30日、行政刷新会議の第2回規制・制度改革に関する分科会が開催され、今年度中の結論を目指す検討項目の候補67項目が明らかになりました。6月にまとめる政府の経済成長戦略策定までに、各省庁と調整をして正式決定されるようです。
第2回規制・制度改革に関する分科会(2010年4月30日開催)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/subcommittee/0430/agenda.html
医療関連についての事項について検討を行うライフイノベーションWGでは、「大胆なパラダイムシフトを促す」「開かれた医療を実現」「産業としての競争力を強化し、付加価値を向上」といった方向性の下に、「保険外併用療養の範囲拡大」「一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和」「ドラッグラグ、デバイスラグの更なる解消」「未承認の医療技術、医薬品、医療機器等に関する情報提供の解禁」「医行為の範囲の明確化(診療看護師資格の新設)」など19項目について、今後検討を行うとしています。
ライフイノベーションWG検討の視点[PDF:17KB]
ライフイノベーションWG検討項目一覧[PDF:15KB]
そして、分科会にはライフイノベーションWGとしての基本的な考え方と対処方針が示された対処方針シート(PDF:153KB)が示され、私たちと関係が深いものとしては、下記のようなものがあります。(対処方針シートより一部抜粋)
規制改革事項 | 基本的考え方 | 対処方針 |
---|---|---|
保険外併用療養の範囲拡大 | ○一定の要件を満たす医療機関については、事前規制から事後チェックへ転換し、実施する保険外併用療養の一部を届出制に変更すべきである。
○また、治療法として認められるまで目の前で苦しむ 患者に最先端の治療を施せない現状をかんがみれば、欧米に見られるようなコンパッショネートユース(人道的使用)などの制度も検討する必要がある。 ○なお、新たな医療技術や画期的な新薬等を公的保険 に組み入れようとするインセンティブが働きにくくなるとの指摘も存在することから、国内未承認の医薬品等や新たな医療技術等については、保険外併用療養のモニタリング結果も参考に、従来どおり安全性、有効性のエビデンスが得られた段階で速やかに保険収載する仕組みを維持し、当該制度改革により新規保険収載が遅れることがないようにする。 |
●保険外併用療養費の給付対象について、GCP 省令(「医薬品の臨床試の実施の基準に関する省令」又は「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」)における治験審査委員会の構成要件を満たす倫理審査委員会を設置している等の要件を満たす医療機関については、同委員会で承認された療養について届出制に変更することを前提に範囲拡大につき検討し、結論を得る。<平成22年度中に結論>
●他に代替治療の存在しない重篤な患者において、治験又は臨床研究中の療法を一定の要件のもとで選択できるよう、コンパッショネートユース(人道的使用)の制度化について検討に着手する。<平成22年度中に結論> |
一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和 | ○薬害被害はほとんどが医療用医薬品で発生しており、一般用医薬品での薬害発生事例は少ない。加えて、郵便等販売で薬害被害が発生した事例はほとんどなく(厚生労働省によれば、インターネットを通じて販売された一般用医薬品の副作用被害としては、滋養強壮剤に係る1件が平成19年9月に報告されているが、副作用被害が販売方法に因るのか否かについて報告書の記載から確認困難としている)、安全性において対面販売に劣後するエビデンスもない。
○こうした中、平成21年6月に施行された薬事法施行規則において、一部を除き大多数の一般用医薬品の郵便等販売が禁止されたことで、高齢や障がいのために外出困難な方、僻地に住み薬局・薬店までの距離が遠い方、一般に流通していない伝統薬等を常用されている方などが非常な困難を強いられている。 ○また、薬局・薬店の経営の観点からも、特に地方の人口が少ない地域や、全国に顧客を抱える伝統薬の事業者などで売上げが減少し、地域経済に多大な影響を与えている例もある。 ○インターネット、電話等の販売について安全性の確保を前提としたIT時代に相応しいルール作りは十分可能であり、こうした弊害を一刻も早く解消するため、一定の安全性を確保しながらインターネット等で医薬品を販売するためのルールを新たに制定し、専門家により医薬品販売が適正に行われている薬局・薬店においては郵便等販売規制を撤廃すべきである。 |
●経過措置における郵便等販売の薬害発生状況なども踏まえつつ、販売履歴の管理、購入量の制限など、一定の安全性を確保しながらインターネット等で医薬品を販売するためのルール制定に向けた検討に着手する。<平成22年度中に結論。遅くとも平成23年5月までに措置> |
ドラッグラグ、デバイスラグの更なる解消 | ○革新的な技術を早期に利用できるように、産業政策の軸を医療・薬事行政の中で明確にし、安全対策とのバランスをとるべきであり、そうした考えの下、薬事行政全般を見直す必要がある。
○治験を経て治療法として認められるまで目の前で苦しむ患者に最先端の治療を施せない現状をかんがみれば、欧米に見られるようなコンパッショネートユース(人道的使用)などの制度も検討する必要がある。 |
●薬事の承認審査にかかる手続きを見直し、臨床研究におけるデータの治験での活用、海外の治験データの活用、確認審査の簡素化、治験実施中におけるプロトコル変更等における届出制の導入等について検討し、結論を得る。<平成22年度中に結論>
●迅速かつ質の高い審査体制を構築する観点から、審査機能への特化、重点化なども含め、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)のあり方を見直す。<平成22年度中に結論> |
未承認の医療技術、医薬品、医療機器等に関する情報提供の解禁 | ○新規技術の開発を進める上で、有効性と安全性のバランスに関する医師・市民とのコミュニケーションが重要であり、特に臨床現場の医師が海外等で開発中の技術、医薬品、医療機器の情報を得ることは、ドラッグラグ、デバイスラグの解消促進や臨床における選択肢の多様化を含め意義が大きい。
○ そのため、未承認の医療技術、医薬品、医療機器等に関する情報提供がより円滑にできるよう、情報提供可能な要件を明確化し、周知すべきである。 |
●未承認の医療技術、医薬品、医療機器等に関する情報提供が認められる要件を明確化し、周知する。<平成22年度中措置>
●国際的な学会等で発表され、欧米の医療者が普通に知り得る医療技術、医薬品、医療機器等に関する情報に関しては、速やかに我が国の医療者に当該企業が情報提供を行う事を認める。(平成22年度中措置) |
一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和について、「一般用医薬品のネット販売の経過措置における郵便等販売の薬害発生状況なども踏まえつつ、販売履歴の管理、購入量の制限など、一定の安全性を確保しながらインターネット等で医薬品を販売するためのルール制定に向けた検討に着手する」としていますが、有害事象の報告の現在の仕組みは十分でなく、おそらくデータは得られないと思いますし、販売履歴の管理や購入量の制限だけではなく、消費者のくすりに対する意識の変化や、販売者の姿勢のあり方などについても検討されない限りは、十分な安全性は確保されないでしょう。
しかし、新政権下での規制改革論議は前政権とは異なり、おそらく業界団体や職能団体よりも患者や一般消費者の視点で行われていくということは間違いありません。(報道によれば、公開の場での「規制仕分け」というのも検討しているようです)
学会シンポの記事でも指摘しましたが、日薬はこういった状況を十分留意し、この問題の議論を避けることなく、ネット販売ガイドラインの検討、認証制の導入、ネット販売の監視機関設置などの建設的な提案を行うべきと考えます。
関連情報:TOPICS
2010.04.29 OTC医薬品の使用環境における問題点と今後の課題(学会シンポ)
2010.04.15 第2回ライフイノベーションWG(行政刷新会議)
2010.04.06 第1回ライフイノベーションWG(行政刷新会議)
2010.03.31 医薬品ネット販売規制は適法(東京地裁判決)(コメント)
2010.01.28 海外でOTC薬はどのように販売されているか
2009.10.25 生活者からの副作用自発報告システムは日本でも必要(国内研究)
2009.09.04 ジヒドロコデイン配合OTC風邪薬,事実上使用禁止へ(英国)
2009.04.29 OTC解熱鎮痛剤に潜在的リスクの明示を求める(米国)
参考:
規制緩和:67項目検討 行政刷新会議分科会(毎日新聞4月30日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100501k0000m010055000c.html
2010年04月30日 21:53 投稿
医薬品の安全にかかる論点は、販売方法ではなく服用環境の是非にあると考えます。早急に通信等による販売を復活させてください。
民主党の次の参議院選挙のマニフェストに規制緩和が盛り込まれるという話もあるようなので、おそらく年度内には何らかの政治的な決着はみると思いますよ。
とりあえず速報です。
6月7日に行政刷新会議の規制・制度改革に関する分科会が開催され、保険診療と保険対象外の診療を組み合わせた混合診療の利用拡大に向けて「手続きが柔軟かつ迅速な新たな仕組みを検討する」ことなどを盛り込んだ報告書をまとめたそうです。
刷新会議、混合診療の拡大検討 新成長戦略の柱の一つ
(中日新聞6月7日 共同通信配信)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2010060701000018.html
一般用医薬品のインターネット販売の規制緩和については、「対面販売を原則維持」するとした報告書案が示されたものの、解禁を求める委員から反発の声が上がったため、引き続き検討課題となったとのことです。
報告書がアップされたら、別記事をたてます。
行政刷新会議のウェブサイトに規制・制度改革に関する分科会第一次報告書(案)がアップされています。
第3回規制・制度改革に関する分科会
(行政刷新会議 2010年6月7日)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/subcommittee/0607/agenda.html
一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和については、対処方針が「調整中」となっていました。
CBニュースによれば、「対面販売の原則を維持する」との表現を入れることに全委員が反対したためで、新政務三役の間での協議扱いになったそうです。
場合によっては、あの「仕分け」が実施されるかもしれませんね。
また、すでにまとまっているはずの覆面調査の結果が公表されていないのも、何か意図があるような気がしてなりません。
CBニュース 6月7日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/27974.html