7日の衆議院(訂正します)の厚生労働委員会で、自民党の鴨下議員の「長期収載品などはOTCとしてスイッチされるべきではないか」と質問に対し、長妻厚労相は「前例にこだわらず、ふさわしいものを見極めたい」と答弁し、医療用医薬品の一般用医薬品への積極スイッチについて、肯定的な考えを示しています。
鴨下一郎委員(自由民主党・改革クラブ)質疑 (2010.4.7 厚生労働委員会)
(衆議院インターネット審議中継、やりとりは24分40秒から35分40秒)
漢方薬の医療保険適応についてのやりとりに続き、次のようなやりとりがありました。
鴨下委員:
薬価収載品にはいろいろなものがある、例えばガスターなどは、薬価にも収載されているし、OTCにもあるが、私はこういう薬をもっと増やすべきだと思う。それは結果的に、治療や薬を飲むことにアクセスしやすいということにつながるわけだから。私はそういった意味でのセルフメデフィケーションを広げるべきだと考えている。大臣のセルフメディケーションについてのお考えは?
長妻厚労相:
私も一定のものは必要だと思う。候補としてふさわしいものがあれば見極めていきたい。
鴨下委員:
長期収載品で薬価がついているものは、どんどん(OTC薬)として出すべきでないか、判断というのは医政局・保険局・医薬食品局の3局が一緒になって、大臣が「OTCにかなう薬はしっかり(OTC薬として)外に出せ」という指示を出せば、相当な薬が薬局で売れるようになると考えるが。政治主導でお願いしたい。
長妻厚労相:
ふさわしいものがあるかないかを見極めたい。ただし、考えなければいけないことは、安全性は言うまでもないが、販売する価格がどうなるのか、患者さんの負担が病院で出してもらう場合と市販薬とは価格の乖離があり、手が届きにくいといったことへの配慮も必要。
厚労相の答弁で最後の部分が気になりますね。
OTCのガスター10の価格は確かに非常に割高です。ガスター錠10mgのジェネリック品と比べるとさらに大きな価格差があります。OTCとしての臨床試験、宣伝費用などを考えれば、割高になるのはやむを得ないと思いますが、ニコチネルパッチなど薬価とあまり差のないものもあるわけですから、OTC薬メーカーにも販売価格についてはきちんと戦略をたててもらいたいと思います。
しかし、大臣の答弁にあるように、価格のことを言い出したら、やっぱり「医者でもらった方がいい」ということになってしまいますね。
病気や薬の種類で区別することは適切でないとの批判もあると思いますが、風邪やちょっとした痛みなど、よくある病気や軽度の症状で使われる薬が100%自己負担率と同率に償還される(医療保険でカバーされる率)が果たしてよいかどうかは疑問があります。
むしろ、抗がん剤など高い薬価の薬を使用する患者さんの負担を考え、こういった薬の負担割合を減らす代わりに、風邪薬や湿布薬、ビタミン剤は、薬価の5割以上、もしくは全額自己負担にするなどの考え方もあってもよいのではないかと思います。(実際にフランスなどではこういった政策がとられています)
私は薬価収載品について、現在償還率が全て同じになっていることも、OTCへのスイッチを阻害しているのではないかと思います。
関連情報:TOPICS
2007.05.17 財務省が考える薬剤費抑制策
2005.11.03 財務相、OTC類似薬の給付除外を求める
資料:
津谷喜一郎:欧州における医薬品の価格設定と償還
(薬理と治療 vol. 31 no. 10 2003)
http://www.lifescience.co.jp/yk/jpt_online/review0310.pdf
4月8日 9:10訂正
2010年04月08日 00:36 投稿
やりとりを見る限り、スイッチ推進と感じたのですが、薬事日報は「慎重」と見ているんですね。
【長妻厚労相】スイッチOTC化の拡大に慎重姿勢
(薬事日報 HEADLINE NEWS 4月8日)
http://www.yakuji.co.jp/entry18794.html