一部のワクチンでは、接種後に発熱反応があることが知られていますが、この対応として米国などではアセトアミノフェンの予防投与が行われています。ところがこの予防投与が、ワクチンの免疫効果を減弱させるかもしれないとした研究結果が、Lancet 誌で発表されています
Effect of prophylactic paracetamol administration at time of vaccination on febrile reactions and antibody responses in children:two open-label, randomized controlled trials(Lancet 2009;374:1339-50.)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(09)61208-3/abstract
この研究は、チェコの10の医療機関で実施されたランダム化比較試験でわかったもので、肺炎球菌、インフルエンザ菌タイプb(Hib)、ジフテリア、破傷風、百日咳などのワクチン接種後に、獲得されるはずの抗体価を測ったところ、発熱予防にアセトアミノフェンを使用した群では、低い抗体価になったそうです。
研究者らは、鎮痛剤の抗炎症反応が、免疫系抗体反応に影響を及ぼしている可能性があるとして、熱性痙攣の既往歴がある場合などを除き、予防投与として、アセトアミノフェンは用いられるべきではないとしています。(イブプロフェンなどのNSAIDsはどうなのでしょう?)
となると、新型インフルエンザワクチン後の使用はどうかということになりますが、Health Day 紙によれば、ワクチンの免疫反応が強いので問題はないだろうとかかれていました。また、BBCでは専門家の意見として、この考えを支持するとのコメントが示されています。
乳幼児を対象としたstudyなので、子どもや成人にも当てはまるかどうかはわかりませんが、ワクチン接種後に軽い発熱を訴えて、OTC解熱剤を購入する人がいたら、注意が必要かもしれません。
参考:
Paracetamol dampens infant vaccine effect -study
(Reuter 2009.10.16)
http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSLF528794
‘No post-jab paracetamol’ advice
(BBC 2009.10.16)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8308786.stm
Giving babies Tylenol may blunt vaccines’ effects
(CBS NEWS 2009.10.15 AP配信)
http://www.cbsnews.com/stories/2009/10/15/ap/health/main5387420.shtml
Post-Vaccine Acetaminophen May Harm Immune Response
(Medpage Today 2009.10.15)
http://www.medpagetoday.com/PrimaryCare/Vaccines/16458
Acetaminophen May Weaken Effectiveness of Kids’ Vaccines
(Health Day 2009.10.15)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=632025
2009年10月16日 14:07 投稿
NHS Choice でわかりやすい解説記事が出ています。この研究はPhaseIIIとして行われていて、信頼性は高いようです。
Paracetamol affects childhood jabs (NHS Choice 2009.10.16)
http://www.nhs.uk/news/2009/10October/Pages/paracetamol-vaccine-injection-research.aspx
NHSでは、今回の研究で抗体価が低下したのは予防的にアセトアミノフェンが投与された場合だけであるとして、ワクチン接種後ルーチンにアセトアミノフェンは投与しないほうがよいが、発熱時や具合が悪いときの使用は懸念するものではないとしています。
またNHSでは、新型インフルエンザワクチンで、このことが当てはまるかどうかについては、わからないとしながらも、さらなる研究が必要としています。