29日、EMEA(欧州医薬品庁)は、インスリングラルギン(ランタス注)の安全性に関するプレスリリース行っています。
European Medicines Agency update on safety of insulin glargine
(EMEA Press Release 2009.06.29)
http://www.emea.europa.eu/humandocs/PDFs/EPAR/Lantus/40847409en.pdf
今回の発表は、欧州糖尿病学会(EASD)の学会誌Diabetologia に掲載された、インスリングラルギンとがんの発症リスクと関連性を記した4つの論文(うち3つでリスク増加)と論説を受けてのもので、EMEAではこれらのstudyについて首尾一貫していないとして、現時点では関連性はわからないとしながらも、今後精査を行っていくとしています。
EASD Statement:Lantus insulin: a possible link with cancer which requires further investigation(研究者による会見ビデオ有り)
http://webcast.easd.org/press/glargine/glargine.htm
POSSIBLE LINK BETWEEN INSULIN GLARGINE AND CANCER PROMPTS URGENT CALL FOR MORE RESEARCH(Diabetologia)
http://www.diabetologia-journal.org/cancer.html#press
http://www.diabetologia-journal.org/cancer.html#published
今回の論文について、ランタスを販売するサノフィ・アベティス社は29日、 チーフ・メディカル・オフィサーを務めるジャン−ピエール・レナー氏がビデオメッセージで、コメントを発表しています。(リンク→WEB・日本語訳PDF)
関連ブログ:ランタスの発がんリスク?(内科開業医のお勉強の時間 2009.6.30)
http://intmed.exblog.jp/8529736/
参考:
EMEA plans review after studies raise concerns about insulin analogues and cancer risk(PJonline NEWS & Views 2009.6.30 一定期間過ぎるとログイン必要)
Mixed Message on Insulin Glargine Cancer Risk(Medpage TODAY 2009.6.29)
http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Diabetes/14904
欧州学会誌論文「ランタスに発がん性リスク」
(日刊薬業フリーサイト7月1日)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/kigyo/article/1226551514451.html?pageKind=outline
7月2日 11:10 11:50更新(タイトル変更しました)
2009年07月01日 16:13 投稿
日本糖尿病協会が30日、この件についての緊急のコメントを発表しています
インスリングラルギン(商品名:ランタス)についてのお知らせと注意
(日本糖尿病協会2009年6月30日)
http://www.nittokyo.or.jp/kinkyu_lantus.html
米FDAも1日発表した“Early Communication”で、インスリングラルギンの安全性のデータについて再検討中であることを明らかにしています。
Early Communication About Safety of Lantus (insulin glargine)
(FDA 2009.7.1)
福井県の薬局に勤務しています。
いつも素早い情報提供をありがとうございます。
サノフィ・アベンティス社も6/30にコメントを出していました。
(ランタスについて)
http://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/medias/B72C25BC-A260-4EC5-81B5-7D5EF4A128AB.pdf
メーカーからの説明などなにか聞かれた方がおられましたら、教えてください。
コメントありがとうございます。
本記事中わかりづらかったと思いますが、グローバルサイトには6/30日発表のサノフィ・アベンティス社のコメントの元となるビデオメッセージがアップされています。
Lantas Information
http://en.sanofi-aventis.com/minisites/breaking-news/home.asp
各国とも影響が大きいと見えて、EU、米国の公的規制機関がコメントを発表しています。
また上記リンクにあるように英国薬剤師会も速報でEMEAの発表と論文の紹介を伝えていたのが印象的でした。論文の紹介もしたいのですが、いまのところダウンロードできるようなので、関心のある方は直接訪問して下さい。
日本でも日本糖尿病協会がいち早く患者さん向けメッセージを出したことはたいへん評価できますが、ランタスを使用している患者さんが憶測で使用を控えたりしないよう、メーカーや厚労省も患者向けにコメントを出すべきではないかと思います。
日刊薬業が厚労省の対応を報じています。
厚労省・倉持室長 ランタス「情報収集して冷静に判断」
(日刊薬業WEBフリーサイト 7月2日)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226551518109.html?pageKind=outline
疫学が専門の東北大の坪野吉孝教授が、自身のブログ「疫学批評−医学ジャーナルで世界を読む−」で、「日本のマスメディアは何をしているのだろうか。きちんとした状況の説明と患者への助言が必要ではないか。」とメディアの対応を批判しています。同感です。
FDA、ランタスとがんについて早期情報を公表。
(疫学批評 7月3日)
http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51660867.html
論文の紹介記事も掲載しています。
インスリンアナログ製剤のランタス、がんリスク上昇の可能性か。
(疫学批評 6月30日)
http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51659585.html
国立国際医療センター 糖尿病情報センターが米国糖尿病学会と米国臨床内分泌学会からの声明の日本語訳を掲載しています。
インスリングラルギン(ランタス)についてのお知らせ
(患者・一般向け、医療関係者向け)(7月1日掲載)
http://imcj-dm.jp/center/topics_01.html
EU、米国に続き、カナダの公的機関も9日、プレスリリースを発表しています。
Health Canada Update About Safety of Lantus (Insulin Glargine)
(Health Canada 2009.7.9)
http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2009/2009_115-eng.php
カナダも現時点ではがんの発症との関連性は認められないとしながらも、安全性についての再検討を行っているとしています。
また、自己判断で中止せず、心配があるときは医療専門職に相談するよう呼びかけています。
7月13日、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)ウェブサイトの医薬品関連情報に新たにできたカテゴリー「医薬品に関するお知らせ」に関連情報が掲載されました。
ヨーロッパ糖尿病学会の学会誌(Diabetologia)に掲載された、インスリングラルギン(商品名:ランタス)と発がんに関する4つの論文について(日本糖尿病学会)
http://www.info.pmda.go.jp/gakkaitou/file/insgra.pdf
いまさらながら、この件を私のブログで取り上げました。
http://hello.ap.teacup.com/d-inf/1887.html
詳しくは、こちらのブログを見てくださいと書いておきました。
7月23日,欧州医薬品庁(EMEA)は,「入手可能なデータをレビューした結果,心配はなく,処方の変更も必要ではない」としたプレスリリースを行っています。
European Medicines Agency update on safety of insulin glargine
(EMEA Press Release 2009.07.23)
http://www.emea.europa.eu/humandocs/PDFs/EPAR/Lantus/47063209en.pdf
http://www.diabetologia-journal.org/cancer_files/patientinfo.pdf
こちらでは「スウェーデンで乳がんのリスクが2倍になったのは、ランタス単独使用者のみで、その他のインシュリンとの併用では見られない」とあります。
たいていの患者は(超)速効型との併用をしている思うのですが、いかがでしょうか。
コメントありがとうございます。
私のところでも,ランタス+セイブルという方がいますので,インスリンがランタス単独という方は決していないわけではないと思います。
この研究でも,114,841人中5,970人(女性は47,738人中2,697人)と約5〜6%がランタス単独となっています。
スウェーデンの研究論文は今でも見れますので確認してみて下さい。
http://webcast.easd.org/press/glargine/download/090776Jonassoncorrectedproofs.pdf
11月6日に開催された平成21年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会にPMDAの調査結果報告書が示されています。
資料2−6 ヒトインスリン及びインスリンアナログ製剤と発がん性の関連性について
(厚労省11月13日掲載 リンク再設定)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1106-11p.pdf
医薬品・医療機器等安全性情報 NO.263 でこの問題が取り上げられています。
医薬品・医療機器等安全性情報 NO.263
http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/263.pdf
2011年1月12日、米FDAは問題の4つの臨床試験をレビューした結果、現時点では発がんリスクが増大するとは結論されなかったと発表しています。
FDA Drug Safety Communication:
Update to ongoing safety review of Lantus (insulin glargine) and possible risk of cancer(FDA 2011.1.12)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm239376.htm
一方で、製薬会社が行っている疫学調査(2011年6月頃には明らかになるらしい)について注目していると述べ、引き続き安全性について関心を持っているようです。
なお、日本語訳概要が、海外公的機関 医薬品安全性情報に掲載されています。(2月17日リンク追加)
海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.9 No.4
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly9/04110217.pdf