薬局現場向け実践的禁煙支援マニュアルの整備が必要

 日薬は3日の定例記者会見で、都道府県薬剤師会における禁煙支援への取り組み等に関する調査結果を発表しています。(5月28日付、都道府県薬剤師会会長宛の通知)

都道府県薬剤師会における禁煙支援への取り組み等に関する調査結果について
(日本薬剤師会定例記者会見資料2 2010年6月3日)
http://www.nichiyaku.or.jp/contents/kaiken/pdf/100603_2.pdf

 この調査は、国立がん研究センター研究所 たばこ政策研究プロジェクトと共同で昨年11月に実施されたもので、「喫煙調査の有無」「禁煙支援・指導等に関する勉強会等の機会」「禁煙指導マニュアルやガイドライン等の活用の有無等」「禁煙支援・指導等を行う薬剤師の認定等の制度の有無」「地域における禁煙推進イベント等への薬剤師会の関わりについて」「都道府県薬剤師会内の禁煙支援対策担当委員会等の有無」「地域の医療関係者等の禁煙支援活動ネットワーク(組織)の有無」「学校薬剤師の禁煙、防煙等に関する取り組み状況」について、各都道府県薬剤師会が回答を行っています。(詳細は上記リンクを)

 報告書によれば、体系化されていないものの、薬剤師が熱心に禁煙支援に取り組んでいる実態を把握することができたとする一方で、都道府県薬剤師会の禁煙支援薬剤師を養成・認定する制度のプログラムがさまざまであること、地域における関係者の禁煙支援活動への参画状況に差があるとして、下記のような取り組みを求めています。

  1. 薬剤師向けの禁煙支援マニュアルの作成(実践的な内容のもの)
  2. 薬剤師の喫煙率調査
  3. 各地域の有用事例、資料等を共有できる仕組み(インターネットの活用など)の構築
  4. 禁煙支援ができる薬剤師の質の担保と地域住民へのPR方法の検討
  5. 薬物乱用防止教育における喫煙防止教育の取り扱いの標準化
  6. 薬剤師のの禁煙支援活動についてより詳細な実態をはあくするための新たなアンケート調査の実施
  7. 薬学教育における禁煙支援教育のあり方の検討

 報告書でも指摘がありますが、職能団体である日薬が作成した薬剤師が共通で活用できる禁煙支援のためのガイダンスは、2005年10月に作成された「薬局・薬剤師がおこなう禁煙支援の手引き」のみで、スイッチされたニコチンパッチによる禁煙支援やバレニクリンによる禁煙治療などは踏まえていません。指摘のように、最新の知見に基づいた実践的な手引きの作成は急務だと思います。

 共同研究した国立がんセンター研究所たばこ政策研究プロジェクトでは、「医療用・OTCを含め全ての薬剤に関与できるのは薬剤師であり、患者以外の喫煙者にも接触できる機会を持つ医療従事者も薬剤師である」という観点から、喫煙者の禁煙誘導への役割の一端を担うことを期待していて、一般薬局・入院患者・禁煙外来などシーンごとにどのように薬剤師が関わるかなどの、「薬局現場における実践的禁煙指導マニュアル(職能別)」の作成も現在検討しているようです。(下記スライド)

日本における禁煙支援のインフラ構築~薬局・薬剤師の役割~
(安達順一:国立がんセンター研究所 たばこ政策研究プロジェクト)
(第19回日本禁煙推進医師歯科医師連盟学術総会 2010年2月27-28日)
  http://www.nosmoke-med.org/PDF/conf10.ppt

 一方、禁煙指導はジェネラリストとして全ての薬剤師が習得していなくてはならない基本的な領域に含まれるという意見もあり、専門薬剤師制度を導入することには検討が必要だとしています。

資料:
Global Network of Pharmacists Against Tobacco(FIP)
http://www.fip.org/www/index.php?page=menu_tobaccoassociation
Stop smoking support services: Role of pharmacy
(英国王立薬剤師会)
http://www.rpsgb.org/pdfs/stopsmokingsuppservpharmguid.pdf
Stop smoking support services: Knowledge and resource tools
(英国王立薬剤師会)
 http://www.rpsgb.org/pdfs/stopsmokingsuppservtoolsguid.pdf

関連情報:TOPICS
  2010.03.24 保健所と薬局が連携した禁煙教育事業(盛岡市)
  2005.06.05 FIPが提唱する薬剤師による禁煙指導


2010年06月04日 01:25 投稿

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