ドパミン作用薬と衝動制御障害(海外研究)

 ドパミン作用薬と衝動制御障害(ICDs:impulse control disorders)に関する続報です。以前報告のものと比べ、大規模な研究です。(薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介することにしました。記述法などに誤り等ございましたらご指摘下さい。)

研究の
目的や背景
ICDsのうち、4つの臨床的特徴(gambling、compulsive sexual behavior、compulsive buying、binge-eating disorder)とドパミン作用薬との関連性を調べる
研究の方法 横断研究(Cross-sectional study)
どんな患者が研究の対象? 日常的にパーキンソン病の治療を受けている、米国・カナダにある46の運動障害センター(movement disorder center)の3090人のデータ
何を指標? The Massachusetts Gambling Screenscore for current problem/pathological gambling、
the MinnesotaImpulsive Disorders Interview score for compulsive sexual behaviorand buying、
Diagnostic and Statistical Manual of MentalDisorders research criteria for binge-eating disorder
で評価
何を比較? ドパミン作用薬の使用の有無や薬剤の種類でICDSで差違があるか
わかったこと
  • 患者の13.6%に何らかのICDsが見られた
  • ICDsは、ドパミン作用薬の投与を受けていた人で17.1%に見られたのに対し、投与を受けていない人では6.9%だった(発現のリスクは2.72倍)
  • また、レボドパとドパミン作用薬を併用している人では、併用してない人に比べ2.6倍ICDsが見られた。
  • 臨床的特徴の内訳は、衝動買いが5.7%、ギャンブルが5%、過食が4.3%、衝動的性行動が3.5%で、2つ以上有する人も3.9%いた
  • 薬剤別では、プラミペキソール(ビ・シフロール)を使用している人で17.7%、ロピニロール(レキップ)を使用している人で15.5%と差は見られなかった。
  • カナダ在住者より米国在住者、喫煙者、若い人、未婚者、ギャンブル癖の家族歴がある人でも多く見られた
  • トータルで、ドパミン作用薬を服用している人のICDs発現率は2~3.5倍に達する
コ メ ン ト 依然として、発現の原因はわからないようですが、プラミペキソールは、日本でもレストレスレッグス症候群(むずむず症候群)でも使用されることがあり、服用した後に問題行動などこういった影響がないかどうかをさりげなく確認する必要があるかもしれません。
論 文 名 Impulse Control Disorders in Parkinson Disease
A Cross-Sectional Study of 3090 Patients
掲載雑誌等 Arch Neurol. 2010;67(5):589-595.
リ ン ク http://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=800232

関連情報:TOPICS
   2009.04.13 ドパミン作用薬による病的賭博は通常治療でも起こりうる(米国研究)
   2008.09.20 パーキンソン病治療薬・酸化マグネシウムの添付文書改訂を指示
   2006.11.10 ドパミン作用薬と病的賭博・性欲亢進(英国レポート)
   2006.03.21 パーキンソン病とギャンブル依存症

参考:
Impulsive Side Effects of PD Drugs Quantified
(MedPage TODAY 2010.05.10)
http://www.medpagetoday.com/Neurology/ParkinsonsDisease/20020
Parkinson’s disease treatments associated with compulsive behaviors
(Eurek Alert! 2010.05.10)
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2010-05/jaaj-pdt050610.php


2010年05月11日 13:44 投稿

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