厚労省の新型インフルエンザ対策推進本部事務局は22日、都道府県などの衛生主管部(局)長宛に、「ファクシミリ等による抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんの取扱いについて」と題する通知を行っています。
ファクシミリ等による抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんの取扱いについて
(厚労省新型インフルエンザ対策推進本部事務局 2009年5月22日)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/05/dl/info0527-01.pdf
この通知は、国内において新型インフルエンザ感染者が増加していることを踏まえて、感染拡大を防止する観点から、慢性疾患等を有する定期受診患者や発熱外来等の受診歴がある患者に対し、電話による診療を行い、ファクシミリ等で抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんが発行された場合の留意点をまとめたもので、ファックス処方せんを原本の処方せんとして、一時的に見なす(最終的には原本の入手が必要)という見解がとられています。
H5N1型の新型インフルエンザを念頭に置いたものと考えられますが、おそらくメディアもこのことを紹介するでしょうから、慢性疾患を抱える患者さん(文献を引用して、ぜんそく、COPD、慢性心疾患、糖尿病、自己免疫疾患などを例示していますが、軽症者もOK?)が不安に感じて、「感染するのが心配なので、FAX処方せんにして」といった希望が増えるなど、この通知が安易に運用されてしまわないか不安です。
そして薬剤師にとっては、感染リスクだけではなく、インフルエンザに罹患していない患者さんも含めて、薬の自宅への配達が求められるなど相当な負担となりそうです。
ある面で、かかりつけ薬局の役割の重要性というのもわかってもらえる機会にはなりそうですが。
関連情報:
医療体制に関するガイドライン(2009年2月17日)(p20にイメージあり) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/090217keikaku-05.pdf
医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針
(新型インフルエンザ対策本部2009年5月22日)
http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/flu/swineflu/newflu20090522_unyouhoushin.pdf
新型インフルエンザ感染者の増加に伴う医療機関における外来診療について
(厚労省新型インフルエンザ対策推進本部 事務局 2009年5月22日)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090523-07.pdf
重篤化しやすい基礎疾患を有するもつ者等について
(厚労省新型インフルエンザ対策推進本部 事務局 2009年5月22日)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090523-04.pdf
慢性疾患等を有する定期受診患者への対応 | 発熱外来等への受診歴がある患者の場合 | ||
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新型インフルエンザに罹患していると考えられる場合 | 慢性疾患等に対する医薬品が必要な場合 | ||
流れ | 事前にかかりつけの医師が了承し、その旨をカルテ等に記載しておくことで、発熱等の症状を認めた際に、電話による診療により新型インフルエンザへの感染の有無について診断できた場合には、診察した医師はファクシミリ等により抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんを患者が希望する薬局に送付し、薬局はその処方せんを応需する。 | 感染源と接する機会を少なくするため、一般的に長期投与によって、なるべく受診間隔を空けるように努めることが原則であるが、急速に患者数が増大している地域において医薬品が必要になった場合には、電話による診療により当該疾患について診断ができた場合、診察した医師はファクシミリ等による当該疾患に係る医薬品の処方せんを患者が希望する薬局に送付し、薬局はその処方せんを応需する。 | インフルエンザ様症状があり自宅で療養する患者について、電話による診療にてインフルエンザと診断した場合には、診察した医師はファクシミリ等により抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんを患者が希望する薬局に送付し、薬局はその処方せんを応需する。 |
医療機関の対応 | 処方せんは、通常は患者に対して発行されるものであるが、新型インフルエンザ患者やその同居者は外出が自粛されている状況下にあること等を考慮して、患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にファクシミリ等で送付することを原則とする。 ・医師は、新型インフルエンザ患者及びその同居者には、薬局への来局を含めて外出を自粛するよう指導する。 (新型インフルエンザ患者以外の場合には、患者の慢性疾患の状態等に応じて、外出の可否等について指導する。) ・医療機関は、ファクシミリ等で送付した処方せんの原本を保管し、流行がおさまった後に、薬局に送付するか、当該患者が医療機関を受診した際に処方せんを手渡し、薬局に持参させる。 ・医療機関はファクシミリ等で送付された処方せんを受信した旨の連絡を薬局から受けた際に、カルテに処方せん応需薬局を記録することにより、送信した処方せんが確実に当該薬局に送付されたことを確認する。また、患者自身が処方せんを送付する場合には、複数の薬局に処方せんが送付されていないことを医療機関は確認する。 |
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薬局の対応 | ・新型インフルエンザ患者及びその同居者に対しては、薬局に来局しないよう指導し、必要に応じて、処方せんについては医療機関からファクシミリ等によって薬局に送付するよう求める。 ・患者から処方せんの送付を受け付けた薬局は、その真偽を確認するため、処方せんを発行した医師が所属する医療機関に、処方せんの内容を確認する。(この行為は、薬剤師法第24条に基づく疑義照会とは別途に、必ず行うこととする。)なお、患者を介さずに医療機関からの処方せんの送付を直接受けた場合には、この確認行為は行わなくてもよい。 ・医療機関から処方せん原本を入手するまでの間は、送付された処方せんを薬剤師法第23〜27 条、薬事法第49 条における「処方せん」とみなして調剤等を行う。 ・医薬品は患家へ届けることを基本とし、その際は、可能な限り新型インフルエンザ患者との接触を避けるために、服薬指導は電話で行うことでも差し支えない。 ・まん延期終了後、速やかに医療機関から処方せん原本を入手し、以前に送付された処方せんを原本に差し替える。 ・慢性疾患等を有する定期受診患者について、長期処方に伴う患者の服薬コンプライアンスの低下や薬剤の紛失等を回避するため、電話での服薬指導等を実施する。 |
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その他 | ・処方せんの送付は医療機関から薬局に行うことを原則とするが、患者が希望する場合には、患者自身が処方せんを薬局にファクシミリ等により送付することも認める。 ・薬局により医薬品を患家へ混乱なく届けられるよう、感染者が増加する以前に自宅の近隣にかかりつけの薬局を持つことが重要である。 |
資料:医療体制に関するガイドライン(新型インフルエンザ専門家会議2007.3.26)(最初にまとめられたもの?)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-06.pdf
5月23日 22:40リンク追加 24日22:00更新 28日18:00リンク追加
2009年05月23日 18:19 投稿
兵庫県、大阪府など感染者が急増している地域での前倒し実施を認めたようです。
毎日新聞5月23日
http://mainichi.jp/select/science/news/20090525k0000m040078000c.html
もし、実施を行った薬局、実施の動きのある地域がありましたら教えて下さい。
それと関連ですが、県薬を通じて「発熱外来の機能を持つ医療機関から処方せんが発行される場合の薬局での対応に関する留意点」という日薬の通知が22日にFAXされました。(こういった通知はあまり紹介したくはありませんが・・・・)
おおよその項目は理解できるのですが、その中にある「薬局における感染拡大防止について」の項目の一部がひっかかかりました。
「薬局における感染拡大防止について」(一部抜粋)
○新型インフルエンザ患者や感染の疑いのある者も来局することが想定されることから、以下の点を中心に、薬局での感染拡大防止について配慮する。
・薬局従業員のマスク着用、手指消毒・手洗いの実施
・来局者に対しマスク着用、手指消毒を指導
特に新型インフルエンザ患者やその家族等、慢性疾患患者や妊婦等の
ハイリスク者にはマスクの着用を徹底するよう指導
この表現だと、「マスクを持ってない患者さんは薬局に来ないで下さい」ともとれなくもありません。強毒型新型インフルエンザを想定してのことでしょうが、マスク不足のおり、「指導」という表現はちょっと誤解を招くかもしれませんね。
関連情報:TOPICS 2009.05.22 マスク着用に関する政府の見解
日病薬のウェブサイトにタミフルに関する情報が掲載されています。
新型インフルエンザの治療・予防投薬における
タミフルドライシロップが不足した場合の対応について
(日本病院薬剤師会2009年5月22日)
http://www.jshp.or.jp/cont/090522.html
10月2日、Q&Aの通知が出ています。
ファクシミリ等による処方せんの送付及びその応需等に関するQ&Aについて
(厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部 2009年10月2日)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/10/dl/info1001-01.pdf
問1 電話による診療でファクシミリ等により処方せんが送付できるのはどのような患者ですか。また、急性疾患での受診歴がある患者に対しても、電話による診療でファクシミリ等による処方せんの送付が可能となりますか。
問2 慢性疾患等を有する定期受診患者について、直近の受診は何カ月以内であることが必要ですか。
問3 電話による診療でファクシミリ等による抗インフルエンザウイルス薬等の処方が可能となるのは、どのような状況ですか。
問4 慢性疾患の定期処方薬についても電話による診療でファクシミリ等による処方せんの送付が可能ですか。
問5 ファクシミリ等による処方せんの送付を受けた薬局は、調剤した薬剤を患家に届ける必要がありますか。
問6 電話による診療の結果、ファクシミリ等により抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんを送付する場合、保険医療機関は、電話再診料、処方せん料を算定できますか。