2010.02.19 のTOPICSで、米FDAからLABAs(長時間作用型β刺激吸入薬)の使用の事実上の慎重使用の勧告が示されたことを紹介しましたが、2日、NEJM 誌のOnline First に、ステロイド吸入による喘息治療を行っている子どもが治療のステップアップが必要な場合、ステロイド増量やロイコトリエン拮抗薬の併用より、LABAsの併用がより有用であるとした論文が掲載されています。
Step-up Therapy for Children with Uncontrolled Asthma while Receiving Inhaled Corticosteroids
(New Engl J Med 2010.3.2 Online First)
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa1001278
Choosing Asthma Step-up Care
(New Engl J Med 2010.3.2 Online First)
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMe1002058
この研究は、フルチカゾン100mgを1日2回吸入している6〜17歳の子ども182人を、Step-up Careとして、フルチガゾン増量(250mgを1日2回吸入)、LABAs(サルメテロール50mgを1回2回吸入)の追加、ロイコトリエン拮抗薬(モンテルカスト5mgまたは10mg)追加の3群に分けて、16週間後に臨床症状や生理機能を比較したもので、LABAs追加が最もよい成績をおさめたそうです。(但し、黒人ではフルチカゾン増量の方が優位=人種によりβ刺激薬に対しての反応差があるらしい)
この論文は、学会(AAAAI:American Academy of Allergy, Asthma & Immunology)の年次総会での発表に合わせて公表されたものですが、FDAがLABAsの慎重使用を勧告したこともあり、学会では症状の増悪を防ぐために、LABAsを使用すべきではないかという議論が起こっているようです。
確かに、ステロイドの増量は子どもの場合成長への影響が懸念されますし、モンテルカストも精神神経症状の懸念があり、Step-upについてはいずれも場合でもリスクはないというわけではありません。
この研究では、安全性について詳しく検討されているわけではない(それでも7例に有害事象あり)ので、論説でも「どのStep-upがよいかは、患者の状態をよくみながら主治医の責任で(リスク・ベネフィットを判断し)選択されるべき」だとしています。
一方、LABAsをめぐっては最近、下記のような論文も発表されています。
Long-acting Beta-Agonists with and without Inhaled Corticosteroids and Catastrophic Asthma Events
(The American Journal of Medicine published online 22 February 2010.)
http://www.amjmed.com/article/S0002-9343(09)01110-3/abstract
喘息:長期ベータ刺激剤ICS併用でも挿管や死亡増加?
(内科開業医のお勉強日記 2010年2月22日)
http://intmed.exblog.jp/10022670
近く公表されると思われる、諮問委員会提出のFDAの資料と、諮問委員会として出される見解を注目したいと思います。
関連情報:TOPICS
2010.02.19 喘息へのLABAsの使用は必要最少限に留めるべき(米FDA)
2008.12.12 FDA諮問委、LABAs単剤は喘息に使用しないよう勧告
2009.07.09 モンテルカストと精神神経系有害事象(カナダ)
2009.06.13 ロイコトリエン受容体拮抗薬と精神神経系症状(米FDA)
参考:
AAAAI:Asthma ‘Step-Up’ Tx Works Most Often with LABAs
(Medpage TODAY 2010.3.2)
http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/AAAAI/18772
Panel Critical of FDA’s Asthma Drug Ruling
(WebMD 2010.3.1)
http://www.webmd.com/asthma/news/20100301/panel-critical-of-fda-asthma-ruling
2010年03月03日 20:39 投稿
3月10-11日回開催のFDAの諮問委員会の資料が公表されています。
Briefing Information for the March 10-11, 2010 Joint Meeting of the Pulmonary-Allergy Drugs Advisory Committee and Drug Safety and Risk Management Committee
FDA提出の資料は、6.87MBの倍以上の大きさのサイズがあります。(400ページ超)
解説記事を出しているMedpageによれば、今回の諮問委員会では直ちに使用制限を決めるのではなく、長期使用に関する安全性を調べる臨床試験をどのように行うかということが審議されるようです。
FDA Panels to Advise on LABA Study Designs
(Medpage TODAY 2010.3.9)
http://www.medpagetoday.com/AllergyImmunology/Asthma/18903
FDAの分析でも、黒人は白人に比べ、LABAsに対するリスクが高いようです。