エストロゲン単独のHRTは喘息リスクを高めるかもしれない

 Thorax 誌のOnline Firstに、閉経後の女性がエストロゲン単独のHRTを受けると、HRTを受けていない人に比べて喘息の発症リスクを高めるとした論文が掲載されています。 

 (薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介することにしました。記述法などに誤りがございましたらご指摘下さい。)

研究の
目的や背景
疫学的研究で女性ホルモン類と喘息の関連が指摘されていることから、閉経後のホルモン補充療法(HRT)でも喘息との関連があるかどうか
研究の方法 prospective observational cohort study
どんな患者が研究の対象? E3N cohort study(1925年〜1950年生まれの98,955人のフランス人の女性が対象、1990年より開始)のデータのうち、1990年の時点で喘息になっていなかった57,664人のデータ
何を指標? HRTの使用の有無とHRTの種類(2年毎に2002年までのデータを調査)
(自然閉経の9.4%と外科的処置後の28%がエストロゲン単独のHRT)
何を比較 喘息になった人(喘息発作を起こすか、医師から診断を受けた人)の数
わかったこと 569人が新たに喘息になった(一般的な発症率と同じ)
最近HRTを行っている人では喘息の発症リスクは1.2倍(有意差なし)
エストロゲン単独のHRTでは喘息の発症リスクは1.4倍(有意差有り)
さらにこのうちの
 非喫煙者では喘息の発症リスクは1.8倍(有意差有り)
 アレルギー疾患の既往歴者で1.86倍
閉経後に新たに喘息と診断される率は、エストロゲン単独でのHRTとの関連があるかもしれない
コ メ ン ト 女性ホルモン類が喘息の発症と関連があるとは知りませんでした。
たばこを吸わない人の方が喘息の発症リスクが高い(エストロゲン・プロゲステロンによるHRTを行っている人でも同様の傾向とのことです)というのも興味深いです。(たばこの煙に抗エストロゲン作用がある?)
論 文 名 Postmenopausal hormone therapy and asthma onset in the E3N cohort
掲載雑誌 Thorax Online First 8 February 2010
リ ン ク http://thorax.bmj.com/content/early/2010/01/22/thx.2009.116079.abstract

論文紹介記事:
 HRT Linked to Asthma Risk(Medpage TODAY 2010.2.7)
  http://www.medpagetoday.com/Endocrinology/Menopause/18342
 Estrogen-only HRT may increase risk of asthma after menopause
  (EureK Alert! 2010.2.7)
  http://www.eurekalert.org/pub_releases/2010-02/bmj-ohm020510.php


2010年02月09日 00:23 投稿

コメントが1つあります

  1. 詳しくは判りませんが 更年期症状だけではなくて 妊娠中の体の異常も ホルモンのバランスと関連していると アメリカの産科医から聞かされました。一方で 女性ホルモンの指令神経と呼吸気道の神経系統が ものすごく隣接していて シナプス興奮が ジャンピングしてしまうことも考えられると 咳喘息の時に 言われたことがあります。女性の神経叢は細いので 良くあるそうです。リウマチ抗体も ストレスと女性ホルモンの関連が予測されています。閉経後も 体調は月リズムを持っていますから。母体の不思議は まだまだたくさんありそうです。