マスク着用に関する政府の見解

 政府は、日本国内での新型インフルエンザの感染拡大を受けて、22日開催された「新型インフルエンザ対策本部 第4回会合」で新たな基本方針をまとめました。

基本的対処方針
http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/flu/swineflu/newflu20090522_shinkihontaisho.pdf

医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針
http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/flu/swineflu/newflu20090522_unyouhoushin.pdf

運用指針要約
http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/flu/swineflu/newflu20090522_unyoushishin_shiryou.pdf

対処方針Q&A
http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/flu/swineflu/newflu20090522_taisho_qa_main.pdf

対処方針Q&Aでは、下記のようなマスク着用についての見解が示されています。

問)外出に当たり、必ずマスクを着用する必要があるのか。

 答)

  • マスクは、咳やくしゃみによる飛沫及びそれらに含まれるウイルス等病原体の飛散を防ぐという効果が高いものであり、混み合った場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分で閉鎖的な場所に入るときに着用することが勧められる。
  • 屋外などでは、相当混み合っていない限りあえてマスクを着用する必要はない。また、施設や乗り物についても空いていれば、マスクを着用する必要はない。(目安としては対面する人と人の距離が1〜2メートル)
  • ただし、外出に当たっては、マスクをいつでも着用できるよう、準備しておくことが望ましい。
問)公共交通機関におけるマスク着用については、どのように考えればよいのか。

 答)

  • 例えば、「患者や濃厚接触者が活動した地域」内に停車する電車については、混み合った車内でのマスク着用を呼びかけることになる。一番重要なことは、発熱、くしゃみ、咳などを有する方には早めにマスクをつけていただくことである。

 つまり、マスク着用は何らかの症状を有する人は必要だが、人混みや密閉された狭い空間以外の場では必ずしも必要はないというように政府はスタンスを変えたようです。

 メディアや政府などが繰り返しアナウンスすることもあり、現場では、不安に駆られてマスクを求める人からの問い合せが相次いでいます。

 読売新聞によれば、今回のマスク不足は企業や行政機関からの大量発注が相次いていることも原因とのことですが、一般の企業(中小企業)では、社員にマスクは自分で用意するよう求めているところも少なくないはずです。

 ネットオークションなどで高値であっても仕方なく購入しているという話などを耳にすると、政府や自治体、大企業など立場の強い人たちだけがマスクを優先的に確保できているという状況には矛盾を感じざるを得ません。

 今回の方針転換ともいえる政府の見解については、きちんと政府やメディアが国民に伝えるべきではないでしょうか?

関連情報:2009.05.21 新型インフルエンザの関する情報・コメント

参考:読売新聞5月22日
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090522-OYT8T00268.htm


2009年05月22日 17:04 投稿

コメントが3つあります

  1. アポネット 小嶋

    マスク不足、本当に必要な人(医療関係者や介護関係者)や、本当に必要なときに着用できない状況になりつつあるのは大いに問題です。

    各紙も報道のスタンスを変えてきましたね。

    「必要なところに行き渡らない」、介護施設でマスク不足に悲鳴/神奈川
    (神奈川新聞5月24日)
    http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryivmay0905625/

    新型インフル マスク過信禁物 症状ない人には予防効果なし
    (琉球新報5月24日)
    http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-144952-storytopic-183.html

    沖縄県福祉保健部の担当者のように行政・メディアもきちんと伝えて欲しいですね。

  2. アポネット 小嶋

    ネット上では、感染症学会が示した提言(TOPICS 2009.05.21 新型インフルエンザの関する情報・コメント)を重視すべきだとの声があり、マスク不足のための政府の情報隠しではないかとの書き込みも見られます。

    日本感染症学会の「一般予防策ではうがい、手洗い、マスクが効果的です」とする根拠は、一般的に呼吸器ウイルス感染の防止対策の一環としてマスクを含めた総合的な対策が有用であるとする下記のシステマティックなレビュー報告があるためとしていますが

    Physical interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory viruses:
    systematic review.
    (BMJ. 2003;336:77-80.)
    http://www.bmj.com/cgi/content/full/336/7635/77

    この論文を掲載したBMJ誌に5月7日に掲載された記事、A/H1N1 influenza: questions and answers によれば、Is it worth wearing a facemask? の部分で、この論文を引用しつつも次のように記載しています。

    A/H1N1 influenza: questions and answers
    (BMJ Published 7 May 2009)
    http://www.bmj.com/cgi/content/full/338/may07_1/b1849

    There is no convincing scientific evidence that the widespread use of facemasks by members of the public can stop the disease spreading. They can give false reassurance and may encourage people to ignore basic hygiene measures that have proven effectiveness.

    つまり、一般の人(病気でない人)の多くがマスクを着用することで病気の拡大を止めることができるという説得力がある科学的なエビデンスがない。間違った安心感を与えかねず、基本的な予防対策がおろそかになる可能性があると指摘しています。

    また、感染症学会が根拠とするWHOの勧告をみても

    Advice on the use of masks in the community setting in influenza A(H1N1)
    outbreaks
    (WHO、 Interim guidance. 2009. May 3.)
    http://www.who.int/csr/resources/publications/Adviceusemaskscommunityrevised.pdf

    In the community, however, the benefits of wearing masks has not been established, especially in open areas, as opposed to enclosed spaces while in close contact with a person with influenza-like symptoms.

    Nonetheless, many individuals may wish to wear masks in the home or community setting, particularly if they are in close contact with a person with influenza-like symptoms, for example while providing care to family members.

    と記されていて、インフルエンザ様症状を持つ人はマスクの着用が望まれるが、開放的な空間(定義は難しいですが)でのマスク着用のベネフィットは確立していないと指摘しています。

    マスク着用の是非については、さまざまな意見があります。正しい情報を入手して、ご自身で判断の上、患者さんに正しい情報を提供して下さい。

  3. アポネット 小嶋

    毎日放送/TBSが楽天の便乗商法を伝えています。(動画あり)

    楽天、加盟店に「マスク買い集め」奨励(5月26日)
    http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4142124.html
    http://www.mbs.jp/news/jnn_4142124_zen.shtml

    インターネットショッピングモールの正体というのはこういうものなのでしょう。

    健康食品もこんな風に販売を呼びかけているのかもしれませんね。

    こういったところで、くすりの販売はどうなのかと改めて考えさせられます。