以前発売されていたが、売れなかったためか今は中止されている)や抗ヒスタミン剤を含まない(ほとんどの咳止め・総合感冒剤に配合されている)ものを供給してもらいたいものです。
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資料:平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会(2009年5月8日開催)
厚労省資料(5月14日掲載) WAMNET資料(5月12日掲載)
5月13日9:30更新 5月14日リンク追加
2009年05月12日 20:18 投稿