既に、日本でもタモキシフェン(ノルバデックスなど)の添付文書に注意喚起の記載はありますが、BMJ 誌のOnline First に、パロキセチン(パキシル)がタモキシフェンの作用を減弱させるとした論文が掲載されています。
(薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介することにしました。記述法などに誤りがございましたらご指摘下さい。)
研究の 目的や背景 |
一部のSSRIに、CYP2D6を代謝阻害することにより、タモキシフェンの作用を減弱(活性代謝物endoxifenの血漿中濃度の低下)させることが知られているが、SSRIの種類によって差があるかどうか |
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研究の方法 | Population based cohort study. |
どんな患者が研究の対象? | タモキシフェンのの投与を受けている66歳以上の乳がんの女性24,430人のうち、SSRI(パロキセチン、フルオキセチン、セルトラリン、シタロプラム、フルボキサミン)または、venlafaxine(SNRI)の投与を受けていた2,430人の処方記録(1993年〜2005年)(735人は少なくとも1種類以上のSSRI以外の抗うつ薬の投与を受けていた) |
何を指標? | 乳がんによる死亡率 |
何を比較? | SSRIの種類による死亡率 |
わかったこと | 平均2.38年間の追跡調査の間に1074人が死亡、うち374人が乳がんが原因 SSRIの服用の期間が長いほど、SSRI間の死亡率の差が広がった。(具体的な数値は原著でご確認下さい。うまく説明できないので) パロキセチンのみが優位に死亡率を高め、患者20人毎に5年後の死亡を1人増やす? とのことのようです |
コ メ ン ト | SSRIは、がん患者にありがちな抑うつ症状の改善の他、タモキシフェン使用に伴うほてりを緩和するためにしばしば用いられますが、SSRIによるCYP2D6の代謝阻害には差があるようです。 タモキシフェンの添付文書を見ると、「相互作用に起因する効果の減弱及び副作用の報告はない」としていますが、タモキシフェンを投与中の患者さんに抗うつ薬を使用する場合には、パロキセチンは避けた方がいいようです。 |
論 文 名 | Selective serotonin reuptake inhibitors and breast cancer mortality in women receiving tamoxifen: a population based cohort study |
掲載雑誌 | BMJ 2010;340:c693 Published 8 February 2010 |
リ ン ク | http://www.bmj.com/cgi/content/full/340/feb08_1/c693 |
論文紹介記事:
SSRI and Tamoxifen Increase Mortality Risk
(Medpage TODAY 2010.2.8)
http://www.medpagetoday.com/HematologyOncology/BreastCancer/18376
Paxil Blocks Tamoxifen, Lowers Survival Odds Against Breast Cancer
(Health DAY 2010.2.8)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=635809
2010年02月09日 15:23 投稿
内科開業医のお勉強日記に紹介記事が掲載されています。
タモキシフェンと、パキシル併用は併用比率増加とともに死亡リスク増加
(内科開業医のお勉強日記 2月13日)
http://intmed.exblog.jp/9937588/