唯一所属している学会の社会薬学会(http://www.syakaiyakugaku.org/)が主催して12日行われた,平成21年度第2回社会薬学フォーラムに参加してきました。
社会薬学フォーラム(日本社会薬学会)
http://www.syakaiyakugaku.org/meeting/meeting-index.html
今回のフォーラムは「改正薬事法に見る薬剤師の正念場」というテーマで,吉田憲氏(三菱商事株式会社 ヒューマンケア・メディア本部 ヘルスケアユニット医薬品流通チーム),玉田慎二氏(株式会社医療経済社・RISFAX編集長)のお二人の講演のあと,明治薬科大学医療経済学教室教授の角田博道氏を加えてディスカッションを行うというものでした。
吉田氏は,調剤も行うコンビニ「ファーマシーローソンプロジェクト」に関わっている方で,ファーマシーローソンで,どのような調剤業務・薬歴(顧客)管理を行っているかという話が興味深かったです。特に印象的だったのが,薬剤師がコンサルテーション業務に専念できるように,在庫管理など薬剤師が必ずしも行わなくてもよい部分について,本部が支援しているという点です。これにより,薬剤師に時間的にゆとりができ,処方せん調剤以外で来店した人ととのコミュニケーションが可能になっているようです。今後大きな展開になるのではないかと思いました。
講演スライドの一部は,ファーマシスト・ジャーナルウェブサイト(http://www.phjournal.com/)の明治薬科大学医療経済学講義に掲載されているものと同じです。講演でもこの都立大にある店舗を紹介しています。驚くべきことは,2つ以上の医療機関の処方せんを持ってくる人が65%もいるということで,まさしくかかりつけ薬局となっているとのことです。受付医療機関200以上,在庫1500品目などもすごいです。
明治薬科大学医療経済学講義(前期・後期)
2008年前期
http://www.phjournal.com/kougi-img/080528prof-yoshida.pdf
2008年後期
http://www.phjournal.com/kougi-pdf/081105-prof_yoshida.pdf
一方,玉田氏は改正薬事法のうち義務化された「相談応需」の部分について問題提起を行いました。玉田氏は今回の法改正で情報提供だけが注目されているが,相談があった場合の応需義務に対してもきちんと対応できているかが今後問われると述べました。購入したOTCを使用後,何かあった,副作用が生じた時,現状ではともすると医師に訴えることが多いが,本来であれば販売者がきちんと対応すべきではないかとのことです。とりわけ,第1類を販売する店舗(販売業)が,薬剤師不在の時に購入者から質問や相談があったときに,すぐに(24時間)対応できる状態になっているかという点に疑問を投げかけました。(玉田氏は,本サイトをときどき訪問されているそうです。ありがとうございます)
デイスカッションでは,「厚労省は本当にセルフメデフィケーションを推進する気があるのか」という質問があり,スイッチOTCについての話がでました。 TOPICS 2009.8.28 で,PPIがリストから外されたという報道を紹介しましたが,この点について玉田氏は,医学会などは必ずしも反対ではなく,やはり関係者の取り組み姿勢次第では道が開けるといった趣旨の話をしていました。もしかしたら,医師(会)やメーカーの顔色をうかがうのではなく,薬剤師(会)がもっと積極的にスイッチの推進の必要性を強く訴えることも必要なのかもしれません。
さらに,今後の医薬分業の行方にも話が及び,コンビニやスーパーが医薬品を取り扱うようになったことから,ドラッグストアは必ず調剤併設のスタイルが一般的になるだろう。そして,ワンストップショッピングという利便性を消費者が感じるようになるだろうという話になりました。
そうなったとき,いわゆる門前薬局の優位性は失われ,消費者がかかりつけ薬局(ドラッグストア)を持つ必要性を感じるように価値観が変わるだろう。そうなれば今荒波の中にある,中小の零細薬局でも道が開けるのではないかという話となりました。
日本国内中の薬局が,米国のウォルマートやファーマシーローソンのようになるかどうかはわかりませんが,日本でも消費者の行動様式が少しずつ変わっていくと思われます。門前薬局の(地理的)利便性のみを唱える足利市長にもこの話を聞かせてあげたいですね。
関連情報:TOPICS
2009.08.28 日本は本気でセルフメディケーションを推進する気があるのか?
2008.09.11 ファーマシスト・ジャーナル
2009.09.10 「究極の門前薬局」実現のために国と戦う(足利市長)
2009年09月13日 01:58 投稿