日焼け止めについては,多くの方が理解していると思いますので,今さらと思うかもしれませんが,群馬県は7月15日に次のような発表をしています。
日焼け止め化粧品によるアレルギーに注意!〜紫外線吸収剤使用の表示がない商品あり〜
(群馬県生活文化部消費生活課2009年7月15日)
ご存じと思いますが,光は波長により,下記の3種類に分けられます。
分類 | 波長 | 性質・特徴 |
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紫外線 | UV-C (100〜280nm) |
大気層(オゾンなど)で吸収され、地表には到達しない。 |
UV-B (280〜315nm) |
ほとんどは大気層(オゾンなど)で吸収されるが、一部は地表へ到達する。 日焼けを起こしたり,皮膚がんの原因となる。また,紫外線角膜炎や翼状片の原因,白内障の危険因子としても知られている。 薄ぐもり程度ではUV-Bの80%以上が透過する 雪山(新雪:80%)や砂浜(10〜25%),や標高が上がる(1000m上昇するごとに10〜12%)とUV-Bは増加する。 帽子の着用(20%減少)やUVカット機能を持った眼鏡やサングラスの着用(90%減少)でUV-Bは減少する。 |
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UV-A (315〜400nm) |
真皮にまで到達し、しみやシワ(光老化)の原因になるとともに、紫外線を浴びた直後の一時的(数時間程度)な皮膚の黒化(一次黒化)を引き起こす。UV-Bほど有害ではないが、過剰な暴露により、水疱やシミ等の障害が起こる可能性があると言われている。 日焼けサロンでの日焼けは、人工的にUV-B をカットして、UV-A だけを照射することによって引き起こされるものだが,WHOより発がん性が高いとのエビデンスがあるとして,18歳未満の使用禁止が韓国勧告されている。 |
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可視光線 | 400〜770nm | |
赤外線 | 770nm〜 |
そして日焼け止めには、紫外線防止効果を発揮させるために、乳液やクリームの成分に加えて、紫外線散乱剤(無機系素材)と紫外線吸収剤(有機系素材)の紫外線防止剤が含まれていて,それぞれ下記のような特徴があります。
紫外線吸収剤 | 紫外線散乱剤 | |
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主な成分 | メトキシケイヒ酸オクチル (メトキシケイヒ酸エチルヘキシル) ジメチルPABA オクチル t- ブチルメトキシジベンゾイルメタン |
酸化亜鉛 酸化チタン |
特徴 | 化合物自体が紫外線を吸収し皮膚へ紫外線が届くのを防ぐ。 特異的な吸収波長がある。 (UVB 吸収剤、UVA 吸収剤) |
粉末が紫外線を吸収・散乱することにより皮膚へ紫外線が届くのを防ぐ。 酸化亜鉛はよりUVAを、酸化チタンはよりUVBを防ぐ。 |
長所 | 溶解しているため皮膚に塗った時に白く見えない。 | アレルギーをおこすことがほとんどないことから,こども向け商品や皮膚の敏感な人向け商品として,「紫外線吸収剤無配合」「紫外線吸収剤フリー」「ノンケミカルサンスクリーン」といったキャッチフレーズで販売されている。 |
短所 | アレルギーを起こす場合がある。 | 吸収剤に比べると、皮膚に塗った時に白く見える。(最近のものは目立たなくなっている商品が多い) |
今回群馬県が注意喚起をしたのは,紫外線吸収剤が記載されていない一部商品を紫外線吸収剤にアレルギーがある人が知らずに使ってアレルギーを起こした事例があったというもので,背景には薬事法でこれら紫外線吸収剤の成分表示を義務づけていない点にあるとしています。
多くの商品では,自主的に配合されている成分を容器に表示していますが,とりわけ医薬部外品は薬事法に基づく全成分表示が義務づけられていないことから,こういった事例が出てきたのかもしれません。
日焼け対策だけではなく,服用薬の関係で光線過敏症対策として日焼け止めを使用している患者さんが少なくないと思いますが,使用して効果がない,赤くなってしまったという相談があった場合には,配合されている成分の確認が必要かもしれません。
資料:
紫外線環境保健マニュアル2008(環境省2008)
http://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_manual.html
薬剤師が知っておくべき、紫外線と日焼け止めの知識
(マルホ株式会社・保険調剤薬局向け情報(専門医に聞く)2008.6)
http://www.maruho.co.jp/medical/hokenchouzai/200806hokenchouzai.pdf
関連情報:日焼け用ベッド、がんの恐れ 国際研究機関が発表
(47NEWS 7月31日)
http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009073001000910.html
2009年08月02日 14:54 投稿