第2ステージの医薬分業(日本アプライド・セラピューティクス学会)

 24~25日にかけて、参加・講演した第1回日本アプライド・セラピューティクス学会学術大会の様子を紹介します。 

 学術大会で最も耳に残ったのは、医師でもある昭和大学薬学部の木内祐二教授(薬学教育推進センター・センター長)が、教育講演の中で述べた「第2ステージの医薬分業」という言葉です。

 「第2ステージの医薬分業」というと、どうしても在宅への関わりを想像しがちですが、木内氏は地域住民の健康管理のため、トリアージセルフメディケーションの支援など、全ての薬剤師がプライマリーケアの担い手として、その職能を発揮することこそが求められていると強調していました。 

 既に、ご存じの方もいると思いますが、6年制の薬学教育ではこういったことが行えるよう、さまざまな症候について、生じる原因とそれらを伴う代表的疾患を説明できることが教育の到達目標として掲げられているんですね。

 薬学教育モデル・コアカリキュラム(日本薬学会HP p40-41) 
  http://www.pharm.or.jp/kyoiku/mdl_1408.pdf

C14 薬物治療 
(1)体の変化を知る
一般目標 :
 身体の病的変化を病態生理学的に理解するために,代表的な症候(呼吸困難,発熱など)と臨床検査値に関する基本的知識を修得する。

【症候】
到達目標:
1)以下の症候について,生じる原因とそれらを伴う代表的疾患を説明できる。
発熱,頭痛,発疹,黄疸,チアノーゼ,脱水,浮腫,悪心・嘔吐,嚥下障害,腹痛・下痢, 便秘,腹部膨満, 貧血,出血傾向,胸痛,心悸亢進・動悸,高血圧,低血圧,ショック,呼吸困難,咳,口渇,月経異常,痛み,意識障害,運動障害,知覚障害,記憶障害,しびれ,けいれん,血尿,頻尿,排尿障害,視力障害,聴力障害,めまい

 つまり、6年制の薬学生は、上記のような知識を習得して、実務実習に出てくるわけです。うらやましいというか、自分はそれだけの知識を身につけているだろうかと思ってしまいます。

 当然、薬局店頭で、「○○が痛いんだけど」とか「急に熱が出たんだけど」と相談を受けても、彼らは「お医者さんに相談して下さい」と答えるだけではなく、来局者の病態とその重症度・緊急度を見極め、時にはOTC薬(の販売)で対応できるよう教育を受けているのです。果たして私たちは、指導薬剤師として、こういったことを薬学生にきちんと指導できるでしょうか。

 ちょうど27日に日薬の会員向けページにアップされた、今年2月7日に開催の平成21年度一般用医薬品担当者全国会議の動画(特に、「一般用医薬品販売の手引き 第1版」の重要性は必見)を見ると、その重要性が改めて感じられます。

 おそらく、「薬を売るという発想」ではなく、「消費者の問題解決を支援する」という発想で、プライマリケアの担い手として職能を発揮することこそが、「第2ステージの医薬分業」になるのではないかと思います。

 OTC医薬品のシンポジウムでも武政氏が提唱していたのですが、受診勧奨などのトリアージ業務の向上を図るために、地域の医師との連携や研修会の開催など、将来希望をもって薬剤師を目指す学生のためにも、OTC医薬品など幅広い知識の習得とOTC医薬品の供給を含めたプライマリ・ケアの実践が今、求められています。

 (講演した、OTC医薬品のシンポで考えたことは別記事で)

関連情報:TOPICS 2010.04.18 日本アプライド・セラピューティクス学会学術大会シンポ


2010年04月28日 00:53 投稿

Comments are closed.