政権交代で、来年4月からの診療報酬のあり方について急ピッチで審議がすすめられていますが、その財源ともなる薬価の問題が中央社会保険医療協議会薬価専門部会で話し合われています。11日に開催された第61回の専門部会では、新薬創出・適応外薬解消等促進加算を盛り込んだ「平成22年度薬価制度改革の骨子(たたき台)」が示されています。
第61回中央社会保険医療協議会薬価専門部会(2009年12月11日開催)
WAMNET 資料(12月11日掲載)
この新薬創出・適応外薬解消等促進加算というのは、現行の薬価改定ルールの下では2年ごとにほぼ全ての新薬の薬価が下がってしまい、開発コスト等の回収に時間がかかるため、結果的に革新的な新薬の創出や適応外薬等問題への対応が遅れ、「ドラッグ・ラグ」の問題に繋がっているとの製薬企業の声に押されて導入されるもので、簡単に言えば、後発医薬品が上市されていない新薬のうち一定の要件を満たせば、後発医薬品が上市されるまでの間、事実上薬価を維持させることを認めるというものです。
製薬企業からは、かねてより新薬の特例維持を求めていましたが、薬価維持によって収益も維持・拡大されるという批判もあることから、これらの収益を未承認医薬品の開発や適応外医薬品の開発費用に当てるという条件で、新薬創出・適応外薬解消等促進加算という名称に変え、いよいよ導入されることになりそうです。
具体的には、下記のような仕組みで新薬の薬価改定が行われるようです。
(第61回中央社会保険医療協議会薬価専門部会資料より引用)
上記のように、特許が切れて後発医薬品が発売されるまでは、薬価の乖離率が全収載品の平均乖離率の範囲内にあれば、本来算定されるべき薬価に、改定前薬価になるよう加算され(薬価は維持)、後発医薬品が発売された直後の改定では実勢価格プラス特例引き下げ(強制引き下げ)を加えた大幅引き下げを行うという仕組みです。
つまり、このことは過度の値引き競争が行われないことにつながり、薬価差の減少の可能性も秘めています。また、後発品が参入したあとの改定や、メーカーの販売戦略が変わって値引き競争が始まると、薬価ダウンになるので、在庫管理には相当神経を使うことになりそうです。
11日の部会では大きな異論がなかったことから、導入は濃厚です。また今回の加算は、一応今回限りということになっていますが、9日に行われたヒアリングで恒久的な制度の要望が出されており、当分続く可能性もあります。
尚、今回の加算で不足した診療報酬の財源は、後発品のあるすべての先発品の追加引き下げ(2%)で対応を行うようです。
資料:下記はいずれもWAM NETです。議事録は今のところ出ていません
第60回中央社会保険医療協議会薬価専門部会資料(2009年12月9日開催)
第59回中央社会保険医療協議会薬価専門部会資料(2009年12月2日開催)
第58回中央社会保険医療協議会薬価専門部会資料(2009年11月20日開催)
第57回中央社会保険医療協議会薬価専門部会資料(2009年11月4日開催)
参考:
医療介護CBニュース(12月11日 一定期間を過ぎるとログイン必要)
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/25572.html
ロハス・メディカル12月2日
http://lohasmedical.jp/news/2009/12/03161728.php?page=8
ロハス・メディカル12月10日
http://lohasmedical.jp/news/2009/12/10161617.php?page=2
2009年12月11日 23:29 投稿
22日開催された、中医協の薬価専門部会と総会で、新たに薬価制度改革の骨子案が示され、了承されたそうです。
平成22年度薬価制度改革の骨子について
(第158回中医協総会 資料(総−2))
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1222-5b.pdf
ロハス・メディカル(12月23日)
http://lohasmedical.jp/news/2009/12/23205331.php
ただ加算率については、財源難から、大臣折衝で新薬創出加算については、加重平均乖離率に0.8掛けまでに抑制することが決まったそうです。このため、平均乖離率に近い新薬については、薬価が改訂後同じにはならないということになります。
また長期収載品の強制引き下げについても、上記加算の財源捻出のため、2.2%に拡大となったそうです。
ミクスOnline(12月23日)
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/38385/Default.aspx
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/38387/Default.aspx
製薬協のNews Letterに、新薬創出・適応外薬解消等促進加算についての議論の経緯、新薬創出等促進加算の本格導入実現に向けて取り組むべき方向性などについて記した記事が掲載されています。
薬価制度改革について
(日本製薬工業会 News Letter No.316 2010.3)
http://www.jpma-newsletter.net/PDF/2010_136_03.pdf
後半の方で、「今回の薬価改定以降に薬価差が拡大するような事態となれば、制度設計そのものを一から考え直すということになってしまいます。」としており、今回の加算が適用された品目の4月からの仕切り価格は注視することが必要かもしれません。