慶応大社会薬学講座の研究グループはこのほど,ネットによる一般用医薬品の購入実態や医薬品に関する情報の入手の方法,健康に関する意識等についてWEBアンケート調査を行い,薬学雑誌(http://yakushi.pharm.or.jp/full_text.html)の9月号にその結果を報告しています。
インターネットによる一般用医薬品購入に関連する要因についての研究
(YAKUGAKU ZASSHI 129(9) 1127-1136, 2009)
http://yakushi.pharm.or.jp/FULL_TEXT/129_9/pdf/1127.pdf
この調査は,ネット上のポイントプログラムNetmileに登録している16歳以上の全国の男女約4万人(回答率97.8%)を対象に新薬事法施行前の今年3月に行われたもので,ネットでの医薬品等の購入の有無と購入品目(27品目に分類),回答者の生活や健康背景について尋ね,その年齢区分なども含めてその相関性などを解析しています。
調査結果によれば,一般用医薬品の購入経験者(2008年1年間)の割合は11.9%(4653人)で,医療用医薬品(発毛剤・睡眠薬・抗生物質など,おそらく個人輸入)を購入したことあると答えた人も2%(792人)いたそうです。
購入品目(27品目)で一番多かったのはかぜ薬(購入経験者のうち27.7%)で,次いでビタミン剤(27.2%),目薬(20.7%),漢方薬(14.3%)だったそうです。また27品目中19品目で年齢による品目の購入傾向がみられ,このうち10,20歳代などでは,かぜ薬・咳止め薬・睡眠改善薬・口唇ヘルペス用薬など使用に注意が必要なものの購入が目立ったそうです。
一方,回答者の生活や健康背景との関連性については,離島・僻地居住,多忙,妊娠中,家に介護が必要な人がいる人などで有意差が見られました。
研究者らは,ネットで一般用医薬品を購入する人の中には,医薬品をその他の物品と同列に認識し,身体に影響を与えるものであるという認識が希薄である人がいる可能性があると指摘する一方,必要な医薬品情報を信頼性が不確実なWEBサイトなどから得る傾向もあると指摘し,セルフメディケーションの概念を超えた自己完結型医療を行っているとしています。
つまり,若い人ほど「セルフメディケーション=自分で薬を選んで買う」という傾向がある,不適切な使用が行われている可能性があることなどがを明らかになったとも言えます。
医薬品のネット販売のあり方や義務教育における「くすり教育」の重要性を感じます。
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2009年08月31日 23:28 投稿