海外でOTC薬はどのように販売されているか

 少し前の情報ですが、厚生労働科学研究成果データベースを見ていたら、海外でOTC薬の陳列や販売がどのように行われているかを調査した報告書が掲載されていました。(報告書自体は既に公開されているので、ご存知の方もいるかと思いますが)

 この報告書は、日本大学薬学部 薬事管理学ユニットの白神誠氏と泉澤恵氏が、2007年度から2008年度に行った「薬局及び薬店における薬剤師等の業務実態等に関する調査に関する研究」というもので、下記サイトからその内容を見ることができます。(下記検索画面で、薬剤師等の業務実態というキーワードを入れ、検索をかけて下さい。オンラインで読めるのは今のところ2007年度分のみで、2008年度分はは概要のみです。こちらもおそらく近く掲載になります。)

 厚生労働科学研究成果データベース検索トップ
   http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIST00.do

 海外調査は、英国・ドイツ・ベルギー(2007年9月)、豪州(2008年?)に行われ、別の調査研究の現地調査結果を踏まえた米国のデータを加え、「医薬品販売に関わる店舗数」「薬局等における取り扱い品目とその陳列」「情報提供における環境整備(従業員の着衣や名札、営業時間)」「薬局での情報提供やIT販売(インターネットファーマシー)」「Labelling(外箱表示と添付文書)」「医療保険制度内での一般用医薬品の使用」について、調査結果がまとめられています。

 2007年度の報告書の考察では、次のような課題が指摘されています。

  • 長期的に服薬相談が必要な医薬品(ニコチンパッチ、トランシーノ)、薬剤使用時の判断が難しい医薬品(アシクロビル製剤)、連用が予想される医薬品(解熱鎮痛薬)等の販売時には、購入者の購入時の情報の理解度や服薬目的をきちんと理解したうえで購入しているか否かを専門家が確認するなどの特段の配慮が必要
  • リスクの高い医薬品、相談が必要な医薬品などは、購入者にも服薬指導が大切であると言うことを認識してもらう啓発活動も必要
  • OTC薬販売におけるファーマシューティカルケアを実践するためには、生涯教育の体制の充実、標準化した服薬指導を実践できる教科書の使用、Practice Guidanceの作成、一般医薬品の認定薬剤師制度、消費者教育、薬剤師会によるぬきとり調査による薬剤師の服薬態度のチェックなどの資質向上のための取り組みが必要
  • 有害事象が発生した場合に瞬時に情報を収集するなど安全対策へ積極的に取り組むことも必要(英国イエローカード副作用報告システム)
  • 添付文書はきちんと読まれないことも少なくないので、平易な言葉でわかりやすく見やすくするなど、外箱情報の充実が重要

 これらの項目は、一部最近実践が始まっていますね。

(2008年度の報告書が掲載されましたら更新する予定です)

関連情報:TOPICS
  2010.01.03 セルフメディケーションが根付くか(新年雑感)
  2010.01.03 NPS Pharmacy Practice Reviews(豪州)
  2009.10.30 医薬品と健康・高校生用(日本学校保健会)
  2009.10.25 生活者からの副作用自発報告システムは日本でも必要(国内研究)
  2009.09.04 ジヒドロコデイン配合OTC風邪薬,事実上使用禁止へ(英国)
  2009.07.07 厚労省、OTCの販売実態を覆面調査で確認へ
  2009.04.29 OTC解熱鎮痛剤に潜在的リスクの明示を求める(米国)
  2009.01.09 OTCアシクロビル軟膏を性器ヘルペス治療に転用?
  2008.12.28 第一類の販売には、販売実践ガイダンスの開発が必要
  2008.12.23 高校でも、くすり教育の充実が求められる
  2008.09.16 OTC販売時の業務指針・チェックリスト(英国)
  2008.08.07 医薬品のネット販売制限は消費者の利便を損なうか?
  2008.02.19 イエローカードオンライン副作用報告システムが本稼動(英国)


2010年01月18日 12:20 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    26日から、2008年度分の報告書が読めるようになりました。

    200838048A の方で、泉澤氏が豪州の販売状況を詳細にまとめています。
    (4つめのファイルの後ろの方と5つめのファイルです)

    調査は平成20年11月16日〜20日に現地調査で行われています。

    インターネット販売の現状についても詳しく紹介されていて、州政府の規制や薬剤師会のガイドラインなども紹介されています。

    それと興味深かったのが、OTC薬の消費者向け医薬品情報(CMI)と生涯教育の部分です。

    そして、200838048B の方では、白神氏が2007年度分とあわせてまとめをしています。
    (6つ目のファイルの2ページめから7つ目のファイルの5ページまで)

    じっくり読んで、あとで詳しく紹介できればと思っています。