抗うつ薬、ベネフィットは重症度の高い人に限られる(米国研究)

 6日、JAMA 誌に、軽度や中等度のうつ症状に抗うつ薬は効果がないとした論文が掲載され、波紋を呼んでいます。

Antidepressant Drug Effects and Depression Severity
JAMA. 2010;303(1):47-53.)
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/303/1/47

抗うつ薬粒治療:ハミルトンうつ病評価尺度23未満は効果少ない
(内科開業医のお勉強日記 2010年1月6日)
http://intmed.exblog.jp/9583682

 この研究はペンシルベニア医科大の研究グループがまとめたメタアナリシスで、パロキセチンに関する3研究、イミプラミンに関する3研究の718人について、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D :Hamilton’s Rating Scale for Depression)という抑うつ指標を基に、解析を行っています。

HAM-D構造化面接SIGH-D(うつばんネット)
 http://www.utuban.net/medical/standard/standard03.html

GRID-HAMD構造化面接ガイド
GRID-HAMD (ハミルトンうつ病評価尺度用半構造化面接)
   (日本臨床精神神経薬理学会ウェブサイト)
 http://www.jscnp.org/scale/grid.pdf

 その結果、ハミルトンうつ病評価尺度が25以上の重症度が非常に高い場合(米国精神医学会基準では、スコアが18以下の場合は軽度〜中等度、19〜22をsevere、23以上をvery severe としているようです)には抗うつ薬に効果が認められたものの、スコアが23より小さい(即ち軽度または中等度、重度の一部も含む?)場合には、ベネフィットは小さいか存在しないかもしれないとしています。

 ただ研究者らに、パロキセチンやイミプラミンは副作用が多いことから、脱落した人がいる可能性があること、718人と解析したデータ数が必ずしも多くないことなどを挙げ、解析上の限界も示しています。

 偶然ですが、6日の読売新聞は、日本では抗うつ薬の安易な投与が行われているのではないかという記事を掲載しています。

読売新聞 2010年1月6日

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100105-OYT1T01486.htm

関連情報:TOPICS
 2008.02.27 軽度・中等度のうつ病に薬物治療は必要か?
 2009.11.05 SSRI/SNRI を中心とした 抗うつ薬適正使用に関する提言

参考:Antidepressants Less Effective When Depression Is Mild
  (Medpage TODAY 2010.1.5)
http://www.medpagetoday.com/Psychiatry/Depression/17797


2010年01月06日 23:04 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    ウォール・ストリート・ジャーナル日本版・読売新聞に関連記事が掲載されています。

    抗うつ剤の効き目は重症度で大きく変わる=解析論文
    (ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 1月7日)
      http://jp.wsj.com/Business-Companies/Technology/node_19952

    読売新聞1月9日
     http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100108-OYT1T01583.htm

  2. アポネット 小嶋

    坪野吉孝氏がブログに解説記事を掲載しています。

    プラセボと比べた抗うつ薬の効果、「非常に重度」の症状以外では不明確。
    (疫学批評2010年1月12日)
     http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51753543.html