欧州医薬品庁(EMEA:European Medicines Agency)は21日、抗肥満薬シブトラミン塩酸塩水和物(商品名 Meridia など)について、心臓発作などの心臓血管病のリスクがベネフィットを上回るとして、使用の中止勧告を行いました。
European Medicines Agency recommends suspension of marketing authorisations for sibutramine(EMEA 2010.1.21)
http://www.ema.europa.eu/pdfs/human/referral/sibutramine/3940810en.pdf
Questions and answers on the suspension of medicines containing sibutramine(EMEA 2010.1.21)
http://www.ema.europa.eu/pdfs/human/referral/sibutramine/Sibutramine_Q&A_80817909en.pdf
日本語訳概要が、医薬品安全性情報Vol.8 No.3に掲載されています。
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly8/04100218.pdf
シブトラミンの心臓血管病のリスクは以前から知られていました(このため、心臓血管病の人は使用禁忌)が、EMEAでは専門機関のCHMPが9800人の患者を6年間追跡調査した、SCOUT study (Sibutramine Cardiovascular Outcome Trial)のデータを検討、シブトラミンのベネフィットがリスクを上回ることはないとして、使用の中止を勧告しました。
そして、EMEAでは次のような勧告を行っています。
- 医師は、肥満または体重が多い患者へのシブトラミン製剤の処方を止めるべきである
- 薬剤師は、今後シブトラミン製剤の調剤を行うべきではない
- 痩せ目的で使用している患者は、今後の対応策を医師と話し合うべきである
- 医師に相談する前に服用を止めたい患者はいつでもそうすることができる
- どんな疑問点も、医師または薬剤師に相談すべきである
これを受け、英国医薬品庁(MHRA)も使用の中止を勧告しています。
Sibutramine: Suspension of marketing authorisation as risks outweigh benefits(MHRA 2010.1.21)
Suspension of sibutramine (Reductil)(MHRA 2010.1.21)
http://www.mhra.gov.uk/NewsCentre/CON068470
シブトラミンは、日本でも個人輸入により使用されたリ、輸入ダイエット健康食品の中に違法に混入されている等私たちにも無縁ではなく、もし服用している人がいたら直ちに服用中止を呼びかける必要があるでしょう。
また米国では、OTC抗肥満薬として広く販売されているAlli(成分はオルリスタット)の偽造医薬品でもシブトラミンが検出されています。
FDA Warns Consumers about Counterfeit Alli
The counterfeit products contain controlled substance sibutramine
(FDA NEWS RELEASE 2010.1.18)
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm197857.htm
この米国でも、昨年11月にシブトラミンに対するEarly Communication が発表され、安全性についての再検討が行われていることが明らかになっています。
Early Communication about an Ongoing Safety Review of Meridia (sibutramine hydrochloride)(FDA 2009.11.20)
一方、シブトラミンは日本でも抗肥満薬としてエーザイ社が開発し、オベスケアという商品名(適応症:BMI25以上の内臓脂肪蓄積を伴い2型糖尿病及び脂質代謝異常を有する肥満症で、食事・運動療法を行っても十分な効果が得られない場合)で、昨年7月24日に行われた薬食審・医薬品第一部会を通過しましたが、9月29日に行われた薬事分科会では、承認が見合わせとなっていました。
メーカーにとってはつらいところですが、これで承認が認められない可能性もあります。
関連情報:TOPICS
2008.10.27 抗肥満薬Orlistat、欧州でもスイッチへ
2010.01.21 海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.8 No.2
参考:
Top obesity drug sibutramine being withdrawn
(BBC NEWS 2010.1.22 UPDATE)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8473555.stm
ミクスONLINE 2009年7月27日
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/37679/Default.aspx
日刊薬業WEBフリーサイト10月6日
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226551893481.html?pageKind=outline
2月18日リンク追加
2010年01月22日 11:21 投稿
タイミングを合わせたかのように、米FDAは21日、去年11月の Early Communication の follow-upを発表しています。
Follow-Up to the November 2009 Early Communication about an Ongoing Safety Review of Sibutramine, Marketed as Meridia(FDA 2010.1.21)
Meridia (sibutramine hydrochloride): Follow-Up to an Early Communication about an Ongoing Safety Review(FDA 2010.1.21)
FDAでは、次のような患者さんには禁忌とするラベル変更にを行うと発表しています。
・冠状動脈疾患の既往歴がある人
・脳卒中また一過性脳虚血性発作の既往歴がある人
・不整脈の既往歴がある人
・うっ血性心不全の既往歴がある人
・末梢動脈の疾患がある人
・高血圧がコントロールされていない人(145/90以上)
現時点では、使用中止の措置はとられないようですが、3月にまとめられる検討結果を待って、諮問委員会で最終判断がとられるようです。
3月20日の朝鮮日報が韓国のシブトラミン事情を紹介しています。
(一定期間後ログイン必要の可能性)
「ダイエット薬共和国」韓国
(朝鮮日報 3月20日)
http://www.chosunonline.com/news/20100320000027
http://www.chosunonline.com/news/20100320000028
韓国でも、国内でまだ重大な副作用が報告されていないとして、処方の自粛に留めているようです。
一方で、ガイドラインに沿った処方というのはなかなか難しいようです。
原文
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2010/03/20/2010032000080.html