同一成分でも効能効果の違いで薬価の大きな開き

 現場の皆さんは既にご存じの話だと思いますが,7日の読売新聞が,最近発売されたパーキンソン病治療薬「トレリーフ錠25mg」の薬価1084.90円について,同一成分(ゾニサミド)の抗てんかん薬のエクセグラン錠100mgの薬価38.5円とあまりにも大きすぎるとの記事を掲載されています。

読売新聞・医療と介護(8月7日)
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090807-OYT8T00602.htm

 日経DIの記事をご覧になられた方はご存じと思いますが,このトレリーフの1錠1084.90円というのは,エフピー錠の1日量薬価(3錠分の1033.20円)に有用性加算5%が加えられ,1084.90円となったものですが,薬価の最終承認機関である中医協の議事録をみると,ARB+利尿剤の薬価問題の話は出ているんですが,今回のエクセグラン錠の薬価との開きの大きさについては,だれも指摘していないんですね。日薬の山本委員も出ていますが。

第141回中央社会保険医療協議会総会 (2009年2月25日開催)
 資料:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/dl/s0225-5a.pdf
議事録:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/txt/s0225-1.txt

 それと,エクセグランには後発品(エクセミド錠100mg24.2円)が出ているので,価格の開きは新聞記事以上にさらに大きくなります。

 またご存じと思いますが,エクセグランの添付文書には「用法・用量に関連する使用上の注意」の項目で,「ゾニサミドをパーキンソン病(本剤の承認外効能・効果)の治療目的で投与する場合には,パーキンソン病の効能・果を有する製剤(トレリーフ)を用法・用量どおりに投与すること」と記載され,パーキンソン病にはトレリーフを使用しろとの記載があります。

エクセグラン錠添付文書(PMDA添付文書情報)
 http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139005B1048_1_06/

 トレリーフ錠の薬価決定に当っては,薬価算定のルールや過去には,リウマトレックスの事例もありますので,中医協でも何ら疑問の声が挙がっていませんでしたが,やはり患者さんの立場から言えば(今までは適応外で使用していたケースもあったのでしょうから),やはり100倍超の価格の開きを理解してもらうのは難しいでしょう。

 ちなみに同一成分で適応症が異なる例としては下記の様なものがあります。それと比較しても今回のトレリーフ錠の成分量あたりの価格の開きは突出しています。

成分名 新たな薬品名 新効能 薬品名 効能
ゾニサミド トレリーフ錠25mg
(1錠 1084.9円)
パーキンソン病治療 エクセグラン錠100mg
(1錠 39.5円)
エクセミド錠100mg
(1錠 24.2円)
抗てんかん薬
ラミブジン ゼフィックス錠100mg
(1錠 622.2円)
B型肝炎ウイルス治療 エピビル錠150mg
(1錠 953.6円)
エピビル錠300mg
(1錠 1854.6円)
HIV感染症治療
メトトレキサート リウマトレックスカプセル2mg
(1カプセル 344.3円)
メトトレキサートカプセル2mg「マイラン」「サワイ」
(1カプセル 201.2円)
メトトレキサートカプセル2mg「トーワ」
(1カプセル 189.1円)
メトレート錠2mg
(1錠 245.7円)
メトトレキサート錠2mg「タナベ」
(1錠 211.3円)
抗リウマチ薬 メソトレキセート錠2.5mg
(1錠 45.9円)
代謝拮抗薬
ラモセトロン塩酸塩 イリボー錠2.5μg
(1錠 86.3円)
イリボー錠5μg
(1錠 141.1円)
男性における下痢型過敏性腸症候群治療
ナゼアOD錠0.1mg
(1錠 1602.6円)
制吐剤

 対象となる患者さんの一部が公費対象となる可能性を考えるとべらぼうに自己負担が増える患者さんはごくわずかなのかもしれませんが,結局は税金で国民全体が負担することになります。

 小児用バファリンがバファリン錠81mgとして発売されたとき薬価が変わらなかったことを考えると,開発にいくらお金がかかるといってもこれでは批判は出ても当然でしょう。 

関連ブログ:
トレリーフはエクセグランの100倍以上の薬価
   (薬局のオモテとウラ8月10日)
  http://blog.kumagaip.jp/article/31192563.html
「トレリーフって高い!」
   (another side of ”d-inf“ 3月10日)
  http://hello.ap.teacup.com/d-inf/1757.html

関連情報:「エクセグラン」が添付文書で適応外使用を“禁止”
    (DIオンライン2009年3月6日 要会員登録)

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/200903/509710.html


2009年08月10日 02:03 投稿

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