抗インフルエンザ薬は子どもに投与すべきではない（英国研究）

　10日，BMJ 誌の Online First に，抗インフルエンザ治療薬（タミフル，リレンザ）による子どもの季節性インフルンザの治療や予防に関するシステマティックレビューが掲載され，子どもにインフルエンザの治療や予防でこれらを用いることについてエビデンスは十分ではなく，嘔吐やこれに伴う脱水症状の発現の可能性を考慮すると軽症例などでは投与すべきではない（対象は限られる）とした結論が示されています。

　このため，子どもへのタミフルの予防投与が広く行われている英国をはじめ，海外では大きな波紋を呼んでいます。

Neuraminidase inhibitors for treatment and prophylaxis of influenza in children:systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
（BMJ 2009;339:Published 10 August 2009）
http://www.bmj.com/cgi/content/full/339/aug10_1/b3172

　この研究は，12歳以下を対象に行われた治療目的の4つのRCT（タミフルとリレンザがそれぞれ2つ）と予防目的の3つのRCT（タミフル1，リレンザ2）の合わせて7つのRCTの1766人のデータを解析したものです。（詳細は上記論文でご確認下さい）

　研究者らは，抗ウイルス薬の治療効果は症状寛解を半日から一日半程度早める程度（一つの研究では有意差なし）であり，10日間の予防投与を行った場合も，インフルエンザ症状の発現を8％減少させるにしかすぎない（有意差はあり），喘息の悪化や抗生剤の使用に大きな影響は及ぼさないなどと指摘する一方，タミフルでは嘔吐の発現が少なくないなどとして，新型インフルエンザの感染拡大で行われているこどもへの抗ウイルス薬の予防投与に対して疑問を投げかけています。

　現時点でも，各紙の見出しには「（抗ウイルス薬・タミフルは）子どもに有害」などといった見出しが躍っています。事実上の無料配布が広く行われている英国の新型インフルエンザ対策に微妙な影響があるかもしれません。

　今後さまざまなメディアやブログが取り上げると思いますので，これも追って紹介したいと思います。

関連情報：TOPICS
　 　2009.07.31 子どもへのタミフル予防投与と有害事象の発現（英国報告）

参考：AP通信（2009年8月10日）
Flu drugs ‘unhelpful’ in children（BBC NEWS 2009.8.10）
　http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8193012.stm
Flu drugs little use for children, experts say(Reuter 2009.8.10)
　http://www.reuters.com/article/healthNews/idUSTRE5791JP20090810
British study says healthy children who get the flu don’t need Tamiflu
（Canadian Press 2009.08.10)
　http://www.google.com/hostednews/canadianpress/article/ALeqM5i-Nzvgn5bN_5Yqfej0tI63cfwWlA
Don’t give kids Tamiflu:doctors (豪州　ABC News 2009.08.11)
　http://www.abc.net.au/news/stories/2009/08/11/2652064.htm

8月11日　10:40更新　12日9:40更新　

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2009年08月11日 01:10 投稿