カナダ・オンタリオ州の州政府は7日、ジェネリック医薬品価格の大幅引き下げを盛り込んだ、処方薬システム(The prescription drug system)の改革案を発表、薬局の経営に大きな影響を及ぼすことから、大きな波紋を呼んでいます。
McGuinty Government Reforming Ontario’s Drug System(2010.4.7)
http://www.news.ontario.ca/mohltc/en/2010/04/expanding-access-to-affordable-drugs.html
Reforming Ontario’s Drug System(2010.4.7)
http://www.news.ontario.ca/mohltc/en/2010/04/reforming-ontarios-drug-system.html
http://health.gov.on.ca/en/news/release/2010/apr/media_briefing_20100407.pdf
Drug Systems Reforms
http://health.gov.on.ca/en/public/programs/drugreforms/
多くのニュースサイト(→Goggle)で、この問題が取り上げられている一方、まだ十分理解・把握はできていませんが、おおよそ、次のような改革のようです。
- オンタリオ州の住民のジェネリック医薬品のコストを下げるため、高齢者などを対象とした公的保険(Ontario’s public drug plan)での公定価格(regulated price)を、現在の先発品の50%から先発品の25%に引き下げる
- 勤労者を対象とした私的保険(private employer drug plans)の公定価格についても、現在の先発品の70%から先発品の25%以下に引き下げる
- これにより、2014年までにオンタリオ州のジェネリック医薬品の価格は先発品の25%になる
- オンタリオ州薬剤給付プログラムを通じて薬局のオーナーに支払われていた、professional allowances(PAs)は段階的に削減し、2014年までに撤廃する
- 公的保険では処方ごとの調剤料(dispensing fees)を7ドル(1カナダドル=93円)から、8ドル(地方では11ドルに割り増し)に引き上げると共に、毎年必要に応じて引き上げ、価格の20%を占めていたPAsは廃止する(この他に8%のマークアップ有り)
- 勤労者向けの保険では処方ごとの調剤料(dispensing fees)12ドルを据え置くと共に、価格の63%~70%を占めていたPAsは廃止する(この他に10%のマークアップ有り)
- 新たな1億ドルを加えた1億5千万ドルの基金を基に、プロフェッショナルなサービスを行っている薬局に対し補償を行う
オンタリオ州政府によれば、今回の改革案を示した背景には、他の諸国に比べてジェネリックが割高なこと、そして薬の価格に含まれているPAs(名目はジェネリック医薬品のストックで、2009年には、7億5千万ドルが薬局の経営者に支払われている)が患者向けのサービス使われずに、7割が従業員のボーナスや手当などに消えていることが、今回の改革につながったようです。
PAsを経営の原資にしていた薬局からは今回の改革案が実施されると、経営が脅かされるとして大きな不安の声が挙がっており、中小の独立系の薬局の半数が閉店を余儀なくされるようです。
このため、大手チェーン薬局は独立系の薬局と共同で、「改革により患者サービスが低下する」など広告を打って出たり、大手チェーン薬局の中には営業時間の短縮や店舗の閉鎖、宅配サービスの有料化、インターン受入中止を打ち出すなどの抗議の姿勢を示していますがが、こういった薬局の抗議行動には逆に住民からの強い反発を受けている他、州政府からも患者を人質にとることに不快感を示しています。
この問題が今後どうなっていくは、注視続けていきたいと思いますが、薬剤師のプロフェッショナル業務をどう社会が評価するかを考えさせられるとともに、近い将来の日本の姿を案じてしまいます。
また、薬局の公共性を考えると、日本でも報酬や規模、機能のあり方を検討したり、欧州のように薬局の数そのもののコントロールすることも必要ではないかと感じました。
関連ブログ:オンタリオって、薬がめちゃ高い!!??(2010.4.10)
http://ameblo.jp/toronto50/entry-10504595237.html
参考:
Health minister furious over Shoppers Drug Mart claims
(CTV Tront 2010.4.16)
http://toronto.ctv.ca/servlet/an/local/CTVNews/20100416/ont_drugs_100416?hub=Toronto
Drug stores pan Ontario’s generic drug plan move
(CTV Tront 2010.4.8)
http://toronto.ctv.ca/servlet/an/local/CTVNews/20100408/pharmacists_costs_100408?hub=Toronto
2010年04月23日 16:03 投稿
地元団体のOntario’s Community Pharmaciesがメッセージを発しています。
トップページには、カウントダウンであと○日で10億ドルの収入が失われると、薬剤師に危機感を訴えています。
Ontario’s Community Pharmacies
http://ontario.communitypharmacies.ca/
また、この問題に関するサイトを立ち上げています。相当の危機感がありますが、かえって逆効果になるということはないのでしょうか。
Stop the Cuts – Stop the massive cuts to community health care in Ontario!
http://www.stopcuts.ca/
上記サイトでは新聞掲載記事の紹介の他、Pharmacy Funding Q&A のページでは、地域薬局では次のような取り組みをしていると必死にアピールをしています。
地域薬剤師は、州政府からの報酬を受けない次のような何百ものサービスを行っています。
・喘息、心疾患、導尿病などの慢性疾患のClinics
・高齢者向けの薬の配達
・H1N1 や 季節性インフルエンザワクチンの接種と教育プログラム
・来局できない患者さんの自宅への訪問
・血圧や血糖の測定
・病院に行くべきかどうかのトリアージ
・高齢者、患者団体、学校での教育活動
・薬物乱用防止 など
日本とほとんど同じですね
日薬も日頃から自分たちの活動をアピールしていかないと、いざというときにオンタリオみたいになってしまうのではないかと思いますね。