「究極の門前薬局」実現のために国と戦う(足利市長)

 全国的に有名になってしまった「究極の門前薬局」問題(TOPICS2009.08.07)ですが,9月7・8日の両日,足利市議会定例会が行われ,複数の議員が質問を行っています

平成21年第4回足利市議会定例会 質疑及び一般質問通告一覧表
 http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/005gikai/osirase/ix2109.htm

 このうち,柳議員質問の部分について,紹介します。

柳議員:
 調剤薬局の設置について,解決しなければならない課題はどのようなもので,どう解決していくのか

市長:
 「医薬分業の法令に関する課題」「競馬場跡地が市街化調整区域に指定されていることに伴う開発許可の課題」「国から不等積等価交換により用地を取得したことによる対応」などがあります。

 このうち「医薬分業の法令に関する課題」については,医療機関から構造や機能の面で独立していることや,医療機関との一体的な経営の禁止などが関係法令などで定められており,かかりつけ薬局の活用による医薬分業の推進に適応した計画とする必要があります。これらについては,現在国や県等との協議を行っている段階であります。(コメント:本当?)

 いずれにしても,競馬場(跡地)の敷地の中に薬局を作る方が,患者さんの利便性にかなうということが出発点であります。現状の計画だと,さまざまな国の縛りということを前提に行政が推進をして参りましたから,競馬場の跡地の北側の旧(国道)50号の北の部分に調剤薬局が立地をする可能性があるということでございます。

 それを想像して頂きたい訳ですが,日赤にかかった患者さんが,例えば夏の暑いとき,冬の風の強い日,雨が降っているとき,わざわざ旧50号の交差点の信号を待って,それを北側に渡って,調剤薬局に訪れて,薬をもらってまた駐車をした車に戻るのは(コメント:車で処方せんを持って薬局の駐車場に止めるとと思うんですが),道路を渡るということをイメージしただけでも,しかもお年寄りや患者さんが渡らざるを得ないということをイメージしただけでも,私はこれは見直す価値がある項目ではないだろうか。(中略)

 地方自治体の主権で,いろんな国の規制というものにとらわれず,われわれ足利市民は,そして日赤にかかるだろう患者としては,競馬場(跡地)の敷地内に薬局を設けさせて頂くことは,何より患者さんの利益にかなうことだという視点に立って,国の規制が大きく立ちはだかっているわけですけど,それに対してやはり戦っていきたいと,それが今回の民主党政権でどういうふうに方針転換がなされるか分かりませんが,可能な限り,時間の許す限り,その点については,検討させて頂きたいところです。(コメント:市民の総意でしょうか? 市長は,門前薬局の制限は過度の規制であり,誤りであると言いたいようです)

柳議員:
 病院の周辺地域の住民のなかには既に,調剤薬局用の用地として,土地の売買や賃貸についての契約をしたり検討しているところがあり,今回の市長の発言に困惑している。こういった住民に対してどのような認識をもっているか?

市長:
 日赤という3次救急,両毛地域で冠たる病院があそこにできるわけでして,そこに来る患者さんの利便性を考えるのが,足利市の役割であります。ですから,周辺の住民のかたも理解して頂けるでしょう。そして,地方の実情にあわせた医薬分業のあり方,これをやはり国に認めて頂きませんと,本当の意味での地方主権というのは成り立たないと思います。

 現在,可能であればということ検討させて頂いているわけですが,国の大きな壁というものがありますから,これはどこまでできるか名言することはできませんが,あくまでも患者さんの立場に立って,私は行動していきたいと思っているわけであります。(傍聴席から拍手)(コメント:市民に対して,誤った認識をもたせかねませんね)

柳議員:
 (中略)ワンストップ(でくすりをもらえること)を優先するよりも,くすりの重複投与よる副作用を避けて,市民の健康・いのちを守ることを優先すべきと考えている。(中略)薬剤師であり,法律を遵守する立場の人が,療担規則や薬局業務ガイドラインの規則を破ることにもなるが,どう考えるか

市長:
 私は薬剤師の免許はありますけど,薬局は経営しておりませんので,それはご承知おき下さい。(傍聴席から「そうだ」の声)(コメント:誘致すれば同じだと思いますが) また,かかりつけ薬局という国が掲げた理想と現実の狭間には大きなものがあります。今,市内を見渡しましても医療機関の近くにないところは全くないわけですね。現実がそうなんです。

 厚生労働省の当初掲げた理想と現実は大きく乖離をしてしまっています。また,仮に競馬場内の敷地に薬局ができた場合でも,その薬局がかかりつけ薬局になりうる可能性はあるわけです。

 一方,渋沢議員とは次の様な答弁が行われています。

渋沢議員:
 調剤薬局は分譲かリースか,テナントであれば何軒くらいを考えているのか?

市長:
 いろんな制度的な問題があって,分譲というのはできないということが私が(市長に)就任させて頂いてわかりました。ですから,方向としてはリースの可能性ができないだろうかということでございます。また軒数については具体的につめてはいません。

渋沢議員:
 建物は業者が建てるのでしょうか,それとも市で建てるのでしょうか?

市長:
 今こちらで考えている試案としましては,土地はリース,建物は行政で建ててこれもリースということでございます。

渋沢議員:
 競馬場の跡地は国土交通省から不等積交換で得られたものであり,転売とか有償で地代をもらって整備することが適当ではないというしばりがかかっているはずだが?

市長:
 その点については,仮に競馬場跡地をそうした形で使わせて頂くということになった場合,その面積につきましてはこれまで国から頂いた補助金というものを返還する必要があろうかと思いますが,そういう形で対応ができるのではないかと内部的には考えています。(コメント:補助金を返してまで行うメリットはあるのでしょうか?)

渋沢議員:
 もし調剤薬局を造るとするならば,市の持ち出し分はどのくらいになるのか,あそこに道路を造って,建物を建てて,どのくらい持ち出しになるのか,そういうことをはっきりして頂きたい。そして投資対効果というのも大事だと思うのです。そういうことを明らかにして頂きたい。

 そしてまず,市としてこんな形でこんなふうにやりたいんだ,ついてはこの県なり国にですねこれについてのクリア,これをこういうふうにやってこういうふうにしたいんだとそういう考えをまず市の方でまとめてもらいたい。

市長:
 具体的な話をしたいのはやまやまでありますが,その前段でいろいろな規制がございまして,本当にそれができるのかどうかと鋭意すすめているところでありまして,丁度今回国政レベルの政権交代があって,民主党代表の鳩山由起夫さんは「改革の一丁目一番地は地方主権だ」ということをおっしゃっているわけです。地方主権ということは,こうした足利市の競馬場跡地の問題についても、基本的に足利市の意向というものが反映してしかるべきだと期待をあわせて持つわけです。

 従って,民主党政権がどのような地方主権のあり方を形作っていくのかということ次第ではこの問題は道が開けるかもしれないとそんな期待をもっているわけでありまして,そのへんの見通しが立った段階で,是非具体的な話をしていきたいと考えております。(コメント:そんな悠長なことを言っていられるのでしょうか? 詭弁としか言いようがありません)

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 まだ話は進展していないようですね。市長は政権交代でもしかしたら特例で認められるのではないかと考えているようですが,普通に考えれば絵空事ですね。こんな状況ですから,まわりの薬剤師が薬剤師の立場で懸念を示しても,おそらく耳を貸すことはないでしょう。本当に同じ薬剤師なのだろうかと思ってしまいます。

 また市長は,調剤薬局への土地の売買や・賃貸を検討している周辺住民の困惑には意を介さないようですが,敷地内への薬局誘致は明らかに,市という有利な立場を利用した行為と考えます。市長は,医薬分業を食いものにしてまで,市の収入としたいのでしょうか? 何かウラがあるのではないかと考えてしまいます。

関連情報:TOPICS
  2009.08.07 足利市の「究極の門前薬局」構想は実現するか
  2009.06.01 患者さんの利便性のために、行政が調剤薬局を誘致することは必要か?
  2009.04.27 地元に地元に薬剤師の首長が誕生。でも・・

9月13日 17:10更新


2009年09月10日 01:56 投稿

コメントが3つあります

  1. フィードバック

     私は足利市民ではないので細かいことは分かりませんが、足利赤十字病院は市民病院でもないのに市長がそこまで執着するというのが理解できません。他の足利市内の病院のことも同じように考えてくれているのでしょうか。同じ足利市民が受診されている訳ですよね?これで公平といえるのでしょうか。
     また、車で医療機関には行けるが、病院から薬局には車で移動できないというのもおかしくないでしょうか。OTC薬を買いに行くときは家の近くの薬局のほうが利便性が高いのでは?そのときは足利赤十字病院の駐車場に車を置いて買いに行けというのでしょうか。
     納得のいかない話です。
     

  2. アポネット 小嶋

    足利市長がブログでこの問題について触れています。

    議会で答弁していることとほぼ同じです。薬剤師市長への意見はこちらへ直接どうぞ。

    改革の1丁目1番地が「地方主権」と言われるなら:2009年9月14日街頭演説
    (足利市長 大豆生田実 ブログ 2009年9月14日)
     http://www.j-beans.jp/archives/2009/09/14/231108.php

    ほとんどが首をかしげたくなる論理展開ですが

    >同じ地主が片や病院に貸し片や調剤薬局に貸すのは好ましくないという
    >ようなことなどを厚労省の出先機関から指摘されている。

    の部分について、いわゆる医療モールを認めている以上、これを盾にするだけで許可を出さないということはできないと思います。(市長の肩を持ちたくありませんが)

    TOPICS 
     2008.04.23 医療モールにおける保険薬局の独立性
       http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/080418.html

    市が薬局を誘致して、地代・家賃収入をもらえば事実上薬局を経営しているのと同じです。下記解釈(薬局を市に置きかえる)であれば、OKともとれなくはありませんね。

    『薬局が所有又は貸借する不動産を保険医療機関に賃借又は転貸借していることのみをもって、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和32年厚生省令第16号) 第2条の3第1号に規定する「一体的な構造構」又は「一体的な経営」には該当するものではないこと。』

    もし、市長が強硬に主張をするならば、医療モールに関する上記見解の見直しも必要かもしれません。

  3. フィードバック

     いつもいろんな情報をありがとうございます。
     医療機関のほうも入札制で足利赤十字病院に決まった経緯があるのでしょうか。
     また、利便性を強調する割には場所が駅から遠いような気がします(私は実際に行ったことはないのですが)ので、言い訳にしか聞こえません。