薬害防止対策としての明細書発行

 くまさん☆のブログで、4月1日からで保険薬局で明細書を発行することになった是非についてディスカッションが行われていますが、明細書の無料発行義務化のいきさつについて、少しふれたいと思います。

 もともと明細書の発行自体は、レセプトが電子化されている施設では2008年の改定で患者の希望があれば発行(有料可)することが義務づけられていましたが、改定関わる検証調査で、発行についての周知が十分されていないことが明らかになったこと、費用の問題、明細書を受け取った患者さんから、「治療/検査内容が分かりやすくなった」「医療費の内訳が分かりやすくなった」との声が多かったことから、今回の明細書の無料発行義務化につながっています。

診療報酬改定結果検証に係る調査(平成21年度調査)
明細書発行の一部義務化の実施状況調査 結果概要(速報)
(第26回中央社会保険医療協議会 診療報酬改定結果検証部会 2009.11.10)
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1110-5b.pdf

 さらにこれに加え、薬害被害にあった患者団体からの強い要望があったことも見逃せません(下記委員会で、議論が行われています)

第151回中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会(2009年11月27日開催) 
  議事録(後半の方です)  資料

 資料より抜粋
患者の視点の重視(明細書の発行など)について
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1127-5h.pdf
全国薬害被害者団体連絡協議会要望書(2008.2.1)
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1127-5j.pdf
08/01/25 中央社会保険医療協議会総会平成20年1月25日(公聴会)議事録抜粋
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1127-5i.pdf

第165回中央社会保険医療協議会総会(2010年2月3日開催)
  議事録(後半の方です) 資料

第166回中央社会保険医療協議会総会(2010年2月5日開催)
  議事録(前半の半ばです) 資料

 いままで知ることが難しかった、病院の中で受けた点滴や検査の内容が明らかになることで、万が一薬による副作用や、薬害があったときに、投薬の証明や副作用防止のための検査が行われてきたかなどを明細書で患者さんが確認することができるわけですから、医療安全対策や薬害防止対策としても必要不可欠なものだと思います。

 ですから、患者さんに「義務化されたので、必要ですか、必要ありませんか」と尋ねるだけではなく、こういった背景があることを少なくとも1回は説明する必要があると思います。

 であるならば、保険薬局での発行は必要なのかどうかですが、私は薬情と領収書の様式の変更でも十分ではないかと考えます。

 薬の内容は薬情や手帳で記録が残りますし、技術料の内訳も、領収書をもう少し詳しくすれば、あえて明細書を出さなくてもよいのではないかと思います。(希望者に発行しますとの掲示などの周知は必要ですが) また、明細書では後発医薬品への変更調剤についての記載は残りませんね。

 保険薬局に求められるのは、明細書の発行も大事ですが、薬情の標準化など副作用の早期発見につながる情報の提供ではないかと考えます。

関連ブログ:
  調剤明細書、本当に必要ですか?(薬局のオモテとウラ 4月1日)
    http://blog.kumagaip.jp/article/36821489.html
  明細書発行原則義務化の初日は?(旭川の薬剤師道場 4月1日)
    http://chuopharm.dtiblog.com/blog-entry-460.html

関連サイト:全国薬害被害者団体連絡協議会
      http://homepage1.nifty.com/hkr/yakugai/

関連記事:
 「明細書」の意味を知っていますか?
 (ロハス・メディカル 2009年6月26日)
   http://lohasmedical.jp/news/2009/06/26182716.php
 患者の「知る権利」と「知りたくない権利」 ─ 明細書で激論
 (ロハス・メディカル 2010年2月4日)
   http://lohasmedical.jp/news/2010/02/04151627.php
 医療機関の情報公開と患者のプライバシー
 (ロハス・メディカル 2010年2月7日)
   http://lohasmedical.jp/news/2010/02/07111627.php

4月3日 14:00 リンク追加


2010年04月03日 12:17 投稿

コメントが2つあります

  1. いつもお世話になります。
    記事ご紹介いただきありがとうございました。

    小嶋様おかきいただいたように、「目的」が明確であれば、そのための対応方法も自ずと出てきますね。
    病院でよかったから薬局でも…というのは、流れとしては分からなくないのですが、薬局においてこの明細書発行という形がベストかどうかが、検証のポイントになりそうですね。

  2. アポネット 小嶋

    トラックバックさせて頂きありがとうございます。

    私も正直、3月まで明細書が義務化される話は眼中にありませんでした。

    くま☆さんの記事を見て、改めて過去の議論や調査を見てみたら、きちんと理由があるんですね。

    何か新しいことを始めるには、意味があると思うのですが、ちょっと今回は現場の薬剤師に対して説明不足だったと思います。

    それと、元記事では触れなかったのですが、DPCを行っている病院の場合、投薬・検査などの治療の内容はレセプトだと書かれないわけですが、今回の明細書でそれが明らかになっているかどうかは分かりませんでした。

    (追記)
    適切かどうかはわかりませんが、自分のところでは患者さんに、「入院治療、点滴や注射を受けたときは、保管しておいた方がよいですよ。もし、(外来で)点滴を受けてアレルギーなどがあったら、見せていただければ参考になります(=アレルギーのチェック)」と、説明しようと思います。

    (追記)
    それと、外来で化学療法を受けた後の処方せん発行の場合には、服薬指導の手助けとなるかもしれませんね。但し、患者さんの同意が必要ですが。